82.まだ結論出すのは早いから、まず矯正施設送りでお願いします!!(SIDE:ビィト) ※0度目の害虫貴族の駆除回(その3)
そんな王様にこの言葉を授けよう。
地獄への道は善意で出来ている
ドガァァァァァァァァァン!!!
ハイジの一撃はビィトが協力した事もあって、お互い7歳児というハンデを十分補うだけの破壊力はあったようだ。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
顔面に直撃を受けた父は鼻血を噴出しながらぶっ倒れ、その後は鼻を抑えながら床をのたうち回っている。その無様な姿にハイジはほくほく顔だ。
「は~すっきりした。ビィトもどう?」
「いや、あれだけやったらもう十分でしょ。僕はいいよ」
「そう。だったら次はビィトのお母さんの分として『仔牛の焼印押し』を……」
「訂正する!!追撃を入れて万が一にも殺したらブリギッテ様に迷惑かけるからやめ……」
「別に殺しても構わんぞ。どうせこいつらは処刑するんだ。それが遅いか早いかの違いしかない」
「さっすが~未来の女王様は話がわかりますよね~そこに痺れる憧れちゃう~」
「こらこら。我は女王になる気はない。王になるのはそこのトビアス君だろ」
「はっ、そうでした。先走って申し訳ございません」
「うむ、以後気を付けるのであれば不問としよう。それより『仔牛の焼印押し』とはどのような技なのだ?」
「はい、まずは相手の後頭部をつかんで……」
「……あの、もしかしてだけどブリギッテ様ってものすっごい過激な……」
ビィトの言葉は最後まで言い切らずとも、周囲の護衛や配下は十分察してくれたようだ。
優しくポンっと肩を叩いてくれたことで、ビィトは彼等と同じ苦労を分かち合える同志なんだなっと幼いながらも直感してしまうのであった。
なお、父達のその後については……
一家郎党皆殺しが決定した以上の事は触れないでおこうと思う。
ただし、皆殺しといっても子供には慈悲をみせたそうだ。
彼等はまだ幼いわけだし、教育次第ではまだ更生できる見込みがあるからっと処刑までは至ってない。それに分家筋は本家筋と違って比較的まともなのが多かったので大半は親と共に軽い処罰で済まされている。
それでも例外はいた。
「おい、おまえ。俺と立場を代われ」
偽トビアスである。
彼は自分の両親がどんな目にあったのか、自分が今どんな状況に置かれてるのか、しっかり説明されたにも関わらず、全く理解してなかった。
例え立場の交代をビィトが承諾しようとも、ブリギッテが……さらにいえば王家の血筋を欲する帝国が認めない。認めるわけがないのに、偽物は自分の意見が通って当然と思ってる始末。
あまりの頓珍漢っぷりにハイジ共々呆れかえってると、調子乗った偽物はさらにとち狂ってるとしか思えない事を口に出した。
「そうだ!!そこの冴えない女は愛人にしてやろう。そうして年増の婚約者のばばあは早々に始末すればいい。……うん、いいなこれ。決定だ」
「「「…………」」」
もはや絶句とはこういう状況を言うのだろう。
百歩譲って殺害を企むのはいい。
いや、あんまりよくないが仮にも標的の前で口に出していいものじゃない。
一体何を考えてるのか……
「まぁ……深く考えてないのだろうな。かつての元婚約者もあんな感じだったわけだが……」
なんだかすっごい疲れた表情を見せたブリギッテは視線でどうするか聞いてきた。
彼の処罰は腹違いの兄となる自分が決めて良いようだが、ビィトより先にハイジが動いた。
「あんなのに更生なんて無駄です!!今すぐsy……むが!?」
「まだ結論出すのは早いから、まず矯正施設送りでお願いします!!」
ハイジがヤバイ選択出そうとしたから、言い切る前に口を塞いで更生施設送りに留めさせた。
もっとも、それならそれでどこに送るかという話となり……
ハイジからの無言の圧力もあって、アムル辺境領の特別矯正施設となった。
ちなみにアムル辺境領の特別矯正施設はモヒカン達が過去に入居していた施設であり、そこに3ヵ月も居ればどんな悪人も真人間に早変わりっと被虐的に自慢していた所だ。
そこならばあの偽トビアスも心を入れ替わると思っての指定であるも……
ビィトは知らなかった。
あそこはつい最近辺境伯に嫁いだ夫人の手によって実質の処刑場へと改装させられていた事を……
入居者を木人形と呼んで夜な夜な怪しげな人体実験を繰り返しているという事を……
何らかの不具合で身体が異常をきたしても『ん?!間違ったかしら……』の一言で片付けられてる事を……
万が一の厚生を願って送った偽トビアスは喜怒哀楽を完全に失った廃人となる未来が待っている事を……
この時、ビィトは知る由もなかった。
世の中、知らない方が幸せな事もあるのである。
この国、いろいろな意味でキチガイが多すぎであるwww




