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74.これから死にゆく貴様に名乗る名前はない!!

もはや悪役の台詞であるw

「まぁとにかく、二人を止めてくるが……この場合手加減なしでいいな」


 返事を待つことなくペーターは右手の甲から『熊の爪(ベアクロー)』のごとき刃をじゃきんっと伸ばしてハイドに襲い掛かる。

 この『熊の爪(ベアクロー)』は下手な剣なら無傷でへし折れる強度を持つアーデルの肉体を真正面から貫通できる代物。


 そんなものが自身の背後から迫ってきたのを本能で察したのか、命中の直前にハイドは身をひねって躱した。


「ちっ、躱されたか」


「何をする貴様……って、誰だお前?」


 今のペーターは見た目完全な熊猫男だ。

 ハイドが問い返すのも当然といえるが、ペーターは質問に応える気なぞさらさらなかった。


「これから死にゆく貴様に名乗る名前はない!!」


「まてぃ!!私は()()()とは言ったけど()()()()()()()()とまでは言ってない!!ハイドは腐っても第4皇子だから殺したら……」


「そんなの殺した後に考えればいい!とにかく、アーデルを娶りたいというなら兄である俺の屍を超えてからにしろやごるぁぁぁぁぁ!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!兄だとぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぅ!!!!!?」


 ペーターからの言葉に混乱がさらに加速。

 ハイドは以前アムル家に手紙を出した事からアーデルの家系も把握している。当然アーデルの上には4人の兄が居るのも知っている。


 それぞれの特徴も知ってるが……


(一体誰だ?少なくとも事前情報でこんな熊猫男な見た目になれる奴の該当者なんていないぞ!!?)


 ハイドは日頃から人の話を聞かない超突猛進気質であっても、クズと違って考えなしではない。

 皇子として正当な教育は受けているし、そもそも考えなしな馬鹿なら外交官として認めてもらえるわけがない。


 こうみえても情報の重要性をしっかり理解し、必要な物を瞬時に引き出すだけの頭はあるのだ。


 だが……強者からの襲撃中に戦闘外の事を気にするのは自殺行為だった。

 例えわずかな隙であっても、強者ならその隙を付くのはさほど難しくない。


 チャンスとみたペーターはロッテンからの突っ込みを完全無視。右手だけでなく左手の甲からも『熊の爪(ベアクロー)』を伸ばす。両腕を思いっきり振りかぶってから交差させるかのごとく……

 完全に命を断つつもりで『熊の爪(ベアクロー)』を振り下ろすも、その攻撃は……









 ガキーン!!




 横から割り込んできた、アーデルの髪の一部が頭上で硬質したことで生成された『長い角(ロングホーン)』で止められた。


 その事でペーターは一瞬硬直する。なぜ割って入るのかっとこれまたその理由を探るも、答えはない。

 ただわかるのは……


「フフフフフ……私の愛するハイドを傷つけようとするなら……」


 アーデルを怒らせたという事だ。

 言葉に続き、頭をあげて『熊の爪(ベアクロー)』をはじいた際から覗かれた殺意が籠った目で睨まれた事でペーターは固まる。


「ま、まて!!これは誤解で……」


 慌てて弁明するも、アーデルは完全無視。

 右足で軽く地面を慣らし始めるという、地面の感触を確かめるその動作にペーターは戦慄する。


 アーデルが何をしようとするのか、ペーターは理解してるだけに戦慄する。


「と、とにかく落ち着いてくれ!!落ち着いて話を……」


 わずかな可能性にかけて説得は続けるも、結論から言えば……












 ドゴン!!










 無駄であった。



 アーデルが『M・B・S・B(肉爆鋼体)』を発揮した身体を……偶発的に生成された『長い角(ロングホーン)』を前面に押し出した、全身全霊を込めた猛牛のごとき突進攻撃。

 アムル家に代々伝えられている48の殺人技の一つ、『竜巻攪拌器(ハ〇ケーソ三キサー)』。


 本来の『竜巻攪拌器(ハ〇ケーソ三キサー)』は48ある殺人技の中でも基本とされる、ただ体当たりをかますだけの技だ。


 歴代の使用者はここからさらなる技へとつなげるコンボの始点とするも、アーデルは違った。

 幼い頃からクラーラを背負って野原を駆け回った事で自然と鍛え上げられた脚力。

 そこへ生来の直情ともいえる精神性が噛み合わさったことで……


 基本技である体当たりを文字通りの必殺技に……


 まだまだ発展途上ながらもすでにチートの片鱗をみせはじめていた勇者をたやすく蹴散らし、そのチート勇者すら上回りかねない現役Sランク冒険者すら正面から打ち破るなんて無理っと匙を投げられるほどの一撃。

 たんなる体当たり攻撃を怒り狂った猛牛のごとき一撃、予測可能回避不可能という一撃必殺技にまで昇華させてしまったのだ。







 ペーターは激突の衝撃できりもみ回転しながら高く舞い上がり……




 ズガズガァァァァァァァァァァァァァァン!!



 天井に頭をめり込ませた。

 それと同時にアーデルは壁を破壊して拷問部屋を飛び出し、回廊の壁へと激突。そこから土を掘り進むかのごとくえぐった。


 狭い室内で繰り出したのだから当然ともいえる結果だ。

 ここが地下でなければもう2~3枚ほど壁を貫通していたであろう。


 そうして天井に突き刺さったペーターは、重力に導かれるかのごとく……



 べちゃりっと落ちた。

今頃地上部では激突の振動でちょっとした地震騒ぎが起きてるかもしれない?

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― 新着の感想 ―
狭い室内でよくやりました。 コレ、ギャグ系だったら一周して後ろから壁をぶち破って来るんだよね♪ 天井が無い所だったら、光の弾丸になって掛け算で角を切り落とせたのにね(笑)
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