42.ちょ、ここでいきなり私に話振らないでよ!?(SIDE:アーデル) ※ クズ2度目のざまぁ回(その7)
さすがに終始主人公置いてけぼりで進めるわけにはいかんっしょw
「さ、続きと行きましょうか」
「ひ、ひぃいぃい!!?」
くすくすと笑いながら見下ろすシィプシィに恐怖を感じたのか、悲鳴と共にクズは後ずさる。
こうなれば最早クズに勝ち目ないだろう……が、これも致し方ないであろう。
シィプシィの幼少期は危険の多いアムル辺境領で暮らしていたのだ。腹を好かせただけの魔物だけでなく、人間の雌を交配目的で攫うようなゴブリンやオークの襲撃だって経験している。
さらにいえば、自力で撃退した経験すらある。ゴブリンには情けをかけたせいで酷い目にあった話が教訓として伝わっている事もあって、泣きながら命乞いされようともきっちりトドメを刺すだけの非情さもある。
そういった経験もあってシィプシィは敵対する者には容赦ない。特に対話という知能ある者にしか許されてない特権を早々に放棄して脅しや暴力に訴えるような下種はゴブリンと同レベルとみなして徹底的に叩き潰す。
それこそ、ぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に容赦なく……
(だけど、今回の件は少々シシィ姉さんらしくないわね。いつもならわざと殴らせて莫大な慰謝料を請求するのに、今回は殴らせる前に投げ飛ばした。その際も怪我を負わせないようするのに、わざと乱雑に投げて肩を脱臼させた。クズはあれでも王族だし平民が怪我させたら後の交渉にも響く。いくら向こうから殴りかかってきたから反撃したという正当防衛を主張しても……)
「全く、こんなクズが王太子だなんて世も末。アーデル様もとっとと引導渡せばいいのにっと思いますがご本人としてどう思ってるのでしょうか?」
「ちょ、ここでいきなり私に話振らないでよ!?」
思考へふけってる最中からの唐突な不意打ちだったせいでつい素の口調で応えてしまうアーデル。
気付けばクズは焦点があってない目でぶつくさ何かをつぶやいており、取り巻き貴族も容赦なくクズを責め立てるシィプシィを恐れて一定の距離を取り始めている。
もしかしたらクズのクズっぷりに恐れてる可能性はあるも、どの道ここでクズに加勢したら、強面冒険者に容赦なく取り押さえられるのだ。引き下がるのは懸命な判断であろう。
そんな状況だ。もう取り繕う必要ないとして、そのまま素を続ける事にした。
「シシィ姉さんには何度も伝えてるけど、引導なら昔物理的に与えたというか与えかけたせいで怒られた事もあって、以後は物理的な引導を戒めているのよ。なのであくまで言葉のみで留めてるわけで……」
「もう何度も進言してるけど、時と場合によっては口でなく鉄拳が有効な場合もあるのです。さらに、人には向き不向きがあってアーデル様は明様に言葉でなく拳で語る方が向いている肉体言語派でしょう。いい加減そこを認めてください」
「同じく……俺もシシィ嬢の意見に同意」
「あっ、俺もシシィの姐御に同意」
「では、私も同意させてもらいます」
「うぐぅ……シシィ姉さんだけでなくペーター兄さんとロンジュまで……っていうか、なんでロティーもちゃっかり加わってるのよ!!」
「僭越ながら、加わらせてもらいました」
アーデルがくるっと振り返った背後。アーデルを清めた後もその場に待機していたモブメイドのロティーはアーデルの睨みを受けても、しれっとした態度でぺこりとお辞儀するのみ。
そのメイドとは思えない態度に腹が立って殴ろうとするも、ここで殴ればシィプシィやペーターともう一人……冒険者達の代表格であり、ある事情もあってアーデルとは決して浅くない縁を持つロンジュから『ほれみたことか』っとばかりに言われてしまう。
だから寸前でぐっと止める。
その光景にロティーはくすりと笑う。
(うん決めた。こいつは後でぶん殴ろう)
そんな心の声を察せられたのか、3人から『やっぱりお前は拳で語る方がお似合いだ』っと言わんばかりの表情される始末であった。
A「わ……私たち淑女は、いかなる場合においても下賤な者達のように暴力を使わないというのがマナーではなかったの!?」
R「時と場合によっては淑女も暴力を使うことがあるわい」




