75.なんともアーデルらしいではないか
出会いがしらに吹っ飛ばすのがらしいそうです?
地面に落ちたペーターは元の姿に戻っていた。
意識も完全に無くしており、ピクリとも動こうとしない。
死んだのではっと思うような有様ながらも、心臓はしっかり動いてるし呼吸もあるのでとりあえず生きてはいるようだ。
……クズの時と同様、生きていればいいっという問題ではない気もするが、そこはスルーである。
続けて、アーデルは自分で生成させた穴から出てくる。
一体自分は何をしたのか、頭上にクエスチョンマークを多数出させている中……
「アーデルゥゥゥゥ!!俺を守ってくれるなんてぇぇぇぇ!!愛するハイドと言ってくれるなんて俺は感動したぞぉぉっぉっぉぉぉぉ!!」
「えっ……!!?」
自分が何をやったか理解してない事からわかる通り、アーデルが先ほど発した言葉も記憶に残ってなかった。
一体何のことかわからず、それでもハイドから抱きつかんとばかりに両手を大きく広げながら迫ってきたことでアーデルはつい反射的に動く。
広げられていた両手首を先に掴み、頭は左脇に潜り込ませてハイドの身体を十字架へと磔にしたかのような態勢で固定。さらに、突進の威力を保たせたままハイドの身体を持ち上げつつ上体を反らす。
そして……
「スーパークロスフォール!!!」
どっごぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
ハイドを脳天から地面へと叩きつけた。
その様はまさに十字架を逆さまから突き立てられたといっても過言ではないだろう。
基本威力こそ『竜巻攪拌器』に劣るも、ハイドの突進の威力を加えてのカウンターで決めたのだ。
常人であれば……いや、常人でない超人だろうとKO確実なはずだったが……
「はっはっは!!この程度なんともなぁぁぁぁい!!!」
ハイドは頭からだくだくと血を流しながらも平然と立ち上がるという不死身っぷりを発揮した、と思いきや……
スパコーン!!
「ぐふっ!!」
ロッテンから容赦なく振り下ろされた鋼のハリセンでもって、その意識を刈り取られたのであった。
さらにロッテンは続く。
先ほどまでとは違い、痴話喧嘩で筋肉結界?が解除された今こそ最大のチャンスとばかりにアーデルの首筋へ注射針を打ち込み……
「あふん」
ばた~~~~ん
拷問官としての資格を持つロッテンが特注で取り寄せた、常人なら心臓や呼吸まで止めかねない鎮静剤でもってアーデルの意識を容赦なく奪い去った。
………………
「なるほど。ペーター殿の父上はアーデルの父上の弟。いわゆる従兄妹の関係であったか」
「そういうことだ。幼少期は俺もよくアムル領へ遊びに行っていたし、アーデルの王都での滞在先は俺のシュバルツ男爵家の屋敷が選ばれたんだ。親父やおふくろも俺以外に子どもが居なかった事もあってアーデルを実の娘みたく接していたものだから自然と俺達も実の兄妹みたいな仲さ。
もっともアーデルは一つ屋根の下で暮らしてれば皆家族な考え方してるから、使用人達も兄や姉みたく接してる所あるってオチもつくがな」
「はっはっは。なんともアーデルらしいではないか」
あれから数分後、ヨーゼフ大司教の聖女クラスの回復魔法で復活したペーターは同じくヨーゼフの回復魔法で復活したハイドにアーデルに自分との関係を説明した。
ハイドもアムル家の事は調べていても、当主の弟の婿入り先となるシュバルツ家までは調べきれてなかったのでペーターからの兄発言も納得できた。
ペーターもアムル家の血筋なだけあって貴族特有の傲慢さはなく、冒険者特有のいい加減さや義理高さを内包してるからかハイドとは気が合うようだ。
昔から親友かのように和気あいあいと会話を楽しむ二人をロッテンはあえて無視。
他にする事があるので邪魔をしないなら精神でもってロンジュやヨーゼフといった比較的まとも勢と共に今回の詳細をまとめる。
そして、リーメからアーデルの着替えが終了したという事でクズ達を放置したまま拷問室の隣の部屋へと移動。そこで主要人物を集め、第二計画の最終結果報告を取りまとめるのであった。
いろいろ大惨事になった第二作戦の結果はいかに!?




