22.寄生貴族の排除がお望みなら、クズ諸共に潰しましょうか?ついでに王国そのものも
王国はついでに潰すようなものではありません?
「えっと、改めて確認す……させてもらいますが、私がクズの案件を引き受けるで大丈夫でしょうか?」
先ほど言葉使いを注意された事もあり、改めて敬語でもって確認を取るクラーラ。ただ、敬語になってもデルフリ王太子をクズ呼ばわりだし、周囲も苦言しない辺りはもう暗黙の常識となってるのだろう。
「私はいいと思うわよ。正直言って私たちにはそんな余裕ないから」
「ですよねーしかも3日後に起きるクズのやらかしの後始末を考えれば余計に……」
「どうせならクズだけでなくクズと共に甘い汁を吸ってる寄生貴族達も一緒に自滅してほしいくらいなんだけど、それはさすがに贅沢かな」
「寄生貴族の排除がお望みなら、クズ諸共に潰しましょうか?ついでに王国そのものも」
「……できるの?」
「もちろん。といってもマイヤーさんは最初からそのつもりだったようで、そのための策をもらってます。ただあくまで策は策。どこまで予定通りになるかはわかりませんが……のりますか?」
「のった!!」
クラーラの提案に一瞬の躊躇なく言い切るロッテン。その決断の速さは周囲どころか、話を持ちかけたクラーラすらも圧倒してしまった。
「あの。具体的な話を聞く前に即決していいんでしょうか?」
「いいのよ。それに、マイヤーはそこのドム爺……その気になればいつでも王国を簒奪できるような策略家である狸爺が太鼓判を押すほどの優れた直弟子。そうでしょう?」
「ほっほっほ。簒奪はともかくとして、あの小童が優れた弟子だったのは否定しないでおきましょう」
「ふん、私の婚約者を洗脳して手ごまにする腹積もりだったようだけど、そうは問屋が卸さなくて残念だったわね」
「洗脳とは人聞きの悪いの。大体、それをおぬしが言うのはどうかと思うのじゃが……」
「「「「「「確かに!!」」」」」」
ドム爺の言葉に対して即座に頷いた面々の脳裏には、ロッテンからの鯖折りを恍惚な表情を浮かべながら満喫しているマイヤーの姿が浮かんでいた。
その様にロッテンは『一体どういう意味だ!!』っと突っ込んでやりたい衝動にかられるも、ここで突っ込めば百戦錬磨ともいえる古狸の思うつぼ。主導権を渡さないため、あえてスルーを選択した。
なお、その選択はドム爺的に最良だったようで、こっそり『合格』っと呟いた。
「まぁとにかく、マイヤーは謀り事に関してはピカ一。そんな彼が好機とみたなら、何も言わずにのっかってあげるのが婚約者としての義務でしょう!!貴族であるならなおさら!!!」
拳を握りしめ、机に片足をのせながら力強く宣言するロッテン。背後にはザッパーンと荒波が押し寄せてくるかのような幻影を生み出す姿にクラーラは思わず拍手。
「キャーロッテンさん男らしいですぅぅ~~!うっかりほれぼれしそうなぐらいのカッコよさですわ~~~!!ぱちぱちぱち~~」
「えぇ、さすがはロッテン様。そういうことなら……」
「「「「「「我々もマイヤー様の策にのっかりましょう!!」」」」」」
今度はサムズアップではなく、右手を額につけた敬礼のポーズを決める面々。身分も立場も全く関係ないっとばかりに一糸乱れぬ敬礼はまさに軍人そのもの。
彼等は国政に携わる偉い立場といっても、学生特有の馬鹿騒ぎやノリをまだまだ続けたいお年頃なのである。
「満場一致で決まったわ。さぁ、クラーラ。私達は何をすればいいの?」
「はい。最初の舞台は私とお義姉t……様が主演です。なので私が裏工作や仕込みといった全ての準備を整えますから……」
セリフ途中でくるっと視線をロッテンから別の側近……王国での財務を預かるモブ男に変える。
急に視線を向けられた事でビクッと身を縮こませるモブ男であるも、クラーラはお構いなしに親指と人差し指で作り出した丸を上に向けながらにこやかに言い切った。
「まず、もらうものからの交渉からしましょうか。ウール君」
よ~く考えよ~♪ お金は大事だよ~♪




