4⑨.私は最後まで側近の責務を全うするつもりです
見た目は忠臣。騎士の中の騎士であるも……
これで全てが終わった。
クズのせいで王国が巻き添え的に滅びるという最悪の事態を迎えてしまった。
そんな未来を想像したアーデルは絶望の顔を浮かべるも、ヨーゼフはふっと笑う。
「心配無用。たった一人の愚行で国の命運を左右させるような事態にはさせぬ。むしろ、そうした事態が起きた場合に仲裁し、落としどころを探らせるのが中立たる我々教会の役目。
よって、ヨーゼフ大司教の名の元に宣言する。このフランクフルト王国とクールーラオロウ帝国との戦争はお互い痛み分けで終戦。以後は一切の禍根を残さぬ事とする。それでよろしいか?」
「えっ………?」
アーデルは一瞬何を言われたかわからなかった。
一体どういう意図があるのかっと思考をフリーズさせてると、ロッテンがすぐに承諾の返事しろっとばかりに小突いて来た。
それで我に返ったアーデルは即座に頭を下げる。
「ご配慮ありがとうございます。その提案はフランクフルト王国王妃代理として、承ります」
「アーデル王妃代理が受け入れたなら当然俺……いや、私。クールーラオロウ帝国第4皇子ハイドの名において矛を納めると誓おう」
「よろしい。なら次の問題としてデルフリ王太子の処分であるが……済まぬ。教会は国の政治に関わらない中立が基本。“天誅”こそ下したが王太子をこのまま神敵任命してよいのか、判別付かないのだ。処分を王国に任せてよろしいだろうか?」
「それは……」
国の事ならともかく、クズの一件は完全に自分の関与してないところで行われているのだ。
なら事情を知る者の意見をっと思ってアーデルはちらりと背後に控えているロッテンに目を向ければ、彼女は心得たとばかりにカンペをささやく。
その姿は情けない王太子妃っと思う者はいるかもしれない。
だが、上の足りない部分を補うのは下の役目。いくら王であっても一人で全てを背負いこむ必要性はないし、クズみたく全てを丸投げにしてない。
アーデルも自分で処理できる範囲であれば自分で処理してるので問題ないのだ。
「かまいません。あのクズの行いは完全に王国側の非。処分はこちらで検討します。それに伴い、クズ達の身柄は教会預かりでお願いいたします。正直、このままでは過激派が先んじて処刑する事態もありえますので、早急に教会で保護いたしてください」
「うむ。くz……王太子の身柄は教会で預かろう。神官フラン、聞いての通り。クズ……王太子達の身柄を早急に教会で保護せよ。いくら“天誅”が下ったとはいえ、彼等はまだ王太子と貴族子息という身分。丁重に扱うよう通達しておけ」
「かしこまいりました」
「ヨーゼフ大司教様……私も同行の許可をお願いしたい」
「認めよう。だが……ペーター殿、なぜそこまで忠義を尽くすのだ?」
「命令を拒否する事はあっても忠義は拒否しない。それが私の騎士道だからです。それに殿下の行動を諫めるのも側近として選ばれた者の役目。諫めきれず取り返しのつかないところまで落ちてしまおうとも、私は最後まで側近の責務を全うするつもりです」
そう言い残したペーターは背を向けて、クズ達を回収した名目上の医療班と共に歩き出す。
その姿はまさに忠臣の鏡であり誇り高き騎士の姿。
そんなペーターに感化されたのか、目を覚ましつつあった取り巻き者も後を追うかの如く動き出す。
「あ、あの……俺達も同行いいでしょうか?」
「デルフリ王太子様を諫められなかった罪は私達にもあります」
「ペーター様だけの責任ではありません」
「認めよう。その忠義を大事にせよ」
「「「ありがとうございます。それとアーデル様……数々の無礼な態度、申し訳ございませんでした!!」」」
彼等は最後にアーデルに向かって非を詫びるかのごとく一礼すると、アーデルからの返事を待つ事なく神官達を追って会場を出て行った。
その背を追ってさらに数人が続いた辺り、ペーターの言葉と行動は取り巻き達に足抜けさせる最後の一押しなったようだ。
その有様はまさに高潔な騎士であり、背中で語る男であった。
「素晴らしい!!これぞまさに理想の騎士ではないか」
特にハイドはこういうシチュエーションが大好きな事もあって絶賛するも、ペーターを幼い頃からよく知っているアーデルからの評価はというと……
「ペーター兄さんのあれ……ただたんにクズが破滅する姿を間近でみたいだけですって言いたいだけなんじゃないの?」
辛辣であった。
腹の中は相当下種であった……
願わくば、その下種思想はクズ限定である事を祈る( ゜∀゜)




