184.苦しみ抜いて死ねなんて言う奴のどこが天使だ!!まるっきり悪魔じゃないか!!!(SIDE:クズ)
残念ながら、慈悲の女神様は『死が慈悲である』がモットーな神様なのであるww
なぜこんな奴を慈愛の女神に据えたんだという突っ込みの回答は後ほど明らかになる……かも?
「な……なぜですか!!なぜ天使である私でなく悪魔の手を」
天使は驚いていた。何の疑問も持たずに自分こそが正義であり、無条件で手を取ってくれると思っていただけにはたかれた事を驚いたようだ。
確かに、クズも天使は敬う存在だということぐらいわかっている。
だが、それは相手が本物だったならば……だ!!
「黙れ!!天使であるなら俺を助けるべきだろうが!!それをなんだ?!!苦しみ抜いて死ねなんて言う奴のどこが天使だ!!まるっきり悪魔じゃないか!!!」
「罪人には罰が与えられて当然ではないですか!!罰を受けて反省し、被害者に心より謝罪すれば罪が消えて死後の安泰が約束される。それこそが神の教えであって……」
「ほぅほぅ……ならば見当違いだな。俺は罪人ではない、むしろ被害者。なら罰を与えるべきはアーデル達とオニオンとかいう悪魔ではないか?」
「どちらにせよ、このお方は私の手を取った。これが全てです。もはやこれ以上の議論は時間の無駄なのでさっさと消えてください」
「くっ……わかった。ここは一旦引き下がろう。だが、私は諦めない!!何度でも説得に来るからな!!!」
化けの皮を剝がされたことで悔しそうに捨て台詞を残しながら精神世界から出ていく天使バニラ。
そんな無様な有様にクズは気分よく笑った。
「はっはっはっは。一昨日きやがれだ!」
邪魔者を追い出してほくほく顔となるクズであるも、対照的にチャカボははぁっと溜息をついていた。
「どうしたんだ?そんな陰気な顔をして」
「陰気にもなりますよ。あの様子では本当に何度でも来るでしょうから、その度に相手をするとなると相当面倒です」
「あんな偽物、殺してしまえばいいのではないのか?」
「残念ですが、あの方は本物です。殺すにしても雑多な下位天使ならばどうとでもなりますが、神の直属ともいえる上位天使を殺せば神への反逆者と捉えられません。力を手にする前に神の軍団を差し向けられれば、面倒どころか脅威になります。
なのでここは穏便に追い返しつつ、早急に力を得る方向で進めましょう」
「そうか……お前が言うなら仕方ないな」
「おや?ずいぶん素直に言う事を聞くのですね」
「お前はオニオンと違って信用できそうだからな。信用できる相手なら俺も素直になるさ」
「それはそれはよい心構えなことですよ」
「世事はいいから教えろ。俺は何をすればいい?」
「ではお教えしましょう。まずは……肉体を痛めつける事です。丁度都合よく今貴方様は拷問を受けているので煽って煽って煽りまくって痛めつけられましょう」
「おい。それは本気で言ってるのか?!」
「もちろんですよ。ですがご心配なく……肉体を痛めつける必要はあっても苦痛を感じる必要性はありません。なので拷問中は私の配下に肉体を憑依させて煽りと苦痛を一手に引き受けますから、その間デルフリ様は……」
唐突にパチンっと指を鳴らしたチャカボの合図に従い、どこからともなくやってくる褐色肌の……どこかで見た事あるような顔をした踊り子風の衣装を着た美女悪魔の二人組を先頭にした、衣装や体格が多種多様ながらも全員が男心をくすぐるような性的要素を兼ね備えたほぼ人間の姿をした悪魔娘達。
彼女達の手には酒やら山盛りの料理がある。
「高みの見物をしながら、我がもてなしを受けてくださいまし」
「そういうことですわ。デルフリ様」
「これから私達がご奉仕致します」
「「「「「「ご奉仕いたします!!」」」」」」
「はっはっはっはっはっは!!よくわかってるではないか」
「お褒め下さって光栄でございます。よろしければこの契約書のサインをお願いします。さすれば、一か月後に貴方は世界を手にする力を得るでしょう」
「いいだろう。ほら、これでいいか?」
「ありがとうございます。では、私は力を与える準備のため一時帰還します。お前たち、デルフリ様をお任せしますよ」
「かしこまいりました。ささデルフリ様。かけつけに一杯どうぞ」
「うむ。良きに計らうがいい」
こうしてクズは精神世界で上機嫌に酒池肉林とも言うべき宴会を楽しみ始めた。
その一方、現実側では……
「クックック……イイアオリデシタヨ、ばにらサン」
完全な悪魔の姿をしたチャカボが契約書を片手に愉悦で口を歪めながら、先ほど追い出された天使バニラと親しげに語りかけていた。
邪悪な笑みだけど、それほど不快感ないのは多分気のせいではないはず(笑)




