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20.急ぎ駆け付けたけど、タイミングばっちりだったかな?

イメージ的には『まてぃ!!』のあれかなかな(≧∇≦)キャー□ムニイサーン

 開け放たれた扉の前、後光を背にして仁王立ちする影。

 絶望という闇の中を照らす希望を前にして、うっかり崇めてしまいそうな錯覚……


 いや、一部は本当に崇めていた。

 うっとりと恍惚な表情を浮かべながら崇められていた。


 そんな空気の中、扉前で仁王立ちしていた影は満足げに歩を進める。



「うむうむ、異論はないようだな」


 その途中、ぎゅむっとまだ血の海に沈んでいるアーデルの頭を無遠慮に踏みつけたが皆は気にしない。

 仮にも将来の王太子妃で現王妃代理という、王が無能な置物の有様からして実質的に王国での最高権力者といっても過言でないアーデルを踏みつけながら、そのまま上座の席に堂々と腰掛けた。


 これは不敬罪として罰せられても仕方ない行いながらも、当の被害者であるアーデルならば不敬罪として問うことは決してないだろう。なぜなら……



「その提案はぜひお願いしたいとこだけど……本当にいいの?クラーラ」


 影の正体はアーデルの義妹。クラーラだからだ。

 クラーラを変な方向で溺愛するアーデルにとって、クラーラからの踏みつけはご褒美も同然。全く問題ないという寸法なのである。



「もちろん。私もさっきマイヤー様のお付きから話を聞いてね。急ぎ駆け付けたけど、タイミングばっちりだったかな?」


 そう発言したクラーラの視線は王国を裏から掌握しようと企むドム爺に向いている。

 ちなみにドム爺の正体や企みはアーデルやロッテンのような中枢しか把握しておらず、他のモブは好々爺なお目付け役ぐらいにしか思っていない。


 そして、クラーラは非公式ながらも王家直系の血筋。ドム爺にとっては、その血縁を利用されてはまずいという判断の元でドム爺の正体は知らされていた。



 だからこそロッテンは今の状況。クラーラとドム爺のにらみ合いを水面下で牽制を込めた挑発合戦を行ってるのだと予測するも……これは間違いであった。

 いや。そもそもの話として、ロッテンとアーデルは前提からして大きな間違いを犯していた。






 まず、アーデル達は前皇帝と王妃の認識を間違えていた。


 確かに前皇帝は侵略を是とする過激な面はあっても、考えなしの侵略は行ってない。

 周囲の進言や諫言にはしっかり耳は傾けるし、時と場合によっては穏健派との折り合いを付かせる妥協や柔軟な対応も取れる人物だったのだ。


 対して、政略結婚の打診があった若かりし頃のブリギッテはバリバリの強硬派。

 『政略結婚なんてまどろっこしいことせずに力で侵略すべきでしょ。ばきぼきばきぼきばきぃ』っと結婚に難色を示すどころじゃない、明様に同盟の証として嫁がせてはいけないほどの危険人物だったのだ。


 だが、ブリギッテは強硬派であっても政治のなんたるかを理解するだけの頭はある。

 父である皇帝や後の皇太子となる実兄から政略結婚の目的やらなんやらを論理立てて説得されれば……

 ブリギッテ本人にとっては面倒ごとの塊としか思えない皇位継承争いを堂々不参加の意を示せるならばっと、しぶしぶながら同盟の証となる政略結婚を受け入れるぐらいの分別はあったのだ。


 それでも前皇帝は万が一に備え、お目付け役として同行するドム爺に密命を……


 “何かと直情で動きやすいブリギッテが暴走して冷静な判断を下せなくなったら、即座に反逆を起こして実権を奪い取れ”


 という、ブリギッテが間違いを起こした時用の保険的な密命を受けていたのだ。


 だから、ドム爺はブリギッテが直情ではなく理性的な判断を下せてる限りは実権を奪い取る気ないのである。


 とはいえ、こうした立場は周囲にいらぬ誤解を与えてしまうものだが、ドム爺はその誤解を策略に……


“ブリギッテ王妃から政権を奪い取りたいなら、まずドム爺を味方に引き入れるべき”


 なんて、王国を掌握しようと企む不届き者をおびき寄せる囮として積極的に利用したのである。


 その策略は不届き者だけでなく、アーデルやロッテンのような将来の国のトップとナンバー2にまで通用した通り、効果抜群といえるだろう。



 結論からいえばドム爺は反逆を企む危険人物どころか、無条件で信じてもいい人物だったのである。


 そうしたドム爺の裏事情は、元々王政に関わらない上に王の隠し子という政治的に利用価値があるクラーラには知るべき情報ということで最初から暴露されており……




(ねぇドムお爺ちゃん。ロッテンさん、まだ勘違いしたままっぽいけど本当の事話さなくてもいいの?)


(いいんじゃよ。そもそも、政治とはさまざまな陰謀や策略が渦巻いている魔境なんじゃ。今は皇帝となった小童の裏情報の裏まで読めぬようでは、国政に携わる者として未熟者と言わざるを得ん!

 王妃様が帰って来るまではワシらに要らぬ警戒をさせるのも良い薬というものじゃよ!!ほっほっほ……)


(あーうん……そういう方針なら私からは何も言わないけど、その代わりとして王国暗部の長でもあるお爺ちゃんの手勢を何人か借りてもいい?)


(構わんぞい。あ奴等もクズ達に相当なフラストレーション溜めこんどるようじゃし、ワシが何か言うまでもなく自主的に協力するじゃろう。好きに使うがいいぞ)


(ありがとう。お礼はいつものアレ(お茶請け)でいいかなかな?)


(もちろんじゃとも。いつもありがとうな)


(どういたしましてー)




 とまぁ、ロッテンはクラーラとドム爺が水面下でバチバチやりあってると想像していた内容は、実に和気藹々としたものであった。

昔は過激で直情で動くタイプだった王妃様。

だから同じように過激で直情で動くアーデルとは波長が合い、すぐに信頼関係を築けたという裏設定があったりなかったり……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「溺れる者は藁をもつかむ」というけど、藁どころか救助艇がやって来ました♪ [一言] 知らぬは当人ばかり♪お爺ちゃんは何時「ヒーローは遅れてやってくる」をするのかな(笑)
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