5⑨.次こそねんごの納め時だ!!もう泣いて謝っても許さんから覚悟しておけよ!!(SIDE:デルフリ)
君が~泣いても~殴るのを~やめない~
「この度は優秀なデルフリ王太子殿下に謁見出来て、光栄でございます。私はギスカーン伯爵家の長男フェルトと申しまして、この度は我が愚かな婚約者が殿下に多大な迷惑をおかけしたようで……これはほんの詫びの印でございます」
部屋に訪れた男、フェルトはペコペコとゴマをすりながら挨拶してきた。
彼は平民の分際で王太子を散々侮辱した女、シィプ“ジ”ィの婚約者だという事で即座にぶん殴ろうとするも、即座に差し出された詫びの品。純金で出来たネックレスの輝きもあって怒りと共にその拳をひっこめる。
「うむっ、なかなかよくわかってるではないか。ほめてつかわそう」
「光栄でございます。ですが、それはほんの挨拶代わり。本命は別に用意するつもりでございます」
「ほう。本命とはなんだ?」
純金のネックレス(偽)をじっくり品定めしてる最中にそう問い返すと、フェルトは周囲を軽く見渡した後に声のトーンを少し落として語り出す。
「……聞けば、王太子殿下はかの悪女。アーデルの悪質な策にはめられたとの事ですが、実は私もなのです。私は本来であれば次期当主でしたが、奴の横やりのせいで姉が当主となる事が決定。私は当主の座を降ろされたあげく、平民落ちと……」
「そうか……お前はあの女のせいで、貴族を貴族とも思わないような女と無理やり婚約を結ばれたということか」
「はっきり断言こそしませんが、あれは貴族を貴族と思ってないのは確かでしょう。不本意な結婚を強いられた者もいるでしょう。ここいらで少々自分の立場をわからせる必要があると思いまして……おい、あれを取り出せ」
「かしこまいりました」
フェルトの後ろで控えていたメイドが取り出したのは1枚の申請書。
その申請内容は……『拷問』である。
それすなわち……
「現在の王国法での拷問は王族含む3名のサインが必要なのですが、3名のサインがあれば問題なく通るでしょう……どうでしょうか?」
「聞くまでもなかろう」
にやりと笑うフェルトにデルフリは迷うことなくサインした。
「おい、お前らも書け」
「当然です」
「とにかく拷問にかけて、わからせてやりましょう」
デルフリが催促すれば唯一残った取り巻きで侯爵家嫡男でもあるアインとツヴァイは迷わずサイン。王族と上位貴族の3名のサインがそろった事でフェルトは満足げに笑う。
「ありがとうございます。私はこれから準備を行います。王太子殿下様方は翌日お呼びしますので、その時までじっくり拷問のプランをお考え下さい。それでは」
そう言い残すとフェルトはメイドを連れてそそくさと部屋を出て行った。
その様はどこか急いでるようにもみえたが、それは王太子を待たせてはいけないからっという気遣いによるものと判断。
特に気を悪くすることなく見送った。
「くくく……拷問か。奴にどんな拷問をかけてやるか楽しみだな」
「全くです。アーデルは殿下を散々侮辱した罪がございますので、徹底的にやってしまいましょう」
「まぁまぁ、アーデルにはクラーラ嬢の居場所を吐かせる必要あるのでまずは真面目に拷問しましょう。徹底的にやるのはクラーラ嬢を保護してからでも遅くはないはずですから」
「その通りだな。俺の愚行を諫めるお前こそまさに真の忠義者だ」
「もったいなきお言葉。これからも殿下に忠誠を誓わせてもらいます」
「私も忠誠を誓わせてください」
「くくく。苦しゅうない苦しゅうない。さぁ、今から奴にどんな苦痛を与えるか共に考えようではないか」
「「仰せのままに」」
アーデルを拷問にかける……
その際にアーデルがどんな顔をするか……
どんな悲鳴をあげるか……
泣け叫びながら許しを請うアーデルに許しを与えるとみせかけ、さらなる苦痛を与えた際に……
アーデルはどれだけ絶望するか……
その様を想像するだけでデルフリは上機嫌になった。
先ほどまで絶え間なく襲っていた顔面の鈍痛が気にならなくなるぐらいに……
「あっはっはっはっはっは!!アーデルよ!!次こそねんごの納め時だ!!もう泣いて謝っても許さんから覚悟しておけよ!!」
デルフリは笑う。
部屋中に響き渡るかの如き大笑いを響かせる……
そんな中、ペーターはというと……
「それをいうなら『年貢の納め時』だろうが、この馬鹿が」
あくまで小声であるが、まごうことなき本音を漏らすのであった。
そもそもナーロッパに年貢なんてあるかどうか疑問ではあるけど……
まぁ、こういう時は『こまえけぇこたぁいいんだよ!!』で済ましておこうwww




