180.くそ……なぜだ……なぜ負けたんだ!!(SIDE:クズ) ※ クズ6度目のざまぁ回(その1)
ぼうやだからさ by赤い彗星
「くそ……なぜだ……なぜ負けたんだ!!」
自分が負けた事に納得いかないクズはいら立っていた。
外の様子を確認できる窓以外は何一つない、真っ白な空間でダンダンと地面を足蹴にしながら憤っていた。
“オーオースキカッテヤリナサル”
そんなクズとは裏腹に悪魔のオニオンは笑っていた。
現実世界で自分の配下が操っていた化け物達が黄金の猛牛に次々と吹っ飛ばされる無様な様をみて、不甲斐ないと憤るどころかゲラゲラ笑っているのだ。
ふざけているとしか思えないその態度に、クズは胸倉を掴みかかるような勢いで問い詰めにかかった。
「貴様!!話が違うじゃないか!!魔王の力があれば世界を手にできるんじゃなかったのか!!?」
“ハテ?ソンナコトイッタオボエナイガ、マァマオウノチカラヲツカイコナセレバデキタカモナ。
ダガ、オマエハブザマニマケタ。アレホドマデノマケップリハハジメテミタゼ。キットレキシデハシジョウサイジャクノオロカナマオウトシテナヲノコスダロウナ。ケケケケケ……”
「黙れ!!負けたのはお前がもっと力を寄越さなかったからだろうが!!負けたのはお前のせいだ!!!」
“ソウカ。オレノセイカ……ベツニイイダロウ。ドノミチ、オレハモウオマエニチカラヲカスキハナイシナ”
「なんだと!!?こんな事態になったのは」
“ソレコソオマエノセイダ。オレハアクマデチカラヲカシタダケ。ソノサキノデキゴトハオマエガヤッタコト。ジブンノヤラカシタコトハジブンデセキニントレ!!!”
「黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!お前が!!お前が責任取れ!!!」
“ワカッタワカッタ。ツイサッキ“ボス”カラベツノシレイヲウケタ。ソノツイデトシテオレガコノサワギノクロマクトシテナノリデテオク。スベテハオレノクワダテトデモイッテオケ……モットモ……”
ソレデスベテガマルクオサマルワケナイダロウガナ
途中で白い空間が歪み、クズの意識も遠のいた事で最後の台詞は夢心地で聞くことになった。
だからなのか、クズはその意味がわからなかった。
この騒ぎは悪魔のせい。
全てあの悪魔、オニオンの責任。
自分に責任はない。
それが全てなはずなのに……
現実は甘くなかった。
翌日、日が差さない地下牢で目覚めたクズに待っていたのは……
「貴様のせいで……貴様のせいでお嬢様がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「死ね死ね!!このまま死んじゃえ!!!」
「二人とも、これは一応拷問。殺しちゃだめ。冷静に、殺すギリギリを見極める必要が……」
(あくまでクズ視点からみての)理不尽な拷問だった。
「さぁ吐け!!お嬢様……アーデル様とクラーラ様を連れ去った悪魔はどこに消えた!!知らんとは言わさんぞ!!!」
「し、知らない……俺は知らない……知らな……(バシン!!)ギャー!!」
「知らんとは言わさんと伝えたよな……」
「本当だ……俺は何も知らされてない……(バシン!!)ギョェー!!」
これは事実だ。
クズは悪魔……オニオンの具体的な行き先を聞いてない。
知らないから何も答えられない。
それが全てであるも、目の前の女……アーデルの腰ぎんちゃくのごとく付いてまわってたメイドはそんな答えを許さんっとばかりに鞭を振るう。
なら答えなければ、黙秘を認めんっとばかりに鞭が振るわれる。
嘘を付いて逃れようとしても、徹底的に詳細を求められるせいで矛盾点がでてしまい……
まぁ、つまり……
どうあがいても鞭からは逃れられないのだ。
これを理不尽と言わずして何というかだろう。
(なぜだ……なぜ俺がこんな目に……)
鞭を受けながらもクズは憤る。
少し前ならこの拷問に完全屈してるとこであるも、負けたとはいえ魔王のごとき“闇”の力を得て大暴れしたのだ。
今はその力を消失してても、心身には“闇”の洗礼ともいうべき残留思念が残っているせいか、理不尽な拷問を前にしても心は折れるどころか逆に反骨精神が湧き出ていた。
ただし、反骨精神こそ湧き出ても肢体を拘束する鎖付きの鉄枷を引きちぎるほどの剛力は全く湧き出てこないのだが……
(あの時の力があればこんな奴等、蹴散らせるというのに……オニオンとかいう悪魔は何やってるんだ!!早く力をよこせ!!!)
そのオニオンからは別れ際に『もう力を貸す気はない』っときっぱりはっきり言われたのだが、あいにくクズはそれを覚えてなかった。
都合の悪い事は忘れる!!
それこそが、クズのクズたりえる所以である!!




