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168.力を……力を授けてくれ!!もっとも力にあふれていた若かりしあの頃のような力を!!(SIDE:アル爺)

byなめくじの糞と言われた大魔王

「誰じゃ?!」


 アル爺は顔をあげる。

 腰が痛くて上体を起こすだけでも一苦労だったが、それでも上体を起こして周囲を探る。

 見たところ、誰も居ないが……




 “力が欲しいか……?”


 声だけは、はっきりと聞こえていた。

 常人ならここで慌てるところであるも、アル爺は慌てない。


 姿は現わさなくても声だけは聞こえるっという現象に心覚えがあったから。

 妻であったカズコが持っていた『スマホ』には、遠くの人物と会話できる機能がついてる事を知ってたからだ。


 ただし、その機能はカズコだけしか使えなかった。

 試しにアル爺がスマホを触っても、うんともすんとも言わなかった。


 だが……


 アル爺はもしかしたらっと思い、ベッド傍のチェストから妻の遺品となったスマホを取り出す。


 そこには……

 カズコの死後は沈黙していたスマホに薄っすらとした光が灯り、文字が浮かんでいた。

 浮かび上がる文字は『ニホンゴ』とか呼ばれるカズコの故郷の文字であるが故、アル爺には解読できずとも……


 “力が欲しいか……?”


 先ほどからの問いかけが、スマホから発せられた。


「お主は誰じゃ!?」


 “力が欲しいか……?”


「だから、誰かと聞いておる!!」


 “力が欲しいか……?”


「…………」


 全く会話になってない。

 ただ同じ言葉を繰り返すだけだ。



 一体この声の主は誰なのか……


 もしかしたら悪魔の類かもしれない。


 悪魔は人の欲望に付けこんだ取引を良く行う。

 一時の利のためにとんでもない代償を支払うとされるも……



 “力が欲しいか……?”


「……本当じゃろうな?願えば、力を授けてくれるんじゃな……?」


 アル爺はそれでもすがりたかった。


 例え悪魔と取引しようとも……


 代償として不幸が訪れようとも……


 地獄へと落ちようとも、それで利が……助けられる命があるというのなら……



 “力が欲しいか……?”






「力を……力を授けてくれ!!もっとも力にあふれていた若かりしあの頃のような力を!!」



 “たやすい事だ。その願い、叶えてやろう”


 スマホからの返答と同時に、備え付けのチェストからコトンっと音が響いた。

 顔を向ければ、そこにはさきほどまでなかった瓶。何らかの液体が詰まった瓶が置かれていた。

 手に持って調べると、ラベルには『若返りの薬』と書かれていた。



「なん……じゃと……」


『若返りの薬』はこの世界に存在しない。

 いや、物語等では語られてるので昔は存在したかもしれないが、今は現物すら存在していない。


 普通に考えれば、偽物と思うも……


 経緯が経緯なだけに、本物と信じるだけの何かがある。


 それに……




『若返りの薬』 購入費用:死後に10年間の労働


 飲んだ者はもっとも力にあふれていた若かりしあの頃に戻れます。ただし、この薬は低品質なので寿命や生命力そのものまでは戻りません。それどころか、生命力や寿命はマッハでやばくなるので、飲めば72時間以内の確実な死が約束されます。元々の生命力や寿命次第ではさらに早まります。ご注意ください。


 追伸:お爺ちゃんの場合はもって24時間ぐらい。ギリギリだけど、お爺ちゃんなら大丈夫だよね。なので……健闘を祈る。GOOD LUCK!!





 ラベルに書かれていた詳細が、まさにアル爺が欲していた『力』を示すものだった。

 おまけに追記もアル爺に向けられたものだ。ここまでされたら信じるしかない。



 覚悟を決めたアル爺は蓋を開け……




 中身を飲み干した。














「おお!!」


 変化はすぐに現れた。

 枯れ木のような手足に力がみなぎってゆき、膨れ上がった大胸筋が上着を破りさった。

 皺だらけだった顔も静観な顔へと変わった事で外見はまさに若者になったといえる。


 なら内面はというと……



「はっはっはっは!!これじゃ!!このあふれるパワー感だっ!!!戻ったぞ!!若返ったのじゃぁぁぁぁっ!!!」


 口調こそ老人のままでも、若かりし頃の……全盛期の力を取り戻したのは確かであった。

 だが、うかうかしてられないのは事実。


 追記によれば、この姿は24時間しか持たない。

 樹海へと踏み込んで要救助者を確保し、引き返す事を考えれば本当にギリギリだ。


「だ、誰だ貴様は!?」


 先ほどから騒いでた事もあって、様子を見に来たモヒカンに詳しい説明してる暇なんかないっとばかりにアル爺は飛び出す……事はしない。



「わしじゃ。アル爺じゃ!!詳しい説明は省くが、ワシはこれから樹海へと向かう!!24時間経っても戻ってこなければ、ワシはもうくたばったと思っておれ!!」


 一方通行で最低限の説明だけ行った。

 どうせこれだけでは理解できないだろうが、薬の瓶は残ってるのだ。

 それで察してくれるだろうと思って、アル爺はあっけに取られてるモヒカンを後目に小屋を飛び出して樹海へと向かう。




 なお、部屋に残された空の瓶だが……


 不思議な事に、ラベルが綺麗にはがされていたせいでモヒカン達はなんらかの薬を飲んでああなった程度しかわからなかったらしい。





 そして、樹海へと踏み込んだアル爺は……


 襲い掛かってくる魔物の群れをたやすく蹴散らしながら奥へと突き進み……








「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




「この悲鳴……向こうじゃな!!」


 メイの悲鳴は確かに周囲の魔獣達を呼び寄せてしまったが、同時に近くまで来ていたアル爺にも届いてくれたおかげで手遅れにならずに済んだのであった。



 とはいえ……

 ここは安全地帯など皆無に等しい樹海のど真ん中。


 2人を無事に保護できても、樹海から脱出できなければ元の木阿弥。


 ましてやアル爺は24時間というタイムリミット付きだ。


 すでに相応の時間が過ぎていた事もあり、アル爺は急ぎ樹海からの脱出を計った。

帰るまでが救助活動です

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― 新着の感想 ―
全ての権力者が望む品物の一つですね。あの中国の初代皇帝すら最後に望んだものですし。逸話によると東の果ての島に住む仙人に宝と引き換えに貰えるとか(別名「須弥山」だそうです。屋久島ではないよ♪) 「要救…
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