224.くそ、なんて不便な身体なんだ!!(SIDE:クズ) ※ クズ懲りないざまぁ回(その1)
大魔王となったクズだが、どうやら不満があるようだ。
……いやまぁ、悪魔との取引で得た力な上、力を授けた悪魔の主を害する意思までみせてたのだから、あえて不満持つよう仕向けたのだろうw
クズはいら立っていた。
自身が大魔王となる前の記憶はかなり曖昧というか、思い出そうとすれば頭痛が走るのでいつしか過去の事は関係ないっと切り捨てていた。
過去を切り捨て、今の自分を……
10メートルを超える、無数の触手を繰り出す化け物植物。“大魔王ビOダソテ”となった自分の事を考える。
この身体は気が付けば手に入っていたものであり、ダンジョンマスターとかいうここの支配者が言うには、大魔王にふさわしい力を持つ身体だそうだ。
魔王を超えた大魔王と称されるだけあって、その力は圧巻。
討伐のためにクズが控えているボス部屋へ意気揚々と踏み込んできた勇者パーティーを何組も返り討ちにしてきたのだ。
今も新たに挑んできた勇者パーティーを相手にしていたが、勝負はすでについていた。
勇者と名乗った男は触手の薙ぎ払いであっさり上半身が消失。その有様に仲間であった女達は戦意を喪失し、無様に命乞いまでしてきたのだ。
本来なら高揚となるはずなのに、クズの心は晴れなかった。
その原因はわかっている。
一撃で終わらせるつもりでなかったからだ。
本来ならじわじわとなぶり殺しにしたかったのに、この身体は力が強すぎて程よい手加減が困難なのだ。
それに、どれだけ細心の注意を払っても命中の瞬間に『Critical Hit!!』の文字が飛び出たら、それだけで相手は絶命する。
せっかく人?が殺さないよう痛めつけてても、全てを台無しにする謎の現象がクズをいら立たせる。
慰め的に女を性的に犯してやろうと思っても、この大魔王となった身体には性を成すための器官が存在しない。
さらにいえば、口に該当する部分がないから捕食も出来ないし喋る事も出来ない。
おまけに、睡眠も取れない。
人間の三大要求とされる『食欲』と『性欲』と『睡眠欲』を摂取する事が出来ないのだ。
これだけでも人間の尊厳を破壊されているといえるのに、不満点がまだあった。
大魔王ビOダソテの身体は玉座に根を降ろして一体化しているために、この場から一歩も動く事ができないのだ。
“くそ、なんて不便な身体なんだ!!”
苛立ちのまま、命乞いしてくる女の腹を触手でぶっ刺した。
触手の先からは猛毒が滴っているため、突き刺せばそれだけで相手は毒に侵される。
本来ならあまりの苦痛に絶叫をあげながら床を転がりまわるが、これも『Critical Hit!!』の文字が飛び出たせいで即死させてしまった。
女は苦しむ事なく光の粒子となって虚空へと消え去った。
これはダンジョンの仕様というものらしい。
このダンジョンの中で死んだ者は光の粒子となり、セーブポイントとかいう場所へと飛ばされる。
また、このボス部屋の滞在時間は30分とされており、それを過ぎた者は生きていても粒子となってセーブポイントへと飛ばされる。
こうした仕様のせいで、女たちを奴隷やおもちゃとして一生飼い殺しにすら出来ない。
“一体俺に何の恨みがあるってんだ!!!”
クズは怒り散らしながら触手を無茶苦茶に振り回した。巻き込まれた女達の身体は一撃で消失したが、周囲に配置されている調度品。壺は壊れなかった。
勇者が持っていた武具。どんな盾もやすやすと貫く伝説の剣をあっさり叩き折り、どんな剣も弾くとされる盾を粉々に砕くだけの力を持つ触手が、壺相手だとたやすく弾かれたのだ。
ならその壺は触手以上の品っと思いきや、勇者とその仲間達であれば軽いパンチやキックで砕け散る。
おまけに、勇者達は壺の中から出てきた美味そうな骨付き肉を戦闘中にも関わらずがつがつと食らうのだ。
食べる事が出来ないクズへ見せつけるかのように……
だからこそ、クズは勇者達を徹底的にいたぶって惨殺したかったが、『Critical Hit!!』とか呼ばれる現象のせいで一撃死。
このような事が続けば、不機嫌になるのは必然だろう。
やがて、いら立ちの頂点に達したクズは……
“うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!”
絶叫した。
“なぜだ……なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ!!
なぜ俺がこんな目にあうんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
俺が一体何をしたって言うんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!”
絶叫のままに触手を振り回すクズ。
勇者パーティーは全滅し、周囲には誰も居なくなってもなお振り回す。
そんな有様を冷めた目で見つめてる者がいるとも知らず、クズはいら立ちのぶつけ所を探すかのように暴れ続けた。
クズはどこまでいっても……
例え記憶がなくても、クズはクズのままであったようだwww




