163.ハラヘッタ……(SIDE:害虫貴族) ※ 害虫貴族の末路回(その1)
お義姉ちゃん達が気になるだろうけど、それ以上にざまぁがみたいって人多そうなんで……
閑話的に害虫達のその後をお披露目ですw
私はテキトー伯爵の当主である。
今はしがない伯爵家であっても、国賊と化したゼーゼマン公爵家を討伐した際に功績でもって多額の報奨金と共に侯爵まで成りあがる未来が約束されていた。
そのはずであったが……
……………………
「ちたたぷっ!!チタタプッ!!」
「ア゛ア゛ア゛~~~!!」
どこをどう間違えてしまったのか、現在テキトー伯爵は民衆から鈍器でこれでもかというぐらい打っ叩かれていた。
殴られ続ける痛みで頭が物理的な意味も含めてどうにかなりそうで、同士に助けを求めようとも無駄だった。
「ハイクヲヨメ!!カイシャクシテヤル!!!」
「アイエエエェェ!!」
同士だったダムラン子爵は今まさに腹を掻っ捌かれて内臓を引きずり出されてる最中であり……
「これから毎日貴族を焼こうぜ!?」
「ぬわーーーーーっ!!」
ムノー男爵は串刺しにされてから弱火でじっくりと炙られていた。
他を見渡せば、ナイフで全身の肉を少しずつ削がれたる最中だったり……
頭から下を地面に埋められて首をのこぎりでゆっくり曳かれる最中だったり……
丸太に縛り付けられて拳大の石をぶつけられまくられてる最中だったり……
かつての同士達は皆、民衆達の手によって痛めつけられていた。
「や、やめ……ろ……!!やめて……くれ……」
殴られながら必死に懇願するも、鈍器を振り下ろしてくる民衆達は全く聞き入れない。
ただ狂ったかのように『チタタプ』と唱えながら殴り続けるのみ。
ここまで来たら自分は助からないっと嫌でもわかる。
ならば、せめて早く死んで楽になりたいっと自らの死を願う。
その甲斐あって、徐々に肉体から魂が離れて逝くのを感じるも……
“オット、オキャクサン。オカエリノジカンハマダハヤイゼ”
何者かに頭を掴まれた。
「だ、誰だお前は……?」
“キサマニナノルナマエハナイ!ソレヨリ、コレカラハ『ゼンサイ』ニツヅイテ『サラダ』ヤ『メイン』、サラニ『デザート』マデツク『フルコース』ガマッテルンダ。キッチリサイゴマデカンショクシテイキナ”
「や、やめろ……ワシはもう死にたいんだ。死なせてくれ!!」
“ケッケッケッケ!ダガコトワル!!!サァ、ツギハ『サラダ』ダ!!タップリアジワイナ”
そう言いながら、彼?は今まさに抜け出さんとしていた魂の頭をそのまま力尽くで肉体へと押し戻しにかかった。
こうして再度息を吹き返した伯爵は……
「ちたたぷっ!!チタタプッ!!」
「ア゛ア゛ア゛~~~!!」
再度、肉体を滅多打ちにされる痛みに襲われた。
それから、どれだけ時間が流れたかわからない。
もはや肉体はミンチどころか、ペースト状となり果てても意識と痛覚だけは消えなかった。
ペーストとなりはてた肉体であろうとも、殴られたら痛みを感じる。
口がなくても、なぜか絶叫を上げる事が出来る。
決して死ぬことはなく、永遠に続くかのような責苦を受け続けた。
っと思われたが……
“ケッケッケッケ!コレデ『デザート』ハシュウリョウダ。カンショクオツカレサマダナ”
「………」
死を阻害していた者、悪魔からの完食宣言と同時に、先ほどまで続いていた痛覚が消えた。
それに伴い、ペーストを通り越した液体となった肉体から魂が離れていくのを感じる。
そんな肉体をみた黒いローブを纏った死神らしき少女が『これ、ミンチより酷いってレベルじゃないですよね……?』っと顔をしかめてた気がするも、とにかく今は死を迎えた事を喜ぼう。
そう思い、テケトー伯爵は笑う。
まるで壊れたおもちゃのように、笑いながら死出の旅路を行くのであった。
願わくば、旅路の終着点が苦痛と無縁の世界になりますように……
その願いは……
叶わなかった。
………………………
“ハラヘッタ……”
テキトー伯爵が意識を取り戻した時、最初に浮かんだのは空腹感だった。
とにかく、腹が減っていた。
何か食べれるモノがないかっと周囲を探れば、そこには頭だけが辛うじて人間で他が全て芋虫と化していたダムラン子爵や、汚い汁をまき散らしながら脈打つ心臓と化していたムノー男爵や、口から常にドロドロとした液体を垂れ流す肉塊と化していたクボヨ準男爵が居た。
どいつもこいつもまずそうで食いたいとは思わない。
だが、背に腹は代えられない。
今はこの空腹を満たすのが先決っと思って奴らの捕食を試みるも……
できなかった。
食べようとしても、なぜか身体が動かなかった。
頭でどれだけ動けっと命令しても、身体そのものが動く事を拒否してるかのごとく動かなかった。
まさに、梃子でも動かないっという表現がしっくりくる。
“イカン、クエナイトオモッタラヨケイハラガヘッテキタ……”
本来なら、他に考えるべき事……例えばなぜ自分が腐臭や腐肉を垂れ流す軟体生物になってるのか、ここがどこなのかを考えるべきなんだろうが、今はそれどころではない。
とにかく、腹が減って仕方ないのだ。
腹を満たしたいのに、それが出来ないというのはまさに拷問だろう。
“クイタイ……クイタイ。クイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイクイタイ”
まさに思考は食欲一色。
ただひたすら、食べる事だけを考えてた。
そんな事を考えてると、プツンっという音が響くと同時に薄っすら光輝いた壁の額縁に現れたダボダボの白衣を着た少女。
その背には漆黒の羽根を生やすという、どうみても人間ではない少女が命令してきた。
『諸君。目覚めたばかりで悪いけど、これから初仕事がある。すぐに召喚の間まで来てもらおうか』
勘の良い読者なら予想してただろうけど、クズに召喚された化け物達。
あれ、実は民衆達に処刑された害虫貴族の成れの果てでしたww
よって、予想を見事的中させた読者様にはあえて言おう
(゜∀゜)<君のような勘のいい読者は嫌いじゃないよww




