214.なにその悪意の塊満載な悪魔の薬わ…… ※ クズのざまぁ末路回
まぁ作ったのは悪魔の長だからねぇ……
それに、この薬を使うよう頼んだのは慈愛の女神様だし、開発者に責任をどこまで問えるのか……
「あーそうそう、クズに投与した薬なんだが……」
オニオンはクズの末路を一通り語った後、取って加えつけたかのように薬の詳細を語り出した。
その内容は一言でいえば……
夢の中で過ごす30日間が現実ではたったの5分という、体感速度を超人レベルまで早める睡眠薬なのだそうだ。
「現実でどんだけ苦痛を感じようとも寝てる間は苦痛を感じない。だから首の苦痛から解放されるわけで、チャカボさんは別に嘘は言ってないぜ。
だが夢の内容はクズが受けてきた30日間の拷問をより過激にさせたものだ。あれもクズが自分で苦痛を受けていれば現実以上にはしなかったが、クズはチャカボさんの配下に苦痛を請け負わせたからな。
結果、苦痛を請け負った配下達がその経験を元にしてより過激な内容にアレンジ加えてフィードバックだぜ」
「なにその悪意の塊満載な悪魔の薬わ……」
「一応言っとくが薬の開発元そのものは俺達じゃない。これはある異世界での人間が開発したものがオリジナルだ。なんでもそこでは終身刑クラスの犯罪者が多数居て収監場所が確保できず、かといって処刑は国民達から野蛮だと支持得られず……苦肉の策(というより意趣返し?)で生まれたのがこの薬を併用した『懲役30日』。
この薬を投与することで受刑者は現実5分で体感30日。合計すれば約720年という歳月を夢の中でとにかく拷問を受けて過すという、人間の悪意がこれでもかと詰め込まれた刑罰だ。そんな代物だから規制かけられて製造禁止されたんだが、ボスがその話を聞いただけでそっくりそのまま完コピさせちゃったんだよな。
まぁ、元々は製造禁止にされてたブツだから使用に大きな制限課せられてるが、ボスがいろいろなところと交渉してくれたおかげでしかるべき手続きを踏めば遠慮なく使えるんだよな。はっはっは!!」
オニオンは笑いながら、その後もクズが受けている拷問内容を詳細に話しだすも、それを聞いた者はやはり笑えなかった。
例えクズがどうしようもないクズであっても、さすがに同情してしまう程の内容だ。
だが、同情したところでクズの身柄はすでに悪魔達へ引き渡した以上、もうどうにもならない。
出来るのはただ冥福を祈るぐらいだろう。
「とまぁそういうことで、クズは未だに過去をくり返してるっと勘違いされるよう博士が細かいところを調整したからな。
いや~その調整には俺も付き合ったが、大変だったぜ。はっはっは………イヤゴメンナサイ、ボスガキニシテルノハネンレイジャナクヒンニュウダッテコトハダレニモシャベリマセン。ダカラオシオキハ……モルモットアツカイハヤメテクダサイ……ガクガクブルブル」
「な、なになに?どうしたの?」
「これは……何事でしょうか?」
「…………」
オニオンが話途中、急にガクガク震え出した事で周囲は何事かうろたえ始めるも、アーデルはオニオンが薬の調整に付き合う経緯を……ボスであるクレアの逆鱗に触れて問答無用にモルモットとして地下実験室に放り込まれた経緯をその場でみていた事もあってピンっときた。
(あーなるほど……クレア様の地雷は年じゃなく胸のサイズだったんだ)
一応アーデルからみれば、クレアの胸のサイズは平均より小さそうであっても最低ランクとまではいかない。
そこまで気にする程に小さくはなさそうなのだが……
(身体に対するコンプレックスは人ぞれぞれだし、下手に触れない方がいいわよね)
アーデルも様々なところが大きすぎるせいで既製品のドレスを身に着ける事ができないという悩みがある。
大半の人はオーダメイドで作ってもらえば解決できるからっと大した問題じゃないと励ましてもらえるが、アーデルとしてはウィンドウショッピングという楽しみ。
その場で見つけた掘り出し物に袖を通すという楽しみが出来ないせいで不満をかかえてるのだ。
こんな具合に人のコンプレックスは当事者じゃないとわからない部分があるし、なにより……
先ほどから絶対零度と言わんばかりの冷たい視線を感じる辺り、オニオンの無意識に垂れ流してるうっかり失言はまず間違いなく当人の耳に入ってるのだろう。
その証拠に……
この日を境にオニオンは王国内で見かける事がなくなったのである。
一応マイヤーの暫定部下となった配下の悪魔。ミルとチルと名乗った小悪魔達によれば……
「リーダーは大ボスの命令で急遽出張する事になったかー」
「なんでもある異世界の勇者達が調子乗ってきたから、その伸びた鼻面をへし折ってくれとか依頼が入ったとか言ってたぞ」
「……(それ、出張という名前の左遷じゃね?)」
アーデルはそう直感するも、真相を聞く勇気は一切なかったこともあって無理やり納得するのであった。
なお、以下はアーデルの元から離れた小悪魔ズの会話。
「チルーそういえばー、大魔王となるクズの転生予定先が丁度リーダーが派遣された世界だけどーこれってやっぱり何か関係あるのかなー?」
「ミル。当然あるに決まってるだろ。いくら契約やらなんやらでがんじがらめという二重三重の対策を取った上で大魔王に転生させても、元があのクズなんだぞ!!
あたいらはもちろん大ボスすらも予想できないような異変を引き起こすだろうし、リーダーの派遣はクズが何かやらかした時用の事前準備も兼ねてって考えればすぐにわかるぞ」
「そーなのかー。これが一石二鳥ってやつかー」
「ん~ちょっと違うが、概ねその通りだな」
どうやらオニオンの派遣は別に懲罰を兼ねた左遷ではなく、いずれ送られてくるクズの監視と対処もついでに行えるという渡りに船ともいえる依頼だった事が真相であった。
そんな事実に気付かない、気付こうともしないアーデルはオニオンの冥福を祈りながら、今日も忙しいながら充実した一日を過すのであった。
そして、処刑から丁度一か月後。
不死の祝福が切れたクズはようやっと待ち望んだ死を……
クズの体感として720年間待ち望んだ死をようやく迎え、チャカボとの契約通り大魔王として、オニオンが派遣されている異世界のダンジョンボスとして転生した。
これからはダンジョンのボス部屋から一歩も出られないという制約の元、半永久的に訪れる冒険者達の相手をする生活を送らせる予定との報告がされた。
「リーダー曰く、クズが反省して大魔王としての任務を全うにこなすならある程度の優遇。反省せずに馬鹿な事企み始めたなら冷遇を与えるようダンジョンマスターに進言するつもりだとかいってたなー」
「どの道あいつはもう二度と王国に戻って来ない。戻って来させないから安心していいぞ」
「そう……まぁ、あのクズが反省してるとは思えないし、ミルちゃんもチルちゃんも何か進展あったならまた知らせて頂戴ね」
「「は~い」」
アーデルの予想は的中した。
クズはあれだけの生き地獄を体験したにもかかわらず、大魔王という強者へと復活した影響もあってかすぐに増長。
逆恨みでフランクフルト王国へと侵攻する意志までみせた事でダンジョンマスターは刺客を送り付けた。
クズはその刺客の手によって大魔王という強者の身体を徹底的に破壊され、雑魚で美味しいボーナスキャラにまで弱体化。
今まで冒険者を狩る立場だったクズが逆の狩られる立場へと変貌しても、ダンジョンボスの立場は変わらず……
ボス部屋に訪れた冒険者達はクズを生きたまま素材を解体した後に残った本体へとトドメを刺してボス撃破特典をゲット。その30分後にはボス部屋で何事もなく復活したクズの元へ新たな冒険者が訪れ……というまさしく家畜のような日々を過す羽目となった。
その様はまさに……
ま る で 成 長 し て い な い
である。
その後、クズがどうなったかは……
神のみぞ知る。
そして、これは『神の味噌汁』である ( ゜∀゜)o▽




