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153.アーデル様、ご安心ください。貴女様が溺愛する義妹様は私がきっちり守ってみせましょう

安心できるはずなのに、なぜか安心できないのは気のせいだろうか……?

「アーデル様、ご安心ください。貴女様が溺愛する義妹様は私がきっちり守ってみせましょう。くいくい」


 普段はデスクワークや指揮を基本とする荒事とは無得な、変態という名前の紳士なマイヤーだが、常日頃から常人だと拷問と称する責め苦をご褒美と捉えて受けてるだけあってその耐久力は随一。

 ロッテンからの鋼のハリセンによる全力突っ込みどころか、あのアーデルの全身全霊を込めた突っ込みすらも致命傷を負うことなく切り抜ける程なのだ。


 おまけに人の神経を逆なでさせる事に関しては天才的な事もあってか、ヘイトを一手に引き受ける挑発を兼ね備えたタンクとしてみるなら彼ほどの適任者は王国内に存在しない。


 そんなタンク適正SSSランクともいうべき男がクラーラとおまけの前に立ちふさがって『守る』と宣言してくれたのだ。その頼もしさに『絶望』へと染まりかけていたアーデルに『希望』の火がともる。


 その様にクズはむっと不快な感情を出しながら再度攻撃。

 マイヤー目掛けて闇の炎の矢を放つも、マイヤーは先ほどと同じくちょっと焦げる程度でしのぎきった。


「無駄ですよ。この『マッスルディフェンダー』は全ての攻撃を防ぎます」


「ほぅ。全てを防ぐとはずいぶんでかい口を開くではないか」


「それほどでもありません。ですけど貴殿は誰ですか?少なくともクズではありませんね」


「俺をクズ呼ばわりか。マイヤー、どうやらお前にも相応のお仕置きが必要のようだな。なら次はとっておきをくれてやろう」


「光栄ですがご遠慮しましょう。淑女からのお仕置きならば大歓迎ですが、野郎からのお仕置きは趣味でありません。それに……私とのんきにお話する暇あるのですか?」


「なんだ……と……?」


「くくく……何らかの方法で強大な力こそ得ても、頭の中はクズのままのようですね。安心しましたよ」


 クズは最初こそマイヤーの言葉の意味はわからなかった。

 一応馬鹿にしてる事ぐらいはわかるが、真の意図まではわからない。


 だが、自身に向けられた殺気……3方向からの殺気で意図に気付いた。


 クラーラの護衛についてたのは5人。ロンジュとマイヤーだけでない。

 残り3人は動けなかったのでなく、あえて動かなかったのだ。


 ロンジュがクラーラを助け、マイヤーが挑発して注意を引いてくれるという信頼の元に……


「「「アムル家に伝わりし48の殺人技のひとつ……」」」



 残りの3人、ペーターとユキとマイは各々『M・B・S・B(肉爆鋼体)』を発動させた上での殺人技の前準備を行ってたのだ。

 クズはその事に気付くも、一歩遅かったようだ。





「ダブルスクリュードライバー!!!」


 両手の甲から伸ばした『熊の手(ベアークロー)』を頭上に真っすぐ掲げ、空高くから錐揉み回転を加えながらクズを貫かんと突撃するペーター。




「火の鳥‐鳳翼天翔!!!」


 背中から生やした燃え盛る炎の翼を羽ばたかせながら空高くに舞い上がり、両腕に炎を纏わせながらの……不死鳥の翼を象ったかのような両腕を渾身の力でもってクズに振り下ろすユキ。





「⑨極~~~チルドキ~~~ック!!!」


 背中から生やした凍てつく6枚の氷の羽根を羽ばたかせながら空高く舞い上がり、右足に氷を纏わせながらの全身全霊を込めた……当人にとっては込めたつもりの……煌めくツララのごとき切っ先と化した右足でもってクズを突き刺しにかかるマイ。





 それらは48ある殺人技と称されるも元は基本技。

 ただのジャンプパンチとモンゴリアンチョップと飛び蹴りだ。どれも一撃必殺というほどでない。


 だが、3人はその基本技を鍛え上げてなおかつ独自改良を施した事でアーデルの『竜巻攪拌器(ハ〇ケーソ三キサー)』と同様の(当たりさえすれば)一撃必殺技へと昇華させていた。


 まともに食らえば常人どころかSランク冒険者でも命の保障がない、文字通りの必殺技×3。

 これでクズは……いや、クズの皮を被ったナニカは終了であるも……











「甘いわぁ!!!」






 どごん!!!




「あべしっ!?」「たわばっ!?」「うわらば~!?」




 クズは左拳にためていた力、闇の炎の塊を地面にたたきつけた。

 その衝撃で発生した、クズを中心にして巻き起こった闇の炎の奔流(レイジソグストーム)でもって3人を鎧袖一触とばかりに焼き焦がしながら天高く吹っ飛ばし……



 グシャー×3


 無防備のまま顔面から地面へと激突(車田落ち)させた。


 その圧倒的な力に周囲は唖然とするも、クズ打倒に動いてたのは他にも居た。




「審判の神よ……神に仇名す魔の者に“天誅”を!!!」







 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!






 ヨハン大司教補佐である。

 彼は3人がなすすべなくやられようとも、ひるむ事なく聖具である印籠の力を……審判の神の裁きを一切の躊躇なく下した。

 その威力は常人離れした3人であっても人間の域を超えなかった必殺技と違い、神の力だ。


 人間であれば神の力の前に屈するしかない。


 屈しないのであれば……






「ふぅ……驚かしやがって……!!」


 冷や汗を垂らしながらも、大した被害を負わなかったクズがその場に居た。


 それもそのはず。なにせ、印籠から放たれる“天誅”はあくまで人間社会に属する悪を裁くための雷なのだ。

 魔王のような人間社会という枠から外された者には裁きが適用されないのである。


 だが、人間社会に属する者にしか裁きを下さなかったヨハン大司教補佐は裁きの盲点ともいうべき仕様を全く知らなかった。


 そのため、ヨハン大司教補佐は全力で放った“天誅”をほぼ無傷で凌いだクズに驚愕した。


「バ、バケモノ……めっ!?」



 ドゴン!!!



 呆然としてた所に飛んできた闇の炎の矢をまともに食らい、吹き飛ぶヨハン大司教補佐。


「おいおい、魔王たる俺に向かって化け物とは失礼な奴だな」


 いつの間にか再生されていた右腕から闇の炎の矢を放ったクズ。

 ペーター達を3人を吹っ飛ばした闇の炎の奔流はそのままクズの周囲に滞留しており、その佇まいはまさに闇のオーラを纏った魔王であった。

圧倒的ではないか、このクズは……


果たして、お義姉ちゃんと愉快な仲間達はこの化け物相手に勝てるのだろうか……?



ちなみに双子の技の元ネタ

鳳翼天翔 → 名称はいつも燃えてる奴(脇巫女談)のスペカ。モーションは水鳥拳の奥義の『飛翔白麗』

チルドキック → 名称は⑨割が⑨のスペカ。モーションはスーパーロボットの熱い叫びと共に放たれる奥義『究極ゲシュペンストキック』

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― 新着の感想 ―
う~~ん。まさかのまさかですか。ここまでパワーアップするなんて……さすが、改良薬です(つまり、クズの力で無いですね) あのキックは機体で出せる技だから無改造だとダメなんだよな~。教導管が乗ってないと…
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