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77.なにかこう、水面下の底の底の“深淵”で何者かがこちらをのぞき込みながらとんでもない計画を企ててる気ががががが

人それをフラグというw

「アーデル側とロンジュ側の動きも終了ね。次は教会だけど……」


「わかってるよ。教会の守兵達には『帝国第4皇子のハイドに有無言わさず意識吹っ飛ばされた』と証言させるし、僕も『クソ王太子達は無許可でアーデル様とシシィ嬢を拷問した』と見たまま報告するよ。クソ王太子の治療も一応全力は尽くすけど……」


 ヨーゼフは視線をちらりと拷問室に放置したクズ達に向ける。彼等には今後の計画の邪魔にならないよう、アーデルすらも昏倒させた特注の鎮静剤を打ち込んでいるのだ。最低でも一ヵ月は目を覚まさないだろうし、仮に起きたところで治療を名目に監禁する手はずを整えてるから何もできないだろう。

 いや、そもそも目が覚めるかどうかすら怪しかったりする。


 また、問題なく治せる取り巻きズ(アインとツヴァイ)と違い、クズは冗談ではなく本気で一度解体(手足を切り落と)してから繋ぎ治す事を検討しないといけない程のあり様だ。

 処置後は手足の障害が残るだろうし、最悪だと手足を全く動かす事が出来ない芋虫と化する可能性すらある。

 そう思えば、二度と目覚めない方が幸せなのかもしれない……


「まぁ芋虫になっても、最高級の『回復薬(ポーション)』。どんな怪我や病気も癒す奇跡の薬である『霊薬(エリクサー)』を使えば治せるんだけど、教会に一本しかない貴重品を“天誅”が下った罪人相手に使うなんてとんでもないしね。

 後ほど王家から追及されようとも、どこの国にも属さない中立組織である教会の大司教として毅然な態度で挑むから安心していいよ」


 ヨーゼフの力強い宣言に一同は任せたっとばかりにうなづく。

 クズはいろいろ予測不可能な部分があるので、ここまで処置すればもう何もできないだろうっと誰しも思っていた。

 ヨーゼフ自身もまず間違いなくクズは退場だと確信できてるはずなのだが……先ほどから妙な胸騒ぎも覚えていた。


(う~ん……この感覚はなんだろうな。常識で考えたらもう心配の種はないはずなのに……なにかこう、水面下の底の底の“深淵”で何者かがこちらをのぞき込みながらとんでもない計画を企ててる気ががががが)


 そんなある種のフラグを立てつつも、最悪を考えて怯えるのは自分の悪い癖と思い直して嫌な予感を振り払うのであった。


 そうして教会の動きの確認が終わり、残った問題は……


「……ペーター兄さんの証言をどうするかよね。あんたは守兵と同様ハイドに吹っ飛ばされないといけなかったのだけど」


「あっはっはっは。現実はアーデルに吹っ飛ばされたからな。さて、どうしようか」


「どうしようじゃねーよ!!!あーもう、この際だから『第4皇子に戦いを挑むも、突進を止めきれずに吹っ飛ばされた』とでも言いなさい!!!守兵達がハイドに吹っ飛ばされたのは事実だし、共に証言すれば周りもハイドにやられたと勘違いするでしょ!!!」


 もはや投げやりだが、なんだかんだいってリカバリーできる範囲なのでなんとかなるだろう。



「全員の今後の動きの確認は終了したわね。それらを含めて第二案の作戦結果と次の作戦への布石を整理すると……」





 1.クズがアーデルへの拷問申請書を提出。ただし、不備ありまくりなので確実に却下。むしろ、拷問理由もクラーラの行方を聞き出すやらクズへの不敬を働いたからとか理不尽極まりないものばかり。本当に実行すれば、評価がた落ちなのは確実。


 2.アーデルがクズへの拷問申請書を提出。こちらはアーデル(王妃代理)とヨーゼフ(大司教)とロッテン(拷問官の資格持ち)のサインがあるし、内容も懇親会で結局何がしたかったのかを聞き出すためといえば納得できるもの。問題なく通るのは確実。


 3.アーデルとロッテンが拷問室へと訪れる。元々許可が降りてるので部屋に入るのは問題なし。アーデルとシィプシィが枷で拘束されてたのは、あくまで拷問具の確認テストである。


 4.クズ達を連行してくる。向こうは案内されてると思ってるようだが、その実はただの護送である。


 5.フェルトがサクラ役のシィプシィを『アイアンメイデン(鋼鉄の処女)』に放り込む。これはクズに『口を割らないならこういう目にあうぞ』というパフォーマンス。シィプシィもあくまでサクラの役目を全うしただけに過ぎない。


 6.アーデルがクズ達にむち打ちされる。これも一応拷問具のテストとすれば、表向き問題はない。でも、拷問の主導権を握っているロッテンが沈黙すれば……


 7.アーデルによるクズへの拷問開始。これは言うまでもなく許可の降りている正当行為。ただし、拷問内容が正当かどうかはかなり微妙なライン。


 8.ハイドが拷問室で守兵や護衛を蹴散らし?ながら乱入し、赤い液体まみれのシーツに包まれたロッテンを回収。そのままゼーゼマン領まで連れ帰る。


 ⑨.アーデルは『娘に会わないと見境なく大暴れしちゃう病』が発症した辺境伯を看病するため、ギスカーン家お抱え商隊の護衛をしながらアムル領に戻る。


 10.教会の守衛とペーターはそれぞれの事実を証言。さらにヨーゼフは大司教として拷問室での内容を客観的な立場で証言。

 ただし、印象操作を行うために証言内容はしっかり吟味する。




「これらの結果で都合のいい部分だけを馬鹿貴族に流す。そうすれば……」





 ハイドは守衛達を蹴散らしながら拷問室に乱入し、そこでクズ達がアーデルを拷問してる光景に遭遇。怒り狂ったハイドはクズを叩きのめして急ぎ救出。もはや王国を信用ならないっと判断したハイドは血まみれのアーデルを信用できる配下が多数待機しているゼーゼマン領土まで連れ帰った。




「馬鹿貴族達はこう誤解するはずね。他にもシシィ姉を裁判なく私怨で処刑したとかで商会ギルドが王宮に抗議文出すだろうから、それらの対処もあって大混乱に陥るのは確実。本当、よくまぁこんな悪辣な計画をよく考えつくものだわ……」


「私やロッテンといった王妃代理と宰相代理が居ないから王宮内の混乱はさらに加速するでしょうし、有象無象では真実なんて到底わからないでしょうねぇ。ふふふふ……」


「えっと……そんな有様で大丈夫なんでしょうか?誰も音頭を取らない中で残った害虫貴族達が都合よく動いてもらえるとは思えないのですけど」


「リーメ、いい質問ね。そこはマイヤーが取りまとめる手筈となってるわ。そもそも宰相の椅子は本来だと私じゃなくアレが座る算段だったわけだし、大混乱な王宮内でもうまく取りまとめつつ……害虫達を煽って愚かな判断を下さすように仕向けてくれるはずよ。そう……」






 “正義なんてどこにもない言いがかりでもって帝国に戦争を仕掛けるという、王国に破滅をもたらす愚かな選択肢をね”



































 ぷるぷるぷる……


「(ピッ)は~い、もしもし~~あ~レアママどったの~?…………え~!?クズを“人誅”なんてジョ~ダンだと思ってたのに~マジだったなんてチョ~うけるんだけど~……もっちろん協力おっけ~。でもアタシは今チョゲキム~なんで~とりま、代理にオキニのガングロ姉妹をハケ~ンはしときまっすんで~後はよろぴ~(プツン)」

最後に(クズにとっての)不穏な会話を残して……

丁度キリもいいし、ここまでを第一章の『逆断罪劇からのクズざまぁ編』として区切り入れる事としますた。


そして、第二章からは『王国革命からの害虫貴族駆除編』が始まります?

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― 新着の感想 ―
こうやって見ると「ミスリードありまくりの都合のいいことが起こりまくってました」ですね。ホントに耳にイイことだけしか聴いてないんだから(笑) 手足に後遺症が残るのなら、新薬の治験に最適なのでは♪ 嵐…
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