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43.あのクズのライフはもうとっくに0よ!!(SIDE:アーデル) ※ クズ2度目のざまぁ回(その8)

HA☆NA☆SHE!!

「さて、小休憩も終わった事だし公開処刑の続きと行こうかしらね」


「あれだけぼこぼこにしたのにまだやるの!?あのクズのライフはもうとっくに0よ!!」


「はて?アーデル様はクズ達を『ぺんぺん草一本生えないぐらい、徹底的に容赦なく潰す』つもりですよね?ならこの程度で済ますわけにはいきません。ライフ0というなら強制的に蘇生させてから再び0にすればいいだけの話です」


 鬼である。

 正真正銘の鬼がここにいた。


 しかし、シィプシィの処刑方法は正論での論破だ。

 言葉の端々に鋭いトゲを生やしてはいても、クズと違ってあることないことでっちあげての断罪ではない。


 どちらかといえば、見当違いな反論を行うクズの方が問題大あり。

 世間一般からみて、正義はシィプシィの方にあるのだ。


 事実、まだ比較的真面な取り巻き貴族はシィプシィを非難していない。非難すればどうなるかという場の空気を読んでるのか沈黙を保っている。

 逆に空気どころかまだ自分たちが正義だと思ってる者はシィプシィやアーデルを非難するも、強面冒険者から睨まれる度に黙ってしまう。

 一応頭の回る者は衛兵に助けを求めてるようだが、衛兵は中の揉め事は管轄外だからの一点張りで全く動かない。

 それもそうだろう。衛兵には賃金節約のため、中の揉め事は一切関わらなくていい契約で来てもらってるのだ。契約も商業ギルド経由なので貴族どころか王族の命令すらも聞く義務はない。それでも文句を付ける姿は契約というものをまるでわかってない馬鹿そのものだ。


「なぁ……今まで親の命令もあって殿下についてきたが、さすがにこれやばくないか?」


「俺もそう思ってる。殿下もそうだが同期も同じぐらい常識がなさすぎるし、これもう鞍替えした方がいいんじゃないか?」


「鞍替えといってもどうやってだ?俺達アーデル様を散々陥れてきたんだぞ。今更謝って許してもらえるのか?」


 そんな一部のひそひそ話を拾っている最中、唐突に『ぎゃぁ!!』っとクズの悲鳴があがった。

 何事かと思ってクズの方に視線を向ければ、どうやらシィプシィがクズの外れたままの肩をはめなおしていたようだ。


「五月蠅いですね。男ならこれぐらいの痛みは耐えなさい!!」


 痛みで地面をうずくまるクズの頭をぺちっと、丸めた紙束で軽く叩いて無理やり正気に戻させるシィプシィ。その様に思わずぷーくすくすと笑う平民の参加者達。


 クズ目線でみれば平民達に見下ろされてるこの状況はこれ以上にない屈辱だろう。

 クズの身体がぷるぷると震えだし、顔がこれ以上ないほど真っ赤に染まっている。


「き、貴様ら……平民の分際で、誰に口を聞いていると」


「無能なアーデル王太子妃様の足元にも及ばないクズ王太子様でしょう。それがどうしました?」



 ぴきっ……



(ん?今何かが切れた音が響いたような……?)


 常人であれば気のせいとして見逃しかねないような音だが、いろいろと鍛えているアーデルの耳にははっきりと聞こえた。


 戦場といった極度のストレス化におかれた極限状態に陥った者によくある、理性のタガが切れる音だ。


 それすなわち……



(これは……クズが理性失って暴れる前兆!?)


 ろくな訓練を積んでないクズが理性なく暴れたところでたかが知れている。

 アーデルであれば拳一つで即座に鎮圧出来る自信はあるも、今目の前に相対してるのは荒事を専門家としてない一般人のシィプシィだ。


 ……まぁ専門家ではない一般人といっても、彼女は危険が常に身近とされるアムル領出身。

 ゴブリンはおろか、オーク程度なら素手でタイマンしても問題なく勝てる程度に強い。


 だが、世の中火事場の馬鹿力というものもある。

 例え貧弱な坊やであろうとも、極限まで追い込まれた者の力は想像以上だ。


 加えて、経験豊富な強者であっても相手からの想像の斜め上な行動で度肝を抜かされる事だってある。




 そう……想像の斜め上だ。



 ぶちぎれたクズはあろうことか……




「アーデル……貴様のせいか!!」



 標的をアーデルに定めたのである。





 ……


 …………


 ………………




「はぁ!?」


 斜め上過ぎた。

 クズをぶちぎれるまで追いつめたのはシィプシィであってアーデルではない。

 アーデルはただ静観していただけ。


 糾弾には一切関わってない。


 だというのに、クズは親の仇をみるかのような血走った目でアーデルを見据えていた。


(これはこれでシシィ姉さんの安全を確保できるから好都合とはいえ、本当にこのクズの行動は読めなさ過ぎるわ)


 だが、予想外の行動をしたのはクズのみではなかった。



「こら!!今は私と話してる最中でしょうが!!!」


 あろうことか、シィプシィはクズとアーデルの間に割り込んで再度丸めた紙束で脳天を叩いたのだ。

 その姿は勇敢なのか無謀なのか判別がつかない。


 少なくとも、アーデルでは判別がつかなかったせいでつい惚けてしまった。

 ほんの数秒思考が止まってしまい、気付けば……




「じゃまだぁ!!!」


 どん!!!




 クズは起き上がり様にシィプシィを突き飛ばしていた。


「危ない!!」


 アーデルはとっさにシィプシィを受け止める。

 少々初動の遅れはあっても、シィプシィはクズとアーデルの直線状に立っていた事が幸いしてその場を動く事なく受け止めれた。


 靴が普段履かないヒールのため踏ん張りが効かずとも、待ち構える余裕があるなら何事もなく受け止められる。


 そのはずであったが……






 トン







 受け止めたその瞬間、軸足の膝が折れ曲がった。

 何者かが後ろから膝を小突いたことで強制的に折れ曲がらされてしまったのだ。



 それによって、アーデルは大きくバランスを崩してしまった。

A(こんな時に膝カックンだなんて、ちょとsYレならんしょこれは……!?)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 暴走開始(笑) [気になる点] 目が覚めてきた方がチラホラ……どうやって逃げ出すのですか?(もう遅いでしょうけど♪) [一言] 膝カックン……ここで、ギャグ? ……これもクズを陥れる布石…
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