222.あの両親がやらかした事は完全なギルティには変わりないし、やはり許そうとは思えんか(SIDE:慈愛の女神カプリス) ※ 全ての元凶ざまぁ回
判決、死刑!!
どっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
顔面へと繰り出した一撃はたしかな手ごたえがあった。
例え上位天使まで至ってようとも、『神力』で守られている両親には傷一つ付かないはずなのに、カプリスの拳は『神力』の防御を突き破って肉体を傷つけるだけの破壊力があった。
「な、なん……だと……?」
両親は驚愕していた。自身が傷ついた事に信じられない。自分達が愛する自慢の娘が牙を向いた事に信じられないといった顔をしていたが、理性のタガを引き千切ったカプリスにとっては両親の心情なんて知ったこっちゃない。
ただただ、怒りの感情の赴くまま再度両親を殴りつけた。
ドゴォッ!! ドゴォッ!! ドゴォッ!!
「や、やめて……」
泣きわめこうが、とにかくぶん殴った。
メキョォッ!! メキョォッ!! メキョォッ!!
「ゆ、許して……」
血塗れになろうが、ひたすらにぶん殴った。
グチャッ!! グチャッ!! グチャッ!!
「……」
物言わぬ肉塊になろうとも、おかまいなしにぶん殴り続けた。
今までの鬱憤を全て吐き出すかの如く、とにかく殴り続けた……
……
…………
………………
(それで、我に返った時はこの牢獄の中だったのだよな……)
あの時はわけもわからずなカプリスだったが、看守からあの後何が起きたのか聞かされた。
その内容はざっくりいえば、両親とその一派が逮捕されたということだった。
より詳しく聞けば、神々の法を司る警察機関はカプリスが疑念を抱く前から両親に内偵を入れてたそうだ。
動こうと思えばすぐに動けたのだが、両親と繋がりがある不穏分子達を炙り出したかった事と、カプリスが悪事を働く両親を打倒するために努力を続けているその心意気を買い、あえて両親を泳がせていたらしい。
母の暴走ともいうべき一件も各所で万全の態勢を整えた上でもって、迎え撃っていたのだ
それでもプリスの暴走に関しては予想外ではあったが、これはこれで見境なく暴れるカプリスを止めるという名目で強引な家宅捜査も可能だと判断。カプリスを止める傍ら悪事の証拠の数々を抑えてゆき、それを元にして両親含めた今回の騒ぎに関わった者達を次々と捕縛。この牢獄へと収監したそうだ。
カプリスは別にここへと収監する必要性なかったのだが、我を失ってた状態であっても捜査機関の者達を叩きのめしたのは完全にアウト。
これを許せば機関の権力が失墜するため、表向きの公務執行妨害が適用された。
もちろん表向きだから罪に問われないといっても、機関の者を傷つけたのは事実。カプリスはしっかり反省の意を示し、傷つけた者達に頭を下げて謝った事で各関係者に好印象を持たれた。
逆に両親はというと……
「父上、母上。ご機嫌はどうですか?」
カプリスは両親が収容されている牢へと問いかけるも反応はない。
それもそうだろう。
当時のカプリスはまだ神を打倒するまで至ってなかったとはいえ、『破壊の力』に『超野菜パワー』を上乗せした拳でミンチになるまで殴り続けたのだ。
到底無事に済むわけなく、今では外の世界を知る為の五感のほとんどを失い、生きている肉塊ともいえる存在へとなり下がっていた。
二人にはカプリスの声が聞こえなければ、カプリスの姿さえみえてないのだろう。
ありとあらゆる感覚を失ってる二人が唯一感じ取れるのは、孤独感と……
キュィィィィィィィィン……
『神力』を吸い取られる際に発する苦痛だけだった。
通常ならこの30年の間、毎日『神力』を吸い取られ続ければ、とっくに枯渇していてもおかしくはない。
だが、二人は未だに『神力』を失う事なく神として君臨していた。
最早電池のような扱われ方をしようとも、神であった。
そのカラクリだが……
「ふっ、今日も元気そうで何よりです。これなら毎月仕送りする甲斐があるというやつですよ」
二人は慈愛の女神とその従属神としての資格を剥奪されてないが故に、カプリスが集めた信仰心の一部が二人に供給されているからである。
「あれから30年間、毎月欠かさず仕送りするねーやんもなかなかの鬼畜じゃーん。一体どんだけ恨んでんの?」
「少なくとも、反省の色を見せない限りは許す気などないな」
一応カプリスも今の両親は憐れと思っている。
心の底からしっかり反省してくれるなら、神の資格を剥奪させて『死』という慈悲を与えるつもりだ。
この処置は両親の被害者であり、正規に裁く権利があるビスナから提案される形で議会に持ち込んで承認されている。
だというのに、両親は……
「ん~モニターで流してるからわかるだろうけど~精神世界では二人ともま~~ったく反省してないね~~この境遇もビスナ様のせいにして~~いつかカプリス様が助けに来てくれるって信じてるよ~~」
「そのようだな。では、今月もこのまま収監としよう。どうせ両親に渡してる信仰心はビスナが私名義での慈善活動で得たものだ。両親とクレア様を経由してビスナの元へと還元するのが筋というものだろう」
「おっけ~わかりました」
こうして両親の面会を終えたカプリスは両親に背を向ける。
(ふぅ……昔はあれだけ恨んでいた両親だったというのに、両親を破壊し終えた後は自身も破壊してビスナに本来の立場。偽りではない正真正銘の慈愛の女神の後継者として、その座に就いてもらおうと思っていたのに……
現実は両親を生かし続け、私が慈愛の女神の座に就くとはな)
そうなった経緯もいろいろ理由あるが、最大の要因はビスナが最初から慈愛の女神の座に就く気なかったからだろう。
それに……
(ビスナは最初こそ悪魔の生贄にされた憐れな存在っと思ってたが、実際は生贄とされる前に自らの意思で多数の悪魔を従える魔女クレアに忠誠を誓って洗礼を……『天使ビーナス』から『堕天使ビスナ』と名付けてもらう形で堕天するという憐れでもなんでもない、相当に強かで腹黒い存在だったとはな……
両親に関してもすぐに事を起こすのではなく、たっぷりの餌を与える事で不穏分子達をおびき寄せてからまとめて一網打尽。そのためにあえて両親からこき使われながら、情報の横流しやら裏工作やらを駆使して各関係者がビスナの思惑通り動くように仕向けていたというのだ。私を含めた周囲が全く気付かない程の鮮やか過ぎる手腕は驚きを通り越して尊敬すらしてしまう。
両親はそんな羊の悪魔を無力な生贄の羊と思い込んだまま全ての罪を擦り付けようとしたが、全ての悪事の証拠付きで突っ返された挙句、第一級犯罪者としてこんなとこへと送られて電池扱い。
逆にビスナは天界に巣くっていたクズ達を悪魔らしい悪辣な手口でもって一網打尽にしたその功績を魔女クレアに認められて幹部へと就任。
下手な悪魔よりも悪魔らしいビスナの恐ろしさに未だ気付かないこの両親の愚物さには、さすがの私も少々同情してしまうよ。もっとも……)
「あの両親がやらかした事は完全なギルティには変わりないし、やはり許そうとは思えんか」
こうして地下牢から夢幻回廊と地下労働所を経由して地上へと戻ったカプリスは、気持ち新たに慈愛の女神の職務へと戻るのであった。
魔女様に仕える幹部悪魔の中でも良心と思われてた堕天使ちゃんも、
蓋を開けてみたら他の幹部悪魔と十分タメ張れる程度の悪辣さと手腕を持つ悪魔でしたw




