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18⑨.こ、これが聖女の修行なの……?(SIDE:クラーラ)

鋼の錬金術の修行という前例があったのだし、そういうことなのですww

 “今日から始める修行内容は至ってシンプル。実戦でもって私に膝を付かせなさい。物理的にではなく心の膝を……ね。わかりやすくていいでしょ”


 修行開始の初日に魔女クレアが示した通り、修行内容は全て実戦であった。

 アーデルはクラーラとデールマンの力を借りて、全力で勝負を挑む。


 それだけだった。



 だが……



「「「天馬(ペガサス)シューティングスター!!」」」


「ギャラクティカマグナァァァァァァッム!!」



 BAKOOOOOOOOOOOOOM!!!!



「「「アーーーーッ!!!」」」


 クラーラとデールマンの力を合わせたアーデル渾身の技も、魔女クレアの前には全く通用せずに3人まとめて空高く舞い上がった。



 そして……



「あべしっ!!」


 グシャー


「たわばっ!!」


 ドシャー


「うわらばっ!!」


 ベシャー


 アーデル、デールマン、クラーラの順に折り重なるような形で顔面から激突した。



「さぁ立ちなさい。まさか、この程度で終わるわけじゃないでしょう?」


 山が崩れて地面へと寝転がるアーデル達3人を仁王立ちで見下ろす魔女クレア。


 この構図は本格的な修行を初めてからの一週間、何度も繰り返された光景だった。

 これが戦闘指南であれば、なんらおかしくない光景ながらも……これは聖女の修行だ。



(こ、これが聖女の修行なの……?)


 クラーラは地面に這いつくばりながら、幾度となく釈然としない想いを描いていた。


 一体自分は何をやってるのか……?


 最早理解の範疇を完全に超えた修行ながらも、わかる事はただ一つ……


 自他ともに認めるほどの脳筋なアーデルにとって、実戦こそがもっとも効果的な修行内容であることだ。




「当然よ……私はまだいけるわ!!」


 だから、アーデルは立ち上がる。

 何度コテンパンに叩きのめされようとも、その度に立ち上がる。


 熱血と根性と気合という、聖女とはほど遠い想いを込めて立ち上がる。


 その度にクラーラは思う。



 これが本当に聖女の修行なのか……っと



 クラーラはそんな事を考えつつ……

 立ち上がったアーデルに追従する事なく力尽きた。















 ……………………


 “クラちゃんは生まれた際にシステムのエラーで常人の聖女の約10倍の力。いわゆる“聖力”を誤って大量に注がれてしまったんすよ。

 幸いシステム管理者がエラーに気付いてすぐに対処してくれたんで一命は取り留めたんすが、過剰な力を注がれた影響で魂に亀裂が入っちゃってるんすよね。なんで通常の治療では回復が望めないんすが……どうするっすか?”


 幼い頃、初めて目の前に現れた死神アンコからの提案。

 これは死神達の間でもクラーラを即座にお迎えさせるか少ない寿命を全うさせるか、意見が真っ二つに分かれて結論が全くでないので、もう当人に選んでもらう事にしたから……であった。

 一応死神間ではどんな話し合いを続けてたかも教えてはもらえたが、それらはクラーラにとって関係ないから割愛。

 ようするに、死神達はもうめんどくさくなったから当事者となるクラーラに全部丸投げしたということだ。



 クラーラが選んだのは『生』であった。


 理由は、義姉であるアーデルを始めとする義理の家族達は誰一人クラーラの『死』を望んでなかったから。

 それに加え、傷ついた魂の修復が副作用もなく可能とされる魔女がクラーラの治療を引き受けてもらえたというのも大きい。

 だからこそ、クラーラは手術の執行日まで生きながらえるため、自身を蝕んでいる聖女の力の制御法をアンコから教わった。

 アンコは死の専門家である死神なだけあって、その逆。生に関する知識も豊富。例え魂が損傷した状態であっても生きながらえる術を把握していた。


“まぁこれらの知識は丁度クラちゃんと同じように魂を損傷した人間の治療に1から関わっていたからこそ得られたものなんすけどね”



 そんな感じでペラペラと昔話を語るアンコ。

 アンコはとにかく話好きだ。そのため⑨割ぐらいは雑談なのだが、その雑談はベットの住民であるクラーラにとっては退屈や不安を紛らわせてくれるありがたいものであった。

 それに残り1割の重要な話に関しても、死神が人間に知識を伝授するのは禁止事項っとされてる事もあって肝心の部分はぼかす等配慮もしてくれた。


 それでも秘密はどこから漏れるかわからないもの。クラーラはただでさえトラブルを呼び寄せてしまう義姉にさらなるトラブルを舞い込ませないよう、アンコの存在と彼女から得た知識を誰にも明かす事なく自身の中だけにしまい込んでいた。



 そんなアンコから教わった生きながらえるための手段。

 多数あった中で一番最適だったのはクラーラの中にある聖女の力。『聖力』を制御下に置くことだった。


 制御……と一言で現わしても、クラーラの場合は通常の10倍の聖女の力が宿っていたり、その力を呪いの刻印で無理やり抑えこんでたり、そもそも魂に亀裂が入ってるせいで心身そのものが異常をきたしているという、様々な面でイレギュラーが目立つ聖女だ。

 通常の聖女の修行では一生かけても無理とされていたが、教える者は人間が持ちえない知識を持つ死神。


 当然その修行法は人間の常識外とも言えるものであり……


 結論から言えば、クラーラは聖女の一部の力。

 神や精霊のような超常的な存在と対話する“交信”の力だけをモノにできた。


 呪いの刻印や魂の亀裂の影響もあって、聖女の聖女たる所以とされる“治療”の力は全く使えなかったが、その力はなぜか義母のユリアから医療技術を学んでいたヨーゼフへと流れた。

 聖女には元々次世代へと力を託す“譲歩”の力も備わってるので、他者に聖女の力が移った事自体は別に不思議ではない。


 不思議なのは、なぜ男であるヨーゼフに聖『女』の力が譲歩されたかだ。

 もしやヨーゼフは男ではなく女だったのではっと思ってたら……




 “そんなわけないじゃないっすか。『聖女』の力はその性質上女性に適合者が多いだけで、男でも適合すれば普通に受け継がれるっすよ。それに……クラちゃんの周囲にヨー君以外で適合できそうな女性っているっすか?”


「そ、そういわれると……居ない……かも」


 “そういう事っす。でもまぁこのまま放っておくとちょっとまずい事になりかねないんすが、そこはいろいろな伝手を使ってなんとかしておくんで心配無用っすよ”


 いや、なんか別の意味で心配なんだけど……


 そう思いつつも、アンコが手をまわしたおかげでヨーゼフに宿った聖女の力はただの偶然としてクラーラとの関与を疑われる事もなく片付けられた。


 そんな具合にクラーラの中に宿っている聖女の力の一部。自身では扱えない力は周囲の中で受け取るにもっともふさわしい者へと譲歩されるようになった。


 その相応しい者にはアーデルも含まれてはいたが……

 その力は“交信”や“治療”のようにはっきりわかりやすい形として発現しなかった。


 いや、他者だとわかりやすい形で発現できたのだろうが、アーデルの場合は生来の気質のせいで聖女の力をおかしな方向で発現させていたのだ。

 そのせいでクラーラは長年それを聖女由来の力とは思わなかった。



 だが……まだまだ知識や経験の浅い子供時代ならともかく、様々な知識や経験を積むようになればみえなかった真実がみえてくる。


 現役の聖女が多数在籍するゴッドライフ領国で本物の聖女を見てきた今ならわかる。



 アーデルの中にはおかしな方向ながらも、ヨーゼフと同様に歴代屈指とされている初代聖女と匹敵するだけの力が宿っている事に……






(でも、アンコさんはお義姉ちゃんがおかしな方向性で聖女の力を発露させてたのになんで放置してたんだろ?

 考えられる理由としては、当時はまだそこまで危険性なかったから楽観視してたが有力だけど……案外私と同じで全く気付いてなかっただけだったりして)


 答えは神のみぞ知る……である。

答え:専門外だった事もあって、素で気付かなかった

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― 新着の感想 ―
これも追加します。 つ:「指さし棒」(「星の海」というゲームの3番目に出てくる面白い受付嬢の愛用品です)
次は3人の力を一つに束ねて打ち出す禁じ技ですか♪ この修行はどっちかというと御婆ちゃんの方法では。アニメだとそこんところがあったんだけど、崖の途中に摑まっている主人公に鉄拳を乱れ打ちして上に帰ってい…
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