167.老いたとはいえ、アムル家の血筋をなめるでn……(グキッ!!)あぐぅ!!?こ、腰が……(SIDE:アル爺)
お約束すぎる展開wwwww
アル爺は年老いた。
少し前までは自力で牧場まで出向いて家畜達と戯れる事が出来ても、今はそれすらも難しい程に衰えてしまった。
食欲も激減し、起きている時間よりも寝ている時間の方が増えた。
こうなれば嫌でも自分の寿命が尽きかけているのだとわかる。
それでも……せめて、曾孫であるクラーラより先に死ぬべきではないっと考えていた。
クラーラが生きる事を諦めないのであるならば、曾祖父である自分もまだまだ逝くべき時ではないっという気概でもって寿命を伸ばしてきたのだ。
だが、人間である以上は限界がある。
もはや自分に残された時間は少ないっと悟ってしまった。
なら、後はどうやって死ぬかである……
アムル家の血筋の者はとにかく前のめりに死ぬ者が多い。
息子は争いを好まない気質だった妻に似たのか、アムル家の血筋によく現れる戦闘狂の気質は持ち合わせなかった。だが、貴族としての自覚を強く持ってたようでアルプス村の村長の役目を背負った。
村で伝染病が流行った際も決して逃げる事なく、死ぬ瞬間まで村長としての責務をまっとうした。
孫にあたるハイジは隔世遺伝的に戦闘狂の気質を強く受け継いでしまったが、彼女の最期は戦士としてではなかった。次世代に命を託す母として死んだ。
皆、実にアムル家の血縁者らしい前のめりな死に様であった。
「ならば、ワシも死んでいった息子や孫に恥じない死に様をみせねばな」
そう決意を固めてると、外が騒がしいのに気付いた。
杖を手にし、衰えた足腰を気合でカバーさせながら立ち上がって小屋の外に出る。
外では少し前から牧場の運営を任せている元モヒカン達……
怪我が元でアムル家の私兵を辞めた今はアルプス村に居を移し、争いをあまり好まない妻子と過ごす時間が増えた事でだいぶ大人しくなった元モヒカン達が焦った表情で騒いでいた。
「どうしたんじゃ?」
「アル爺さん、大変なんだ!アムル家のお嬢、アーデルお嬢がアルプス樹海へと向かったかもしれないんだ!!」
「なん……じゃと?一体なぜ」
「わからないからこうやって騒いでるんだ。神妙な顔で突っ走ってきたので何かあったのかと思って呼び留めようとするも、全く止まらず駆け抜けていき……その後侍女のメイ嬢ちゃんが大慌てで後を追いかけてった。
メイ嬢ちゃんも止まることなかったんで、事情はさっぱりわからず今はアムル家に使者を送ったとこだ。ほどなくして事情わかると思うが……」
「走り去った先は樹海へと続く道だ。もし万が一でもあそこに踏み込んでいたなら……」
元モヒカン達が心配するのは無理もない。あそこは魔境と称して良いほどの危険な地だ。
元モヒカン達の現役時は冒険者でのAランク相当の実力を持ってても、樹海の探索は力不足と断言しないといけないほどだ。
怪我が原因で現役から退いたなら、なおさら力不足。
それでも……
「おぬしら……樹海へと向かうつもりか?」
「さすがに俺達でもそこまで無謀ではないぜ。俺達程度では踏み込んだ所であっさり屍にされるだろうからな」
「もしかしたら屍ではなく餌かもしれないが、どの道ロクな結果にならないのは確かさ」
「だから、村の冒険者ギルドで緊急依頼を出してもらってる。冒険者だったら実力こそ劣っててもアルプス樹海へと踏み入って生還した者もいるはずだしな」
「ここは専門家に任せるのが最適ってやつだ」
「かっかっか……そうじゃな……ここは専門家に任せるのが最適じゃな……」
アル爺は笑う。
本来なら笑うところではないが、つい笑ってしまった。
「残りわずかな命の燃やしどころが急遽出来てしまうとは……」
「爺さん……まさか……踏み込むつもりなのか」
「おいおい、いくら年だからってボケるのはまだ早いぞ!!」
「ボケとはなんじゃい!!ワシは本気じゃ!!!老いたとはいえ、アムル家の血筋をなめるでn……」
グキッ!!
「あぐぅ!!?こ、腰が……」
「あーあ、言わんこっちゃない……」
強がろうとした瞬間に腰をやらかしてしまい、情けなく突っ伏していたところをやれやれっとばかりにベットへと運び入れられるアル爺。
「爺さんはもう年なんだ。馬鹿な事考えず、大人しく寝ときな」
「っというより、樹海は危険だから入るなっと昔から散々言ってきたんだ。今度はその台詞、俺達から言わせてもらうぜ」
「ぐぅぅ……痛い所つきおって」
だが、昔モヒカン達に口酸っぱく言ってきたのは確か。
それを今この瞬間に返されても文句は言えない。
物理的に腰が痛むため、大人しく寝るしか選択肢がないも……
それでも……アル爺は諦めなかった。
(くぅぅ……ワシは若い頃から何度も樹海を訪れておったんじゃ……
あそこはワシの庭のようなものじゃというのに……
何人も遭難者を助け出してきたというのに……なぜじゃ……なぜ動いてくれんのじゃ)
どれだけ嘆いても、答えは老いたからっとしか言いようがない。
人の身体というのは、長く生きれば生きる程衰えるもの。
それは自然の摂理。
決して逆らう事が出来ない神が定めた“理”だ。
もし逆らえるとしたら……
“力が欲しいか……?”
それは、“理”を定めた神本人。もしくは神をも恐れぬ輩の御業となるであろう。
“力がほしいか……?”
これも、ある種お約束の展開。
でも、なーろっぱではなぜかあまりみかけない気が……?




