223.義姉として義妹に頼られるというのも悪くないというもの(SIDE:慈愛の女神カプリス)
お義姉ちゃん「わかるわ!!!」
両親を断罪した後、カプリスは周囲から推薦される形で慈愛の女神へと就任した。
当初は血の気の多い自分に慈愛の女神なんてものが務められるとは微塵も思っておらず、断るつもりであった。
だが、表向きは母であった慈愛の女神の悪事を暴いたのはカプリスという事になっていた。
両親の悪事に手を貸すどころか、自らの手で終止符を打ったその姿勢を他の神々は評価していたのだ。
それに、正当な後継者であるビスナは両親とその一派を一網打尽とするために悪魔の手口を……
到底表沙汰に出来ないような手口を多数用いている。
そんな彼女を女神に就けるには数多くの問題があった上、当人が拒否していたのだ。
だが、カプリスにはやはりビスナこそ……という思いがあった。
その証拠に、ビスナは本来なら背負う事のない罪。
両親含めた他の不穏分子を一掃するためとはいえ、王太子とその側近達が大罪を犯すと分かってた上で放置したのだ。
その償いとして、彼等の罪を肩代わりする形で引き受ける程に慈悲深かった。
おかげで、王太子達の生前の罪は保留となって挽回のチャンスが与えられた。
神々に干渉されないようプロテクトを施された上で転生し、周囲の誘惑を跳ね除けて全うな人間へと育つのであれば、あの凶行は本心で起こしたものでないっと認められて不問となる手はずだったわけだが……
結果からいえば、元王太子ザルフリは転生して新たにデルフリの生を受けてなお凶行に走った。
元側近であった他の4人。マイヤー、ペーター、ヨーゼフ、フェルトの4人は転生後、多少道を踏み外しかけたり、おかしな性癖を持ったりと全うとは言い難い面こそあれど、全員がデルフリのように人の道を踏み外すような凶行へと走る事はなかったのだ。
それによって、彼等の生前の凶行は本心ではなかったと証明され、罪は帳消しとなった。
逆にデルフリは神々から干渉……あのクレアでさえも自重してちょっかいをかけなかったのに、婚約者を冤罪で処刑しようとした挙句に実妹を娶ろうなんて企むクズっぷりを発揮だ。
(そう、あのクズは私が選定した聖女を侮辱した。それは慈愛の女神である私の面子を潰したに等しい行い。万死に値するも同然なのだが、何よりも許せんのは、せっかくのビスナの慈悲を台無しにした事だ。もはや奴は死すらも生ぬるい、生き地獄行きは当然の末路であろう)
第三者目線だとあれはやり過ぎと思われそうだが、カプリスは両親がクズ過ぎた事もあって同類のクズには一切合切の容赦しない性質であった。
それと同時に義妹には甘かった。
カプリスがなんだかんだいって慈愛の女神に就任したのは、なんだかんだ理由付けていたが、結局は天界での窮屈な生活より、クレアの元で気楽な堕天使生活を楽しみたいっと思っていた義妹ビスナの願いを叶えるためともいえる。
(まぁこれもぬけめのないビスナの計算の内なのだろうが、義姉として義妹に頼られるというのも悪くないというもの。幼少期に義姉らしい事が出来なかったのだから、その分のわがままぐらいは多めに見てやるべき……っと思ってるんだが)
「あーそうそう。ねーやんねーやん。実はフランクフルト王国で新しい事業を起こそうと思ってるんやけど~~そのためにちょ~~っと教会に神託入れてくんな~~い?」
「……おい、この事業はちょっと洒落にならんぞ。許可できん」
「え~~そこをなんとか~~だめ?」
「だ・め・だ!!」
最初こそ、力強く提案をはねのけたカプリスであるも……
ビスナは腹黒い両親一派を裏で都合よく操り続けた実績を持つだけに、最後には首を縦に振るしかいけない状況へと持っていかれたのである。
「でっていう~!!ミルちゃんチルちゃん。慈愛の女神様からのスミツキもらえたから~明日から本格的にアイドル活動での営業を始動するよ~」
「「あいあいさー」」
なお、新事業とされる二匹のアイドル営業活動がどういう結果を生み出したかについてだが……
「はい、今月分の胃薬よ。お大事にね」
「こ、この胃痛は貴女様の配下が原因なんだとわかってるのか……うぐぅぅぅ(キリキリキリ)」
しばらくクレア印の胃薬を常用しなければいけない事態へと陥ったとだけ、伝えておこう。
ミルチルコンビのアイドル営業活動。
その発起人は堕天使様っというオチでしたwww




