1⑨2.おめでとう。試験は合格。これで修行は終わりよ
そして、次は飛天なんとかの奥義の伝授ですね、わかります(違)
「や、やった……やったぁぁぁぁぁ!!!」
アーデルはガッツポーズを掲げた。
その際、バランスを崩した一番上のクラーラが顔から地面に激突させてしまう事態におちいったりするも……
「大丈夫。こんなのかすり傷だから」
痛みより喜びの方が強いのか、鼻血を出しながらも満面の笑顔で笑うクラーラの姿をみてアーデルも今回ばかりは怒りより喜びの感情でもってクラーラに抱き着いて勝利を祝うのであった。
だが、修行はまだ終わったわけではない。
デールマンが二人にちょいちょいっと突きながら指差す。
そこにいたのは……
「こらこら。二人とも、勝利の余韻に浸るのはまだ早いわよ」
「えっ?」
もしかしてあれはまだ膝をついてなかった。
だとすれば、まだ勝負はついてない。
そう思った二人は慌てて体制を整えるも、魔女クレアは笑う。
「大丈夫よ。勝利条件は私に膝をつかせる事だからこの勝負、アーデルちゃん達の勝ちよ。だから……おめでとう。試験は合格。これで修行は終わりよ」
「えっ?えっ?えっ?……あー!!」
修行の終わり……
そう言われた事で二人はこれが聖女修行だった事を思い出した。
あまりに勝負が白熱し過ぎてすっかり勝つことを目標としてしまっていたが、そもそも勝負の目的は聖女の力を物にするためのもの。
勝ち負けそのものに大した意味はなかったのだ。
「別に丸っきり意味がないわけじゃないわよ。勝利はわかりやすい目標となるわけだし、その目標に向かって我武者羅にの努力を続けたからみえたのでしょう。アーデルちゃんが目指すべき聖女の道が……」
「え、えぇ……でもいいんでしょうか?私が目指す聖女は教会から完全に異端扱いされそうなんですけど」
「いいのいいの。修行開始前にも言ったけど聖女も魔女も根っこは同じ。例え魔女の力でも使い方次第では人助けにもなればその逆。クラーラちゃんも覚えあるでしょう」
「ま、まぁ……子供の頃に浮かんでた痣も元々は聖女と相対する魔女由来の力っておせっかいな死神から聞いてますけど」
「そうそう、魔女の力でも使い方次第で人助けは出来る。逆に聖女の力も悪用しようと思えばいくらでも悪用できる。結局は得た力で何を成したいかよ」
「成したい事……」
「まぁまぁ、アーデルちゃんはそんな小難しい事なんて考えなくていいわ。そもそもそういった事考えるの苦手なんだから、力の振るい所はクラーラちゃんに任せちゃいなさい」
「私に丸投げ!?……いや、別にいいけどね。ぶっちゃけ、お義姉ちゃんに任せると聖女の力を安売りしそうだし、しっかり紐付けて管理する監視が必要だなーって思ってたから」
「じゃぁ、これからも一緒に……って駄目でしょ!!クラーラはサクラ商会を継ぐロンジュと結婚して世界をめぐるという夢があるじゃない」
「結婚もロンジュが商会を継ぐのはまだ先の話だし、しばらくはお義姉ちゃんと一緒に居ても問題ないでしょ。なんならロンジュも一枚かませちゃえばいいじゃん」
「ぐぅ……相変わらずの減らず口を……」
「ふふふ……仲良く喧嘩するのもいいけど、まずは泥と汗を流してらっしゃい。それでも喧嘩の続きをしたいなら湯舟でやりなさい」
「それもそうね」
「じゃぁ続きは湯舟の中でやろうか」
「じゃ、じゃぁボクは外で」
ガシッ!!
「「デールマンも一緒に入りましょう」」」
「えーちょっと待って!!ボクは男、男だから!!」
「「大丈夫。こんな可愛い子が女の子のはずがない」」
「ちょ、それ理由になってなアーーーーッ!!!」
泣き叫びながらもお構いなしに温泉まで連行されてゆくデールマン。
その後ろ姿を笑いながら見送るクレア。
この一連の流れは修行終了後のお決まりパターンだ。
デールマンもこの3週間、ほぼ毎日アーデルとクラーラと共に温泉へと入れられてるのだ。デールマン自身もただの人形の頃はいつも入ってたのだからいい加減慣れろっと感じてはいても、正義の味方という心が邪魔をして吹っ切れないらしい。
だから脱衣所まで必死に抵抗するのは毎度の事でありながらも……
今日は最終日なだけあっていつもと違うサプライズが発生した。
そのため、温泉ではデールマンどころかアーデル達にとって想定外ともいうべき事態が引き起こされたのである。
さぁって、一体何が起きるのかなかな( ^ω^)♪




