216.ロッテン……この世界には決して触れてはいけない話題ってのがあるのよ
モノレダー、あなた疲れてるのよ……
最早一言で語れない程のボリュームがあった結婚式の他に語るべき出来事といえば、結婚式を見届けたトビアスが改めてクズを増長させた責任を取る形で自らセップクを懇願した事だろう。
これはクズが魔王化したあの日から定期的に懇願されていたものであり、今までは不安定な情勢もあって保留となっていた。だが、情勢が安定した今ではもう説得しきれず、トビアスの望むがままセップクの後にアーデルが聖剣でもって介錯を行い、表向き王家の血が途絶えた……
っと思わせといて、トビアスのセップクに思うところがあったクレアがお祭りの日にこそっと託した『復活薬』によって蘇生。
その後は生きる事が聖樹の聖女の意思なのだと知ったというか、勘違いしたトビアスは死ではなく生。前王トビアスは歴史上死んだ事となり、もう一つの籍である平民ビィトとして余生を過ごす道を選んでくれた。
改めてビィトとなった後は故郷となるアルプス山脈の牧場へと帰郷し、幼少期から交流のあった元モヒカンの家族達やアムル家に保護されていた元貴族の一部、貴族へと戻るのではなく爵位を返上してそのまま平民として生きる道を選んだ元貴族子息や子女と共に牧歌的な生活を送るようになったり……
サクヤのウェディングドレスの所有権をサクヤから正式にアーデルへと譲渡され、その代わりに聖剣と名工の魂が宿った槌を献上。
聖剣はサクラ商会お抱え鍛冶師の目指すべき到達点となり、鍛冶師達は名工の槌を振るっては次々と高品質な武具が生み出されるようになったり……
それら武具の約半数は王国へと卸される契約となったので、王都ではそれらの品々を扱うサクラ商会の支部が作られてロンジュが支部長に任命。クラーラと一つ屋根の下な王都暮らしとなったせいでちょっとした?騒動が起きたり……
クラーラはクレアが初日に振舞ってくれたタルト含めた各種お菓子を支店でのもう一つの主力商品とするため、名の知れた三ツ星パティシエや宮廷料理人をヘッドハンティング。
今では“聖女王”として王国のトップに立っているアーデルすらも義妹特権でもって招聘させた超豪華な陣営でもってクレアから譲り受けた各種お菓子のレシピを……
人類の限界を完全に超えた未知ともいうべき知識と技術が詰まったキチガイレコードと称してもよいほどのレシピの再現と量産化を目指して、厨房と言う名前をした研究所で全員鬼気迫る勢いでもってあれこれと四苦八苦しながら、たまに爆発して吹っ飛ぶ光景がみられたり……
教会の地下の奥底には神に仇名す者が収監されている牢獄があり、そこで拷問を受けるクズを見たという真偽不明な噂が飛び交っていたり……
クズを封印していた壺を手にした者は壺から伸びてきた闇の手によって中へと引きずりこまれて現世から永遠のお別れ……っと思いきや、翌日の朝にはなぜか教会の礼拝堂にて五体満足で発見されたり……
彼等の証言によると、闇の手で壺の中へと引きずり込まれた後は『ベットに括りつけられて腹を掻っ捌かれた』やら『死ぬほど不味い泡立つ緑の液体を飲まされた』やら『大鍋に放り込まれて一晩中煮込まれた』やらと、様々ながら共通してたのは決まって頭に『ダボダボな白衣を着た悪魔のような少女』が付く事から……
「あのクズを封印してる事になってる壺の中というか、壺から繋がってる空間ってやっぱり……」
「アーデル、何か知ってるの?」
「ロッテン……この世界には決して触れてはいけない話題ってのがあるのよ」
「そう。アーデルが無理でもミルとチルとかいう小悪魔達に聞けば何かわかりそうではあるけど……うん。ここはアーデルの助言を聞き入れた方が無難か。
カナリア、そういうわけだからクズの壺と悪魔絡みで何かトラブルがあっても王宮は一切合切関わらないよう改めて通達しときなさい」
「わかりました」
っというわけで、触らぬ悪魔にたたりなしなスタンスを徹底させた王宮組だったが……
教会はがっつり悪魔と関わった。
なにせミルとチルの人間形態は悪ガキ少年だったオニオンと違ってあざとい可愛さ全壊なロリ少女だ。
そんな二人があざとらしく神様に興味あるという振りをして教会へとすり寄り、ヨーゼフ大司教を始めとした多くの聖職者を虜にした。
悪魔に内部から浸食されゆく教会大丈夫か?っと不安に思うも、何かあってもそれは保護者であるマイヤーと正体を知った上で懐に入れた大司教ヨーゼフの責任。
例え二人が悪事を……定期的に行われる慰安コンサートや握手会で着実に数を増やす信者達から莫大の寄付金を巻き上げるという、そのうち大問題にまで発展しそうな悪事を行っていようとも、国としてはマイヤーとヨーゼフに全責任を押し付ける算段を付けた上で徹底的に黙認するスタンスをとったり……
こんな感じで王国内ではクズ処刑の日から大小様々な出来事が起こり、様々な方面で影響を与えていた。
そして、年を跨いだこの春……
アーデルは王の座を太后となったブリギッテへと一時的に預け、一介の聖女としての勤めを果たすために巡礼の旅へと出る事となった。
次回、ついに最終回!?




