152.おいおい、実の兄相手にこれは酷いんじゃないのか?
残念ながら、変態紳士の業界ではご褒美です
「死ね!!!」
ドゴン!!!
クラーラはふざけた事を抜かすクズにぷっつんし、『M・B・S・B』を発動させた上で渾身の右ストレートを放った。
当初の約束……クズは勢いと感情任せの私刑ではなく、正式な裁判を経ての公開処刑とするから生かしておけっという厳命なんか知らんっとばかりに放たれた一撃。
それはクズの顔面に『*』マークが刻まれるほどに深々と突き刺さっていた。
本来ならこれは止めさせるべき一撃であるも、周囲はあえて見逃した。
死んだら後で一緒に怒られよう。
それぐらいの覚悟を持って、繰り出されたクラーラの一撃。
通常ならこれでクズは終了だ。
これで生きてられたらもう次元の違う話となる。
だからこそ、これでクズは終わったと思いきや……
「おいおい、実の兄相手にこれは酷いんじゃないのか?」
「えっ?」
クラーラは驚く。
顔面に拳が突き立てられたままであっても、淀みのないその言葉にぞくりと悪寒が走る。
慌てて拳を引っこ抜いて距離を取ろうとするも、その前にクズの右手がクラーラの首を掴んだ。
「あがっ!!?」
「くくく……そんないけない奴にはお仕置きが必要だな」
クラーラの首を締め上げながら持ち上げていくクズ。
その力は尋常ではなかった。少なくともいつものクズなら持ち上げるどころか締め上げる事すら出来ないはず。
ましてや今のクラーラは『M・B・S・B』が発動中。
クラーラの場合は見た目の変化がただ一つ。額に謎の紋様が浮かびあがるのみであっても身体能力そのものは向上してる。
貧弱なクズ程度の腕なんて簡単に握り潰せるはずなのに、なぜか潰れない。
っというより、顔面に『*』が描かれるほど深く拳を突き立てられたのに……右目と左耳は失ったままで血も流れてるのに、それ以外傷一つない方がおかしかった。
クラーラも失神寸前で『M・B・S・B』が保てないのか、額の紋様がうっすらと消える……
その前にクズの右腕が切断された。
ロンジュが神速ともいえる速さで剣改め刀を抜刀。一瞬のきらめきの後に納刀したその時には右腕が斬り飛ばされるという、常人では結果だけしかみえない見切り不能の剣閃でもってクラーラをクズから物理的に切り離したのだ。
「ゲホゲホッ……」
「クラーラ!!」
失神寸前ながらも自由になったクラーラをロンジュは後ろから受け止めて距離を取る。
Sランク冒険者としての勘が告げていたのだ。
今のクズはヤバいっと……
だからこそロンジュは先にクラーラを保護した。
なぜなら、ここでクラーラを守りきれなかったら将来の義姉からどんなSEKKAN食らうかわかったものでないからだ。そりゃぁ保護を優先するだろう。
「ゲホゲホ……ロ、ロンジュ……私より」
「いいから下がれ!!アレの対処は俺以外がやってくれる!!!」
何かモノ言いたそうなクラーラを無視して、ロンジュは無理やり後ろに引き下げる。
「逃がすと思ってるのか?」
クズはそんな二人めがけて手から黒い炎の矢……のようなモノを放った。
ロンジュはクラーラを守るため、クラーラの前に躍り出て先ほどと同じく神速の抜刀術でもって飛来していた矢を全て打ち払らった……その瞬間。
ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
爆発した。
「おろぉぉぉぉぉぉっ!?」
「きゃぁ!!?」
爆風でロンジュはクラーラを巻き込みながら吹っ飛び、双方受け身が取れないまま地面を転がる。
そこへさらなる追撃として先ほど放った闇の炎の矢が何本も飛来。
「クラーラ!!!」
異変に気付いたアーデルが叫ぶ。
このままではクラーラと……ついでにロンジュが殺される。
そう判断するも、ここからでは距離がありすぎる上に人も多すぎる。
悪人ならともかく、ただの一般人達を蹴散らしながら駆けつけるわけにもいかず、アーデル側からは何も出来ず矢は無常にも二人へと到達。
ちょどどどどどどどどどどどぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
すさまじい爆発。
これではロンジュはともかくクラーラは助からない。
その事実に耐えきれないアーデルは『絶望』の感情のまま、目の前が真っ暗に染まった。
っと思いきや……
爆炎の中から現れたのは……
「残念ながら、アムル家に代々伝わりし48の殺人技の一つ。『マッスルディフェンダー』の前ではこんなものただのそよ風ですよ……くすくす」
倒れ伏したままピクリとも動かない二人の前に立つ一人の男。
両腕でしっかりガードを固めて仁王立ちするマイヤーの姿であった。
来た!!メイン盾来た!!
これで勝つる!!(゜∀゜)




