183.それで、悪魔が俺に何の用だ?(SIDE:クズ)
悪魔がやることなんて、一つしかないでしょうに……にやにや
少し時間が遡って、昨日の拷問が終わってからしばらくした後。
クズは気が付けば、白い空間に立って居た。
「ここは……?」
「貴方様の精神世界ですよ。デルフリ様」
「誰だ!?」
「申し遅れました。ワタクシは悪魔のチャカボと申します。世間からは『悪魔紳士』とも呼ばれてますので、以後申し開きお願いします」
一礼しながら自己紹介を行う悪魔のチャカボ。
その姿は執事の装いをした人間であり、到底悪魔にはみえない。
「ふむ……デハコレデハドウデショウカ?」
クズの疑問に答えるかの如く、異形の姿へと変えるチャカボ。
その姿はまさに悪魔そのものだった。
通常であればここは臆するところであるも、クズにはオニオンという前例があったので臆するどころか強気に出た。
「それで、悪魔が俺に何の用だ?」
「用というのは、困った同僚であるオニオンの尻ぬぐい……といえばわかりますかね?」
「ほう……それは、つまり」
「貴方様に再度魔王としての力を授けにきたのですよ。世界を手にする最強の力を……」
異形の姿から人間の執事の姿に戻ったチャカボはにやりと笑う。
その笑みに釣られてクズもにやりと笑う。
「なら今すぐよこせ!!その力を使でもって俺は今度こそ最強の魔王になる!!!」
「申し訳ございません。今すぐというわけにはいかないのです」
「なんだと!!貴様、俺を騙す気か!!!?」
「落ち着いてください。今の段階で力を手にしても本領は発揮できません。まずは力を受け入れる器を作る必要があるのですよ」
「器……だと?」
「えぇ。今すぐ力を手にしても使いこなせなければ先日の二の舞になるでしょう。まぁオニオンは返り討ちにされるとわかった上で渡したようですが、私はそのような無責任な事を致しません。少々の時間と手間こそ必要となりますが、私の言う通りにすれば……」
「そこまでだ!!」
会話を文字通りぶった切る声にクズはとっさに『誰だ!』と叫びながら振り返るとそこにいたのは……
姿は女性用の鎧兜を身に着けた人間であるも、頭上に煌々と輝く輪と背中から生える純白の羽が人間ではない事を示していた。
その正体を探ってる内にチャカボがやれやれっと呆れ顔をしながら声をかける。
「『人』が説明してるところを邪魔するのはいけませんと教えられてないのでしょうか?」
「お前は『人』ではなく『悪魔』だろうが!!よって、問題はない!!!」
「ほっほっほ。これは一本取られましたな……して何の御用でしょうか?慈愛の女神カプリスに仕えている上位天使のバニラさん」
「痴れた事!!悪魔紳士チャカボ、貴様の企みを止めに来たまでだ!!!」
そうビシッと手に持つ剣を突き付けてくる、バニラと呼ばれた天使。
そんな天使に対抗するためか、チャカボも人間形態を保ったまま悪魔の羽と角としっぽを出す。
「企みを止める……とは何の事でしょうか?私は悪魔として営業……いえ、どちらかというと小生意気な同僚の尻ぬぐいに来ただけですよ」
「どちらでもいい!!デルフリさん、こんな奴の声に傾けてはいけません!!聞けば最後、もう二度と人として戻れなくなります」
「おやおや、人として戻れなくてもいいではないですか。人のままであるなら、この先苦痛に満ちた拷問の末に処刑される運命しかありません。それでいいのでしょうか?
私の手を取るなら、苦痛を取り除くだけでなく再度力を授けてあげます……さぁ、私の手を取るのです」
「取ってはいけません!!今与えられてる苦痛はデルフリさんのためなのです!!この苦痛の果てに与えられる死の先にこそ救済があります。だから、私の手を取ってください」
「黙れ!!!貴様の指図なぞ受けん!!!」
二人が勝手に言い争いを始めたので呆気に取られていたクズであるも、双方の言い分からどちらが敵なのかぐらいはわかった。
よって、クズは迷わず天使の手を……
バシン!!
力強く払いのけ、代わりに悪魔であるチャカボの手を取った。
ボクと契約して魔王になってよ!!
そんな奴の契約に乗ったせいで酷い目に合わされたのに、また同じ轍を踏むクズ。
だが、(物語的にいえば)それがいいw




