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220.反省という言葉ないのか?(SIDE:慈愛の女神カプリス)

返す言葉もありません(´Д`;)←前日の更新で21⑨話と220話を間違えてうpした奴

「では~~今から地下へと案内しま~す。足元にご注意くださ~い……むにゃむにゃ」


 カプリスとビスナの二人は現在、ギネスの配下に先導される形で地下労働所のさらなる地下へと続く階段を降りていた。

 労働所は外部の者でも比較的自由に行き来が出来ても、地下にはギネスの許可が必要であった。


 その理由は、単純にいえば危険だからであろう。


 なにせ、上の労働所で奴隷達がグルグルと回している謎の棒。

 あれは地下に居る者から“力”を吸い取るための装置だからだ。


 無許可で地下へと踏み込めば、知らず知らずに“力”を吸い取られてしまう羽目になる。

 なら装置が止まっている時に踏み込めばっと思うだろうが、装置は3台を8時間のローテーションで回してるのだ。

 常に吸引の力が働いてるし、なにより地下へと続く唯一の階段には『無限ループ』と呼ばれる無限回廊の罠が仕掛けられている。


 案内人なしで地下に踏み込めばこの無限ループに捕らわれ、下手すれば地下から一生出る事が叶わずにお陀仏となる。

 神だろうと例外なく……だ。


「むにゃむにゃ……着いたよ」


 先導してくれていたギネスの配下が眠そうな眼をこすりながらも、無限回廊を抜けた先の一つの扉の前で止まった。

 扉の隙間から嘆きの声が漏れ出てるが、この先は牢獄だということを知っているカプリスは気にせず扉をあけ放つ。


 中は薄暗い石畳の空間にゆらゆらと揺れる松明の炎と左右に並ぶ頑丈な鉄格子で隔てられた部屋っと如何にもな牢獄だ。

 空気も牢獄に入った瞬間にどんよりとして濁った物へと変わる辺りり、この牢獄はそのように作っているのだろう。


「お約束にこだわりがあるクレア様らしいといえば、らしいか」


「だよね~」


 中へと踏み込み、道すがら鉄格子の中を覗いてみる。

 囚人達は24時間力を吸い取られ続けているだけでも悲惨なのに、力を吸い取られる際は苦痛まで伴うのだ。

 最早休まる時が一切ない拷問の日々と言っても過言ではない有様であり、まさしく地獄と表現してもいいほど。


 ただまぁ、ここに放り込まれる囚人は例外なく相応の罪を犯した者。

 そうでなければ、こんな部屋の運用をあの審判の神が許すわけがない。


 ましてや無実の者をこの部屋に放り込んだら……


「レアママがここに放り込まれるんじゃないのかな~?」


「確かに審判の神ブラッド様ならやりそうだな。なんでも子供の頃には腹に躊躇なく拳ぶっこまれて風穴開けられたから、その報復としてエナジードレインやら手足を厳重に縛るやらで抵抗手段を完全に封じた上でゴブリンがたむろしてる牢屋に放り込んだそうだ。

 その際は危うく大真面目にエロ同人展開になりかけたっと、クレア様自身が笑いながら語ってたし……あのお方は反省という言葉ないのか?」


「ん~でもレアママって子供の頃はパパと顔合わせる度に殺す気で顔面パンチ仕掛けてたっていうし~今はもうそんな事してないから反省してるんじゃないのかな~?」


「そうだといいのだがなぁ」


 とはいえ、カプリスも親に顔面パンチぶちかまそうとしていたクレアの気持ちがわかっていた。


 なにせ、カプリス自身も子供の頃は父親を……さらにいえば、両親を殺したい程に憎んでいたのだ。



 特に全ての真実を知った際は、必ずこの手で両親を殺す誓いまで立てたぐらいに……


 カプリスは拳を握りしめながら、再度当時を思い出し始めた。









 ……………………


 両親の吐き気がするかのような悪事が全て真実と判明したあの日、即座に両親を糾弾すべく動こうとした。

 だが、両親は多くの神々からの支持を受けているのだ。子供であるカプリスどころか、警察機関ですらも糾弾するには危険な相手だった。


 ならばっとカプリスはある誓いを立てた。


 警察機関であっても糾弾できないというなら自らの手で……

 両親のように、悪魔の力を借りるのではなくあくまでも自らの力で……

 自分自身の力でもって両親を打倒して神の座から引きずり落とす誓いを立てた。


 その誓いを現実にするため、まずはなによりも『力』を求めた。


 なにせ従属神な父はともかくとして、母は腐っても神だからだ。


 到底許されない不当な手段で得た『神力』であっても、『神力』を保持している以上は神。

 多くの従属神や警察機関の上層部をも従える、それ相応の権力を持つ神。


 下手に糾弾すれば神々の争いという、神々の世界の禁忌に触れてしまう恐れがある。


 だからこそ、カプリスは純粋な『力』を求めた。

 権力や立場のせいで手出しできないっというなら、娘である自分が正当な手段で得た『力』でもって母を打倒して下剋上を果たす。


 小細工も何もない正攻法ともいえる手段だが、いざ実行に移すとなると不可能と言わざるを得ない程の難易度といえるだろう。

 それだけ、『神力』を持つ者と持たざる者には隔絶した差があるのだ。

 だが、神の中にはあえてその差を覆して下剋上を果たした者こそが神にふさわしいっという風習があるのも事実。


 故に正攻法であり、見事に神を打倒せたというなら『勝者こそ正義』で全て許される傾向が強い。


 そのためにカプリスはバニラと共に神を打倒する力を求める者が集まる『破壊と殺戮の神』に従事した。


 表向きは次代の慈愛の女神だと期待される、慈愛の女神の愛娘としての体裁を整えながら、裏では『破壊と殺戮の神』の元で修羅のごとき修行と戦闘に明け暮れた。


 何度も血反吐をまき散らし、時には死に瀕するような状況へと陥っても、何の非もないのに悪魔への生贄とされ、そのまま生き地獄ともいうべき待遇へと堕とされてしまった義妹であるビーナスの事を思えば……


 例え無自覚ながらも虐待していたビーナスへの罪滅ぼしと思えば……


 元々の才覚に加えて、その償いの想いが力になってくれたのだろう。

 幾多の戦場を駆け抜け、試練を乗り越えていったカプリスは驚くべき早さで上位天使(セラフィム)にまで至った。



 だが、上位天使(セラフィム)にまで至っても神を打ち破るにはまだまだ力不足。

 神を打倒するには従来の常識を打ち破るかのような、特別な力を手にする必要があった。


 そのために同じく上位天使(セラフィム)へと至ったバニラとひたすら精進を続ける事、幾数年を経たある日。


 カプリスは、偶然ながらも従来の常識を打ち破る『力』を……

 『神力』を真正面から打ち破る『力』を手にしたのであった。

本当、この経緯をみると大真面目に戦乱の女神とかに就任した方がいいんじゃないかって思うよねぇ……


でもまぁ、戦乱の絶えない世界では戦場の最前線であっても活動できる慈愛の女神が居てくれた方がよさげだし、割と適任っちゃー適任なのかも?

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― 新着の感想 ―
そういえば、ゲームの設定だけど戦乙女が主人公のヤツで主神さんも努力して最高位に上り詰めたんだよな。曰く「神は完全である為成長せず、半神である為成長できた」そうです。 下剋上。弟子の最終目標。野心家の…
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