170.これ、どうみても3流脚本家が寝ぼけ眼で書いたクズシナリオじゃないの(SIDE:ロッテン)
第三章開幕。
まずは、残された者達(主に親友)の苦悩をご覧くださいw
どうしてこうなった……
怒涛の調停式から一週間が経ち、本来の主の代理として執務室の椅子に座るロッテンは頭を抱えていた。
自分の戦場であった公爵軍と王国軍との戦争を勝利し、現地での(悲惨な地獄絵図となった)戦後処理(という名前の隠蔽)も終えて王都に帰還すれば、待ってたのは予想だにしない厄介事だ。
一応、調停式は平穏無事で終わるわけがないっと予測していた。
クズがなんらかの騒ぎを起こす事前提で送り出したのだから、平穏無事で終わる方が耳を疑うレベルだった。
ただ、それでも……
「クズを徹底的に追いつめたら闇堕ちして魔王化。それを聖女として覚醒したアーデルが撃退するも、クズを魔王化させた黒幕にクラーラ共々魂を抜き取られて連れ去られた……これ、どうみても3流脚本家が寝ぼけ眼で書いたクズシナリオじゃないの」
「残念ながら、それは全て現実で起きた出来事なのです」
ロッテンの嘆きに対し、冷静というより冷徹に突っ込むマイヤー。
その物言いにロッテンはむっとなるも、マイヤーの言葉は事実を述べただけ。
なにせ、調停式を行った広場に生々しく刻まれた戦闘痕や山積みとなった多種多様な化け物の死体。さらに1週間経っても目覚める気配がなく、死んだように眠り続けるアーデルとクラーラ。
その他、細かい状況証拠を合わせたら認めたくないけど認めざるを得ない現実がのしかかってくる。
そう……認めたくない現実だ。
「はぁぁ……アーデルが女王に即位宣言したその日の内に意識不明って想定外すぎるわ。王国の統治に支障でまくりじゃない」
「幸い、主な貴族と国民は動揺こそあれど反乱を企む者は表向き居ません。この辺りはアーデル様の統治に意義を申し立てそうな反乱分子を事前にあらかた排除してたのが好を成した結果でしょう。
いつのまにか居なくなってた最後の取り巻きであるアインとツヴァイは某国から派遣されてた工作員にそそのかされて起死回生を狙ってたようですが、裁きの雷を食らってご臨終となりました。
ちなみに某国に関してはブリギッテ王妃様御一考に対処してもらいます。あの方々は元々革命に伴う混乱に乗じてちょっかいかけられないように王国の外から睨みを利かせるのが役目でしたので、某国には見せしめも兼ねてカチコミでも仕掛けてくれるはずでしょう。
なので、しばらくは王国の統治に支障ないはずです」
「報告によると、調停式が行われた日の深夜に例のウェディングドレスを盗もうとした連中目掛けて雷が落ちたのよね。しかも保管していた教会の聖堂や黒幕とされてる工作員が潜んでいた隠れ家が半壊するほどの強烈な電が……」
「雷が落ちる直前に神官や聖職者達が神らしき者の怒鳴り声を聞いたとの証言があるそうなので、あの雷はウェディングドレスに宿っている精霊、もしくは神による天罰と考えられてるようです。そうでなければ到底説明できない程の現象ですから信じる者も多いでしょう」
「この際、誰が落としたかなんてどうでもいいわ。今はそんな事に調査の手を回す人材の余裕ないんだし、そのまま利用させてもらおうじゃない」
「その考え、教会の者が聞いたら説教3時間コース確定ですよ……」
「教会の連中がいる所でこんな不信な事言わないわよ。それに、向こうも向こうで私程度の不信者を罰する余裕ないだろうし」
「アーデル様とクラーラ嬢の世話に半壊した聖堂の修理。それに合わせて連日神への祈りを捧げる民衆の相手……本当になさそうですが、余裕ないのは私達もっという事もお忘れなく。くいくい」
「わかってるわよ。じゃっ、宰相代理改め女王代理となった私に諸々の報告してもらおうじゃない。まずアーデル達を起こす目途に関して!!」
「全くありません。クズにはドS侍女3姉妹が連日連夜、とにかく拷問して情報を吐かせようとしてますが成果は相変わらずです。得られる情報もいつも通りの『俺はいずれ神になる男だ!!』やら『神から力を得たとき、貴様らの最期だ!!』やら妄想としか思えないものばかり。
ただ……初日はともかく二日目からはどれだけ痛めつけても痛がる素振りがなかったり、傷があるタイミングで回復したりといった不可思議な現象が起きてるので、妄想とは言い切れない不可解な点が多々報告されてます」
「それは黒幕である悪魔王の仕業なのかしら?」
「何者かがクズの背後に居るのは確かなのでしょうが、我々にはそれが悪魔王の仕業なのかという判別が着きません。
それに……悪魔王は去り際にクズを見限るような態度を取ったとの報告があります。確か悪魔王は役立たずを容赦なく処分する性質なのですよね?」
「クールーラオロウ皇国の学園へ留学してた頃に聞いた話ではね」
悪魔王『オニオン』
その名はクールーラオロウ皇国とその周辺国で暗躍する『魔王』を生み出す悪魔として有名だった。
最初に存在が確認されたのは約28年前、ある小国で生まれた『魔王』を『勇者』が討伐した際に拍手と共に現われたそうだ。
その時、瀕死の魔王から助けを求められるも『オニオン』は用済みと言わんばかりに焼き滅ぼし、止めさせるべく斬りかかってきた勇者の剣を……魔王の絶大な魔力に耐えた剣をあっさりへし折ったとされる。
その事実から、『オニオン』は魔王を超える力を保持してるのは確実。『オニオン』がその気なら勇者達はそこで全滅してたはずも、悪魔は勇者たちの勝利を称えてその場を去ったのである。
そして、後日には剣を折った詫びとして伝説の鉱石でもある貴重なオリハルコンを届けに現われたそうだ。
以後、『オニオン」の存在は度々報告された。主に危険思想や破滅思想を持つ者の前に現われては言葉巧みにかどわかして契約を迫り、魔王の力を与える悪魔でありながらも、勇者や聖女には助言を与える。
その助言は魔王討伐の決め手になる事もあれば、内輪揉めを引き起こす罠になる場合もある。
とにかく敵なのか味方なのか立ち位置がはっきりとわからない、ジョーカーのような性質をしていた。
それでも放置するには危険過ぎる存在な事には変わりなく、クールーラオロウ皇国では『オニオン』を魔王を陰から操る黒幕として“悪魔王”の称号と共にその脅威を広く伝えた。
同時に討伐するため、皇帝は神から授かったとされる“勇者召喚”の儀式で異世界から勇者を定期的に呼び寄せるよう命じた。
ボクと契約して魔王になってよ
そんな奴の契約に乗っかった結果が今のクズである(笑)




