21⑨.何も知らない事こそが罪だったわけだし(SIDE:慈愛の女神カプリス)
鞭は血とも言うしねぇ……
ん~間違ったかな……?
※ 前日の更新を219話と220話を間違えていたので、急遽差し替えました
後、何らかの事情で大半の文章が消えてたっぽいので、再度入れ直しました。
カプリスはフランクフルト王国を守護する神々の中でも筆頭ともいえる慈愛の女神の娘として生を受けた、いわゆる神の血を引く子供であった。
神の血を引く子供……といっても、カプリスは生まれながらの神でない。
母である慈愛の女神も生まれながらの神ではなく、神であった祖母から『神力』を受け継いだ事で神へと至った。
すなわち、慈愛の女神は親から子へと世襲されていく神であった。
そうしたシステムをとる神はそれなりに多い。
なにせ『神力』は有限。その限りある『神力』を生まれて来る子供に分け与えたはいいが、その子供が愚者だったら……
さらにいえば、愚者が『神力』を決して神にしてはならない者へ受け継がせれば……
そのせいで多数の悲劇を引き起こした事例があったからこそ、神も万が一が起きないよう世襲のシステムを取り入れたのだろう。
だからカプリスは生まれた時こそ天使でも、いずれ母である慈愛の女神の座を受け継ぐのだと何の疑問もなく思ってたが……
ある日、自分がみていた世界は全くの誤りである事を知った。
事実を知るきっかけは偶然だった。
両親の身の回りを世話する天使達の雑談から両親の部屋に興味を持ち、こっそり忍び込んで散策していたら、丁度両親が戻ってくる気配を感じたので急ぎベットの下へと隠れた。
優しい両親の事だから部屋を漁っていても怒るどころか、笑って許してくれそうな気はする。
それでも、部屋を勝手に忍び込むのは将来の慈愛の女神にふさわしくない行為だからっと思い、気付けばついつい隠れてしまったのだ。
(まぁ、自分の非をごまかすために隠れる事の方がよっぽどふさわしくないわけだったが、ある意味それが功を成してしまった。少なくとも、何も知らない事こそが罪だったわけだし)
そう、カプリスはあの日ベットに隠れた事で……
自分がみていた世界が全て虚像だった事が知れたのだ。
カプリスは慈愛の女神から生まれた娘と信じていた。
両親や周囲がそう話していたから、無条件でそう思い込んでいた。
だが、真実は違った。
カプリスは慈愛の女神の娘ではなく、婿として迎え入れた父が連れて来た愛人との間に生まれた子供。
さらにいえば母が持っていた慈愛の女神としての『神力』は受け継いだものではなく、前任の女神から奪い取ったものだった。
一応、神の資格である『神力』を奪い取る事自体は問題ない。
神の中には穏便な譲歩ではなく、力や知恵を試すためにあえて奪取させるよう仕向ける神もいる。
だからこそ、母も自らの力や知恵でもって奪ったなら非難するようなものではない。
だが、母はあろうことか悪魔の力を頼った。
おまけに、悪魔の力を頼る際の生贄としてビーナスを差し出したのだ。
父もその企みに加担しており、二人は完全な他力本願の力でもって前任の慈愛の女神を殺害して『神力』を奪ったのだ。
以後は何食わぬ顔で両親は慈愛の女神とその伴侶という立場をモノにしていた。
逆にビーナスは悪魔の生贄にされた代償のせいか、羽が黒く染まって堕天した。
カプリスはビーナスの事を天使の面汚しと称していた。
黒い羽なんて堕天使の象徴だと、徹底的になじっていた。
前任の慈愛の女神の娘であり、前任の神に恩義があるからいう理由だけで追放しない両親を甘いっとののしっていたが、ビーナスの今の待遇の根本の原因が両親のせいだとしたら……
さらにいえば、ビーナスの事を都合のいい奴隷として死ぬまでこき使おうと画策していたと知れば……
それら事実を両親の口から聞かされたカプリスは当初絶句した。
あの優しい両親がそんな恐ろしい事をしていたなんて信じたくなかった。
でも、一度浮かんだ疑惑が消えるわけなく……
カプリスは真相を確かめるべく動いた。
自身の周囲は盲目的に両親を信じ込んでいる者が多く、下手すれば自身の身も危うくなるっと思ったので外部の友人……
正義感が強く、曲がった事が嫌いだと豪語していた天使バニラに相談。
最初は彼女も信じられないっといった顔をしていたが、彼女経由で秘密裏に専門の警察機関へと内偵を依頼してもらい……
結果、両親が暴露していた企み事は全てが真実だと証明された。
そして、母を盲目的に信用してる狂信者が機関の上層部にも一定数存在しているため、機関からの介入が難しいのが現状なのも判明したのであった。
神々の世界でも貴族世界と同じような本家乗っ取りや本来の跡取りを不遇に扱うといったクズ行為が行われていたようである




