161.勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!俺達は勝ったんだぁぁぁぁ!!!!!
一時はどうなる事かと思われた、魔王との決戦は……だといいけどね(ぇ
クズを吹っ飛ばした事でお役目ごめんとなった黄金の猛牛。
そのまま黄金の粒子となって消え去るっと思いきや……
黄金の猛牛は止まらなかった。
クズを吹っ飛ばしても止まることなく、角を回転させながら突き進み続ける黄金の猛牛。
そのまま民衆達の一団めがけて一直線。
民衆達は悲鳴をあげて逃げ惑うも、それより先に黄金の猛牛が到達し……
ドゴン!!!
吹っ飛ばした。
民衆達を透過し、化け物だけをクズ同様に吹っ飛ばし……
グシャー!
クズの上へと降り注ぐかのごとく頭から激突した。
民衆に囲まれていた化け物を吹っ飛ばした黄金の猛牛は次のターゲット。冒険者パーティーと化け物達の乱戦の場へと突っ込み……
ドゴゴゴン!!!
やはり、冒険者を透過して化け物の群れだけをクズ目掛けて吹っ飛ばした。
その後も広場を縦横無尽に駆け回る黄金の猛牛。
「アベシッ!!」「タワバッ!!」「ウワラバッ!!」
広場に点在する化け物達を次々と宙へと吹っ飛ばし、錐揉み回転させながらクズの元へと降らせてゆく。
自分達が狙われてると気付き、慌てて逃げ出す化け物達であるも猛牛はその背を容赦なく追い立てて吹っ飛ばす。
そうして最後の化け物を吹っ飛ばした猛牛はお役目ごめんっとばかりにその身体を黄金の粒子に変えながら空へと還っていった。
その有様はまさしく聖獣であろう。
アーデルの気質のせいで凄まじく物理方面へと偏った物騒な聖獣なのだが、その圧倒的な物理破壊力でクズと化け物達を一網打尽にしたのは確か。
崇めない理由なんてどこにもないため、この場に居た者は皆消えゆく聖獣に感謝の祈りを捧げた。
「勝った……のか……?」
感謝の祈りを捧げてる中、誰かが呟いた。
その声に釣られて皆は我に返ったかのごとく周囲を見渡す。
広場は死闘の跡ともいうべき凄惨な現場となっていた。
無傷な者は一人もおらず、中には突っ伏したままぴくりとも動かない者もいる。
もしかしたら死んでしまったのかもしれない。
だが、それでも…………
「勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!俺達は勝ったんだぁぁぁぁ!!!!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
今は勝った事を……魔王とその配下である化け物達を撃退した事を……
生き残れた事を喜んだ。
そうなれば、民衆達は勝利の立役者となるアーデルに注目する。
黄金の鎧を纏った猛牛を召喚した反動か、立ってるのもやっとな状態なアーデルの元へ駆け寄ろうとするも、アーデルが制した。
「まだよ!!まだ……終わってない!!クズはまだ生きてるわよ!!!」
アーデルからの指摘を受け、一斉にクズへと注目が集まる。
一見すればすでに終わりにみえるも、残り火のような闇のオーラが微かに揺らいでいた。
アーデルの言葉通り、まだ終わってなかったのだ。
アーデルはよろめきながらもクズの元へと向かうために足を一歩前に踏み出す。
本来ならなんてことない動作ながらも、体力のほぼ全てを失った満身創痍での一歩は自身の体重を支えてくれなかったようだ。
バランスを崩して転倒しそうになるも、その身体を横から支えてくれる者が現われた。
「お義姉ちゃん……大丈夫……じゃなさそうっぽいよね」
「ク、クラーラこそ大丈夫じゃないでしょうに」
「私は大丈夫。少なくともお義姉ちゃん含む皆よりかはマシだと思ってるし……そもそもお義姉ちゃん、声聞けないでしょ。そのままクズの元へ向かってどうするつもりだったわけ?」
「一応……トドメ刺すつもりだけど」
「それは止めない。けど……気を付けた方がいい。手負いの獣ほど厄介なのだし、私も一緒についていかせてもらうからね」
「それは……」
「い・い・よ・ね?」
「…………わかったわ。こうなると梃子でも動かないわけだし、一緒に行きましょうか」
実際、アーデルを横から支えてくれそうな者はクラーラぐらいしかいなかった。
進んで支えてくれそうなメイやハイドといった主な面々は全員地面に突っ伏したまま気絶中だ。
他のモブ私兵やモブ冒険者達は正真正銘の英雄で聖女となったアーデルを支えるのは恐れ多いと思ってるのか尻ごみしてる。
この場の適任者はクラーラしか残ってないっと思いきや、一人だけ残っていた。
「その隣に余も加えさせてもらおうか」
「ト、トビアス元国王様まで……」
「いいではなかろう。少なくともクラーラ嬢だけでアーデル嬢は支え切れまい。余と共に支えようではないか」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます……お父様」
「こらこら、余をお父様と言う出ない。お主の父上はロンケン辺境伯。決して余ではない」
「わかりました。トビアス国王様……それでデルフリ様は」
「デルフリ様なんて取り繕う必要なぞない。あのクズはここまでやらかしたのだ。最早裁判を受けさせるなんて悠長な事は言わぬ。危険と判断するならば……」
「わかりました」
そうして話がまとまったアーデル達。
アーデルはクラーラと国王に左右から支えてもらいながらクズの元へと歩み寄った。
うん、なんか嫌なフラグが立ち始めちゃったよ……?




