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162.ツギノキカイガアレバマタアオウデハナイカ。オモッタヨリホネノアルニンゲンタチヨ

諸君らのことは、3歩目を歩く間だけ覚えておこう(マテ)

 アーデル達がクズの元へと歩く姿を見ていた私兵(モヒカン)や冒険者、衛兵達もまだ余力がある者は加勢に向かった。

 彼等はいざという時は自らが盾となる意気込みでもって、あえてアーデル達の前に立ってクズの様子をうかがう。


 クズは頭以外が化け物達の山に埋もれたまま、ピクリとも動かない。

 一見すれば死んでるようにみえるも、“闇”の力は未だに健在。


 手負いの獣が不用意に近づく者へ牙を突き立てる隙を伺ってるかのような気配にアーデル達はごくりと喉を鳴らす。


 冒険者と私兵(モヒカン)と衛兵の代表者が試しにとそれぞれの武器でクズを突く。

 何かあれば即座に動けるよう、皆は気を引き締めるもクズからの反応はない。


 クズを覆っている残り火のような“闇”のオーラは如何にもな雰囲気を漂わせてるのに、何の反応も示さない。

 その様に皆は安堵するっと思った瞬間、クズの上に積み重なっていた化け物達の山がドサドサッ崩れはじめる。


「「「うわっ!!?」」」


 これで無警戒だったら山崩れに巻き込まれて大惨事ながらも、3人は最初から油断なく警戒していた事もあって回避に成功したようだ。


「ヒャ、ヒャッハー……驚かせやがって」


「あぁ。予想とは違うが、危なかったのは確かだ」


「それよりどうしますか?クズがうも……れ……!?」


 皆が化け物の山崩れで完全に埋もれたクズへと注目する中、前に出ていた衛兵が次の指示を仰ごうと後ろを振り返ったその瞬間、衛兵はみた。


 アーデルを右脇から支えていたクラーラが力なく崩れ去る姿を……



「ク、クラーラ!!?」


 クラーラからの支えが無くなった事でトビアスも異変に気付くも、異変はクラーラだけでなかった。

 アーデルも自身を支える事が出来なくなったかのように崩れ落ちかけたのだ。


 幸いアーデルは左脇からトビアスが支えた事で崩れる事はなくとも、いきなりの事態に困惑する。


 そんな中で唯一事態を把握していた……皆が崩れた化け物の山に注目している中、指示を仰ぐために後ろを振り返った事でアーデル達の真後ろに立つ存在。異形の悪魔に気付いた衛兵が即座に槍を突き刺した。



「貴様!!何者だ!!アーデル様とクラーラ嬢に何しようとした!!!」


 “ミテワカラナイノカ?フタリノタマシイヲヌカセテモラッタダケダ”


 頭が槍で刺し貫かれてるにも関わらず、悪魔はなんて事ないかのように笑っている。

 その両手には灯のような炎が握られてる事から、おそらくそれが二人の魂なのだろう。


 周囲は即座に動く。


 衛兵に続くかのごとく各々手に持つ得物を叩きつけるも、悪魔はそれらを嘲笑うかのごとく宙へと舞う事で躱した。


 “シンパイスルナ。フタリハ“ボス”ノモトヘツレテイクダケダ。ベツニコロスキハナイ”


「ボスだと?まさか生贄にするつもりか!!」


 “サァテナ?オレハ“ボス”ノチュウジツナシモベダ。“ボス”ノオコトバハスベテニオイテユウセンスル。ダカラオレハ“ボス”ノコトバニシタガウダケナノダガ…………コノママタチサルノハレイギニハンスルヨナァ”


 ここで悪魔がニヤリと笑う。

 一体何をやらかすのかっと悪魔の一挙手一投足を見逃さないよう警戒を強めるも、悪魔は気にせず話を進める。


「オマエタチハコノオレ。ニンゲンタチカラ“悪魔王”トヨバレテルコノオレ『オニオン』ガツクリダシタ“魔王”ヲタオシタショウシャダ。

 ショウシャニホウシュウヲワタスノハイシャノギム。ヨッテ、ソコデノビテイル『クズ』ハオイテイコウ」


「……デルフリを置いていくとはどういうことだ?連れて行かないのか?」


“オマエラハ“ボス”ノアリカニカガシリタイノダロウ。ナラ、ソイツカラキケバイイ。ウマクイケバ“ボス”ノイバショヲガワカルカモナ。コレガオレカラノホウシュウダ。

 ソレデハ、ツギノキカイガアレバマタアオウデハナイカ。オモッタヨリホネノアルニンゲンタチヨ”


「ま、待て!!」


 トビアスが叫ぶも、『オニオン』と名乗った異形の悪魔はすでに消えていた。

 周囲に漂っていた“闇”の気配は完全に消えており、脅威が去ったのはわかる。


 魔王と化したクズを倒し、黒幕たる悪魔も撃退した事で今度こそ本当に全てが終わった。

 アーデル達の勝利はゆるぎない物となった。



 だが……勝利しても皆の顔は暗かった。


 勝利の立役者であるアーデルとクラーラの魂を最後の最後で拉致されるという失態を犯したせいで……


 皆は到底勝利を祝えるような心持でなかったのである。













 そんな広場に満ちた『絶望』を化け物を影から操っていた『オニオン』配下の小悪魔達がこそこそと回収していた。


 よって、この場の真の勝者はきっちりと働いた分の代価を徴収出来た『オニオン』であろう。






 どこの世界も悪魔というのは天使以上に狡猾で抜け目ないのである。

最後の最後にフラグが回収されてのビターエンド!?

果たして悪魔に連れ去られたお義姉ちゃんと義妹ちゃんの運命は……


緊迫の第三章へ続く……


前に、次回はちょっとした閑話的なお話が入ります

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― 新着の感想 ―
悪魔ですね~。契約のスキを付いて自分に有利にするなんてよくやる手だから。 果たして連れていかれた二人が大人しくしているのかな~?霊界探偵になる前の時でも自由に行動していた方がいるし(笑)
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