176.こう言ってはなんですけど、私ほど聖女にほど遠い人間は居ないかと(SIDE:アーデル)
それでも『性女』呼ばわりされるようなビッチ系聖女よりかは遥かにマシかと
加えて、一昔前には殴りプリという暴力系聖女が市民権得る程度に存在してた実績もあったりなかったりw
「さてっと、そんなわけでクズは最高の舞台で魔王となってもらうためにわざわざ復帰させたのだけど、これらはね。ぶっちゃけると慈愛の女神カプリス様からの依頼なの」
「女神様の依頼……ですか?」
神からの依頼なんて、本来なら信じられない言葉だろう。
だが目の前の人?は無数の悪魔を従えてるどころか、完全に人知を超えた薬を処方したり、クラーラが患っていた不治の病すらも治せたお方なのだ。神からの依頼も請け負えるだけの説得力はある。
クラーラも同様、端から嘘と決めつけずに真実と判断したようだ。
口を挟むことなく黙って聞いていた。
「アーデルちゃんは現場に居たからわかるけど、クズは審判の神様から裁き受けたでしょ。それにも関わらずに反省しないどころか、私と個人的に交友がある慈愛の女神様から『聖女』認定を受けてるアーデルちゃんに神罰を与えるとかのたわったもの。
その事を慈愛の女神様にチクってやったらあのお方、なんて言ったと思う?『報酬は言い値で払う!!あのクズを生き地獄へと堕とせ!!』ってね。いや~慈愛の女神様とは思えないほどの冷え冷えとした声色と黒い内容に私ドン引きしちゃったわ~」
「どの口がそう言ってやがる。お互い悪い顔しながらどんな生き地獄へ堕とすかノリノリで話し合ってたという目撃証言があちらこちらからあがってるぞ」
「いいじゃない。あのクズはそれだけの事したのだもの。ねーアーデルちゃん」
「私に振られても……っというより、聖女ってどういう事でしょうか?こう言ってはなんですけど、私ほど聖女にほど遠い人間は居ないかと」
「アーデルちゃんは聖女よ。だって貴女はクラーラちゃんのために我が身を顧みず看病してたもの。あの人はそんな心意気に感激して聖女認定したし、貴女も子供の頃から割と無意識で聖女の力を振るってたのよ。
ただ無意識なのと環境がちょっと特殊過ぎて、おかしな方向で発露していたのだけど……いや本当。クズを吹っ飛ばしたアレ、聖女の力を何に使ってるのかってちょっと引いたわ」
「そ、そうです……よね。大体クラーラの看病も義姉として当然の義務だったわけだし、だから私は……」
聖女の器なんかじゃない。
そうはっきり言おうとするも、クレアお姉さんはその声を遮らせるようにパンパンっと手を叩く。
「はいはい、そんな自分を卑下するような事は言わない言わない。態々二人を呼んだ理由教えてあげるわ。それは……修行を付けさせようと思ったのよ」
「修行?」
「そう、修行。だって今のままじゃ聖女の力のなんたるかを全く理解してないもの。特にクズを倒したあの大技なんて、下手すれば命と引き換えに放ちかねない自爆技じゃない。
今回は大事に至らなかったけど、このままだと近い将来死ぬわよ。貴女が死んだ後の王国がどうなるかわかる?」
「どうって……後はロッテンが継ぐとかじゃ駄目なんですか?」
「駄目駄目。今の世界情勢は切っ掛け一つで世界大戦が起きかねないぐらいすっごい不安定なの。
そんな情勢だから交易路の要となってるフランクフルト王国は世界各国が狙いを定めてるぐらいに価値が跳ね上がってるから、大戦が起きる切っ掛けはまず間違いなくフランクフルト王国を巡ってになるわ。
だからこそ、フランクフルト王国には各国からの干渉を難なくはねのけて中立の独立国を宣言できるだけの国力が必須。
私がわざわざあんな茶番。アーデルちゃんに聖女として大々的にアピールさせたのは各国に独立国として認めさせるためだったのよ。
といっても、これはあくまで大戦を望まない方々の希望であって、私は別に大戦起きてもいいんじゃないのって思ってるのだけど……くすくす」
「あの。もし大戦が起きたら……どうなるんでしょうか?」
「さぁて。そこは私もわからないわ。でもまぁ、王国がタダで済まないのは確実ね。人間同士が争うから魔物の間引きなんかは滞るでしょうし、そうなれば各地でスタンピードが起きるわね。
それに、私の手でまたスタンピード起こすってのもアリかもしれないわ。丁度3年前の王国の国境の開拓村を壊滅まで追い込ませた地獄絵図を再度……」
グサー
「何怒ってるのかしら?私は悪魔を使役する悪い魔女。悲劇の一つや二つ生み出してもおかしくないでしょう。くすくす」
クレアお姉さんは手のひらに突き刺さったフォークを思むろに引き抜いた。
その際に血が吹き出るも、痛がる様を見せずに笑顔で血を舐めとりながらタルトを食べる際に使っていたフォークを投げつけた張本人。以前国境の開拓村で村人の大半が犠牲となった惨劇の現場への救援と弔いの経験があるクラーラに問いかけた。
「だからって割り切れるほど私は大人しくないの。納得できる説明がほしいな~クレア様」
クラーラは顔こそ笑ってても、声色からして相当に切れかけてるのがわかる。
これは確実に一騒動が起きるっと判断したアーデルはすっと腰をあげての臨戦態勢を取った。
何かあれば即座に殴りかかる。その一瞬即発ともいえる空気の中、クレアお姉さんの返答は……
「むしゃくしゃしてやった。村ならなんでもよかった。今では反省してるかもしれないわ。これでどう?」
魔女のお姉さんは挑発をした( ゜∀゜)o彡゜
こうかはばつ牛ンだ!
お義姉ちゃんの怒りは有頂天になった(#^ω^)ビキビキ




