215.クレア様!?なにやってるんですか!!?
何やってるかはともかく……
確実なのは、ろくでもない事が起きるフラグが立ちましたw
7月に行われたクズの処刑から約⑨ヵ月が経過した。
その間に王国内やアーデルの近辺では様々な……実に様々な動きがあった。
あまりに多すぎるので一例的に、アーデルは去年の秋頃にハイドと結婚式をあげた。
その際にはロッテンとマイヤー他、多数のカップルとの合同結婚式となったのだ。
これは毎回結婚式の度に祝うなら、皆で同時に結婚して大々的に祝おうというハイドからの提案であり、それに皆……そう、臣下達どころか国民達すらも同意したのだ。
実際、辺境では収穫祭と合わせて合同結婚式をあげるカップルが多い。
それに加えアーデルは他者に“祝福”を与える事に特化した力を持つ聖女なのだ。
聖女と同じ日に結婚式をあげるというのはゲン担ぎとして最適。
“祝福”のおこぼれに預かりたいっという想いもあって……
収穫祭と同時開催された合同結婚式は前夜祭や後夜祭も含めた、連日連夜のお祭り騒ぎになった。
それだけの規模だから国内どころか国外からも見物客が訪れ、それらを目当てに商売人も訪れる。そんな中でアーデルが興味を引いたのはあるシチューの屋台だった。
そのシチューは10歳ぐらいの少女が作ったものでありながらも、料理人系聖女として売り出し中のアーデルが作ったシチューよりも美味との声多数。
これは是非とも食べねばっと思い、お忍びで訪れてみたらそこに居たのは……
「ク、クレア様!?なにやってるんですか!!?」
「クレアってだれのことかな~?今の私はレアちゃんだよ~」
「いや、名前もそうですけど、一体何をしに……いや、それよりそのフリフリメイドみたいな恰好はどうかと」
「え~いいじゃな~い、今の私はパパのお手伝いをする10歳の女の子だし、この服も客寄せっと思えばおかしくないでしょ~?」
「まぁ確かに、周囲の反応からして客寄せ効果抜群ではありますけど……」
この目の前の少女は見た目こそ10歳でも、中身は100歳を超えたお婆ちゃんだなんて知れば、どれだけの男達が絶望するか……
だが、クレアは人々の絶望を糧にする悪魔達の長だ。ある意味それを狙ってるのかもしれないが、アーデルにその悲劇を食い止める手段がなかった。
「まぁそれはそれとして一杯どう?今作り途中の鍋は後30分ほど煮込む必要あるけど、ここにはすでに30分煮込み済みのものが……」
「では、一杯お願いします。元々そのつもりで来たので……」
「まいど~あっ、お値段は一杯300Gね」
女王相手にお金を請求する方も方だが、律儀にしっかり払う女王アーデルであった。
前評判通りのシチューを堪能しながら、ふと屋台の奥を見ると食材の下ごしらえをしている優男が居たので一体誰かと思って気になってると……
「あれはパパだよ」
「パパっていうと……もしかして、いつも胃痛に悩まされてるあの?!」
「正解。よかったら挨拶してく?」
「いえ結構です。でも……仮にも偉い人がこんなとこに来てて大丈夫なんですか?」
「いいのいいの。こうした人々が吉兆を祝うお祭りは神様も一人の人間として混じって参加するのが通例だもんね。だから、参加してるのは私達だけじゃないよ。具体的にいえばここ一帯の屋台は神様の関係者、もしくは神様本人が出店してるものだし」
「へっ?!」
「ちなみに、あそこで人間に化けてる地獄の鬼達を叩きのめしてるのは慈愛の女神カプリスちゃんだよ。いや~相変わらず慈愛の女神様とは思えない程の血の気の多さだよね~」
「えっと……カプリス様って……慈愛の女神様なんですよね。…………仮にも慈愛の女神様がそれでいいんですか?」
「別にいいんじゃないの?あの子は女神に就任する前だと『殺戮と破壊の神様』に従属して異世界含めた戦場でブイブイいわせてたし、そういう武闘派だからこそ『殴りプリ』とか『殴りメディ』とか呼ばれる戦場での最前線を好む特攻系聖女から人気あるみたい。
ちなみに慈愛の女神様は複数居るけど、他も同性愛命とか幼女や幼児スキーとか日常会話が成り立たない程のポエマーとか変人ならぬ変神が大多数。人間が幻想するポピュラーな女神様はもう絶滅危惧種だと思ってた方がいいかもね」
「…………」
思わぬ事実が判明したアーデルは改めて場を見渡すと、薄っすらながらも神のオーラを纏った者が同性愛命の腐女子達と腐った話題で盛り上がってたり、隣国の教皇様や上位天使と共に少年達を木陰?から鼻息荒く見守りながらトークしてたり、詩人と共に聞くだけで精神に極大ダメージ食らいそうなポエムを語り合ってたりしていた。
つまり、そいつらがクレアの言っていた他の慈愛の女神様なのだろう。
さらによくみれば、他の神々も様々な問題行動を起こしており、その空気に当てられたのか神と知らずに無礼働いてる愚者も多数。
「あー大丈夫。お祭りの日は基本無礼講だし、神様も今日だけは人間の法に従ってくれるからね」
その人間の法に抵触してる者が多すぎて完全に収拾着かない気配あるのだが……
アーデルはついそう突っ込もうとしたが、周囲は問題行動や無礼講を含めて楽しんでる事もあってアーデルはもう深く考える事なく、半ばヤケぐそ気味に神々直営ともいえる屋台料理をはしごしてまわったのであった。
ちなみに、食べ歩きした屋台料理達はどれも絶品だったと付け加えておこう。
神様達もたまには息抜きしたいんですよ……




