217.(最終話)“聖女王”アーデルとゆかいな仲間達の愛が世界を救うと信じて……私達の旅路はこれからだ!!!
まさかの打ち切りエンド!?
アーデルの聖女としての巡礼の旅。
その旅にお供するのは夫であるハイドや傍仕えの侍女メイはもちろん、同じく宰相の座を一時父であるゼーゼマン公爵へと預けたロッテンとその夫であるマイヤー。
他にも護衛をとりまとめるペーターや巡礼の旅経験者としてアーデルの道先案内の役目を買って出たヨーゼフ。
さらに国の中枢が不在な時期にアーデル達と共に各部門長の代理を担って政務をまわしていた同期の側近達。
ここまで来たら使節団といってもいいほどの面子だが、同行する団体がまだ二組ほどいた。
一組目は大々的な商売のチャンスという事でシィプシィとロンジュが共同出資で結成させた、商会ギルド主導のキャラバン隊。
二組目は一年足らずでトップスターとなったミルチル小悪魔コンビのアイドル活動を支援する教会主導の営業スタッフ達。
もちろん彼等はアーデル達の政治活動とは一切関わらないが、アーデルの行き先々で商売やら布教活動を行うのだ。
深く考えずともアーデルの威光を利用する気満々なのは確定的に明らか。
とはいえ……
「お義姉ちゃん。私達もついてっていいでしょ?」
「「アーデルおねえちゃ~ん。いいでしょ~?」」
「「「「「いいですとも!!」」」」」
クラーラとミルチルコンビというあざとさレベルマックストリオから上目遣いでお願いされたら、アーデル含む各責任者は断る選択肢なんてまず取れなかった。
よって、巡礼の旅にキャラバン隊とアイドル活動営業スタッフ達の同行が許可されたわけだ。
ここまでの同行者となれば当初予定してた護衛だけでは到底手が足りず、冒険者ギルドで護衛の追加要員を募集したから人数がさらにドン!!
結果として、想定外の大所帯となったわけである。
「はっはっは。旅は道連れ余は情けとも言うし、楽しい巡礼の旅になりそうではないか」
「そうなるといいのだけど……」
意図せず大所帯となってしまった一団を前に笑うハイドとは対照的の暗い表情のアーデル。
アーデルには不安があった。
この旅の目的は聖女の勤めとされる巡礼であり、フランクフルト王国の女王としての挨拶周りでもあり、
そして……
魔女クレアの元から去る時に対戦を約束した悪魔達から送られてきた果たし状に応えるためでもあった。
悪魔達もこの日のために去年から……より正確にいえば、アーデル達がクレアの元から王国へと帰還する際に別行動となったロンジュに渡されていた手紙。あれには『アーデルVS悪魔達』の大雑把な対決プランと協力要請が書かれてたらしく、受取人だったクレアの孫にあたる教皇リリーナとサクラ商会長カスミが承諾。
悪魔達は巡礼ルートの各ポイントに先回りし、様々なトラブルを持ち込む等して“聖女王”アーデルと対決するための舞台を整えていたそうだ。
一応各々の地で起きているトラブルはアーデルに責任ない出来事だし、例えアーデルが負けても騒ぎそのものは収拾付かせる算段が整えられているとはいえ……
各地のトラブルを紐解けば全てアーデルと繋がってしまう。
もし悪魔達とのつながりがバレたら……
そう思うと、不安にもなろう。
アーデルはパンっと顔を叩く
「悩んでても仕方ない!何かあったらその時その時に全力対処!!そう……いつも通りにやってけばいいのよ!!!」
「その通り!!何かあればその時考えればいいのだ!!」
「お義姉ちゃん、前向きになったついでにそろそろ出発の号令よろ~ね」
クラーラから催促された事により、アーデルは前を向く。
眼前には旅をお供する面子だけでなく、留守番組。
実権を預けた側が預かる側にまわるという、去年とは逆の立場となった太后ブリギッテや、ドム爺を始めとする長年ブリギッテを支えてきた古参の重臣達。
さらに、国民達も大所帯となったアーデル達一向を見送ろうと集まっている。
大勢の人々に見守られながらアーデルは簡潔に挨拶を済まし、王都を出て最初の目的地へと歩き出した。
女王が馬車に乗らず徒歩というのはあれだが、これはアーデルが断固として馬車を拒否したのだ。
なぜなら……どこにでも自由に歩いて行けるようになったクラーラと共に各地を巡るという、昔からの夢を叶えるためだった。
以前まではアーデルが次期王妃となる立場上、断念せざるを得ない夢であるも現実は御覧の通り。
様々な要因が重なり、こうしてクラーラと共に各地を巡る機会を得たなら馬車を搭乗拒否するのも当然というものだ。
だが、全て目論見通りといかないのもまた事実。
「はっはっは!!アーデルよ、夫である俺もお供させてもらうぞ!!」
「俺もだ!道中でクラーラに何かあれば俺……俺……アーデル義姉さんから⑨割殺しにされる未来しか思い描けないから、身の安全だけは守らせてくれ!!!」
二人の元にハイドとロンジュというおまけが駆け寄ってきた。
そうなれば当然アーデルはぷっつんだ。
「キサマラ……ワタシトクラーラトノイチャイチャタイムヲジャマスルトハバンシニアタイスルゾ!!ソコニナオレ!!イマスグコロシテy」
スパーン!!!
「はいはい、まだ皆がみてるのだから暴走しないの!!」
「「「「「…………(いや、暴走もだが、皆が見てる前で鋼のハリセン振り落としたのはまずかね?)」」」」」
「いえいえ、居残り組の皆さんとはもうそれなりに距離ありますし、脳天の一撃はただの紙のハリセンと思ってるでしょう。なので問題ありません。くいくい」
「「「「「…………(いやいや、女王様の脳天をハリセンで打っ叩いた事実そのものがまずいだろ!!)」」」」」
「まぁまぁ細かい事気にしてはいけません。あまり深く考えると剥げてしまいますから、些細な問題はスルー致しましょう。キラキラキラ」
「「「「「…………(ヨーゼフ大司教様、あなたキャラ変わりすぎですって!!!この一年足らずの間に一体何があったんですか!!!?)」」」」」
「大司教様の言う通り、いくら護衛といっても些細な事を気にし過ぎていたら身が持たない。旅路は長いのだし、スルー出来るものはスルーしておこう」
「「「「「さーいえっさー!!護衛隊長ペーター様の言う通り俺らも適度に気を抜いておきやーっす」」」」」
「「「「「…………(護衛までこんなノリかよ!?これ本当に大丈夫なのか!!!?)」
そんなこんなと、スタート直後ですでに雲行きが怪しくなった巡礼の旅。
この旅路でアーデルとゆかいな仲間達が待ち受けているものはなにか……
今の段階では断言できずとも、苦難の連続なのは確実であろう。
よって、最後の言葉は……これで〆させようと思う。
“聖女王”アーデルとゆかいな仲間達の愛が世界を救うと信じて……
私達の旅路はこれからだ!!!
とぅびーこんてにゅーど?
本当に打ち切りエンドというオチでしたー?




