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185.それをある業界では『ツンデレ』と呼ぶのですよ

古事記にもそう書いてある(キリッ)

「私は別に煽ったわけではないがな、チャカボ殿……後、そのしゃべりは聞き取りずらいから止めてくれないか?」


「精神世界やボスの領域ではなく現実での通常言語は疲れるのですが、まぁいいでしょう。私と貴女の仲ですからね」


「ふん。私としては残虐非道として名高い悪魔と仲良くしたくはないんだがな。だが、私達の事情を考慮してある程度譲歩してくれる事もあって、仕事仲間としてならやぶさかでもないっと思ってる」


「ほっほっほ。知ってますか?それをある業界では『ツンデレ』と呼ぶのですよ」


「御託はいい。それより……あのクズとの契約はなったのか?」


「もちろんですとも。これで一か月後にあのクズは再度魔王となって世界を手にする力を得るでしょう。ただし、得る事は出来ても自由に力を振るえる環境まで与える気はありませんけどね。くっくっく」


「お前に限った話ではないが、相変わらずの詐欺具合だな。しかも嘘ついてるわけではないっというのが悪質すぎだぞ」


「悪質は悪魔にとって誉め言葉ですよ。それに、ボスからも天使の皆様方には誠意をもって接しろと厳命されてるので貴女方には決して詐欺は働きませんのでご心配なく」


「心配はしてない。少なくともお前とお前の主でもあるクレア様は我が主、慈愛の女神カプリス様の妹君、ビーナス様の恩人だ。それに私個人でもお前の事は信頼できると思ってる。もっとも、信用は一切しないが」


「その通り、悪魔を無条件で信用なんて愚の骨頂。よって、その評価はありがたく頂戴いたしますが、慈愛の女神様の妹さんは今『ビーナス』ではなく『ビスナ』と名乗ってます。そこは間違えないよう」


「わかってる!!だが、あの方はあのクズ達の前世でのやらかした罪を肩代わりしてまで慈悲をみせたお方だ!!本来なら天界から追放されるようなお方ではないからこそ、私はあえて堕天する前の名前を呼ばせてもらう!!」


「あーなるほど、そういうことですか」


 チャカボがちらりと周囲を探ると、まだ配下になって日の浅い新人がざわざわとざわついてる。

 新人は自分達の主であるチャカボと同格の幹部悪魔の一人、ビスナは堕天使だという事は知ってても堕ちた経緯までは知らない。

 そこで上位天使であるバニラから出自や生い立ちが知らされたら気になるのは当たり前。そこでさらにバニラ配下の天使達がビスナが堕ちてなお善行を積み重ねる理由を説けば……


「くくく、今ここでビスナさんの話題を出したのはこのためですか。いいですね、実にぬけめない」


「ぬけめないっは悪魔にとって誉め言葉だったな。なら、遠慮なく受け取らせてもらおう」


「ふふふ。貴女もずいぶん柔軟になりましたね。確か初めて来た当時は」


「やめろ!!あれは黒歴史だ!!忘れてくれ!!!」


「そんな事言われて黙ると思ってるのですか?黙ってほしいのなら……」


「わかってる!!先日の戦争での捕虜虐待の一件の時と同様、今回も便宜計ってやる!!計ってやるから語らないでくれ!!!」


「いいでしょう。交渉成立……ですね」


 こうして、口先だけで自分に有利な条約を結ばせたチャカボ。

 その有様は『まさに悪魔』といえるであろう。


 とはいえ……


 チャカボは世間一般から『女子供をいたぶるのが大好きという残虐非道な悪魔』という評価はされていても、その趣味指向を誰彼構わず発揮はしない。


 例え相手が天使という、悪魔にとっては不倶戴天の敵であっても今は共に任務を果たす協力者。

 そんな相手に一方が得するような条約を結めば今後の付き合いに支障が出てしまう。


 だから、チャカボもバニラの企み。ビスナの自分の口からは決して語ろうとしない秘められた想いを広める件に関しては咎めないし、ビスナに会わせろと言われたらその場を提供するつもりだ。

 ビスナも人間でいう反抗期真っ盛りな気難しい時期だが、チャカボには天界では到底学べない様々な悪知恵を教えてくれた恩義がある。その恩義を持ち出せば自身の隠してる本音を広められてる事を放置してる件を積極的に咎めないし、気が進まない提案にも乗ってくれる。


 それに……


(私が便宜を図るのはここまで。天界へと戻すための説得に協力する気全くありませんけどね)


 そんな感じでビスナから天界へと戻る事を拒否されてへこむバニラの姿を想像しつつも、悪魔と天使という呉越同舟も同然な陣営で作戦を進めていくのであった。








 そして、翌日……






「デルフリさん。悪魔の戯言なんかに耳を傾けてはなりません!早く目を覚まして現実を受け入れるのです!!!」


「その言葉、そっくりお返ししましょう。デルフリさん、天使の戯言に耳を傾けてはなりません。私の言う通りにすれば、あなたには世界を手にする力が手に入るのですからね」


 完全に裏で繋がった予定調和のごとき、『天使と悪魔の葛藤』が始まるのである。

天使と悪魔は最初からグルだった。


これもなーろっぱでは稀によくある……かも?

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― 新着の感想 ―
な?!まさか、神に尻拭いをさせていたなんて! 確かにトンデモナイ大罪です!前世だから覚えてないは通用しませんね。しかもこのクズだからたとえ思い出しても何とも思わないどころか当然の事と言い放つでしょうね…
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