142.王座は王太子である俺のモノで敗戦はアーデル、貴様が取るのだろうが!! ※ クズ5度目のざまぁ回(その5)
人それをジャイアニズムと言う……
いや、ちょっと違うかも?
「デルフリ元王太子様。王座は俺の物ということですが、それは敗戦の責任を取りたくなったという事でしょうか?」
「な、なぜそうなる?王座は王太子である俺のモノで敗戦はアーデル、貴様が取るのだろうが!!」
「聞いてなかったのですか?トビアス元国王陛下は貴方を王家から除外しました。そして、私は元国王陛下から托されたフランクフルト王国の王……女王として、事前に決められた敗者としての義務を全うするつもりです。具体的にいえば、開戦前に提示された賠償金5000億Gの負債を支払うつもりです」
「「ぶふっ!!?」」
賠償金5000億G。
その桁違いな数字にアインとツヴァイは吹き出す。
逆にクズは5000億Gはどれだけの大金かピンと来なかったようだ。
だが、アインとツヴァイは桁が桁なだけにアーデルへと糾弾した。
「な、なんだその額は!!?」
「ふざけてるのか!?その額は国家予算1年分に匹敵する程じゃないか」
「ふざけてるのかって騒ぎたいのはこっちよ!!だってこれ決めたの、あなた方開戦派の連中。より具体的にいえば二人の父君じゃない!!!」
「ち、父上……が?」
(実際は国の財政をしっかり把握してるマイヤーなのでしょうけどね)
アーデルはそうぼそりとつぶやくも、最終的な決定を下したのは開戦派筆頭の二人なのだろうからあながち間違ってないはず。
さらにいえば万が一負けた場合は難癖付けて踏み倒す魂胆だったのだろうが、教会が仲介してる戦争で踏み倒しなんて行えば教会の信頼を一気に失う。
商業ギルドに加えて教会からの信頼が無くなった王国の行く末なんて、言うまでもなかろう。
「とにかく、王国は戦争に負けた以上相手に5000億Gの賠償金を支払わないといけない羽目になったけど、そんな大金は国庫や宝物庫に眠ってる国宝を全部解放してようやく届く量なのよね」
顎で場所を示せば、そこには多数の馬車や荷車が待機していた。
アーデルが合図を送れば荷物番を担当してたユキとマイが心得たとばかりに一つの木箱を解放。
そこから取り出されたのは目立つようデカデカと10億Gという価格札がそれぞれつけられている像。帽子を被った髭親父の兄弟像である。
他の者達もユキとマイに続くかのごとく、木箱から絵画やら宝剣やら壺といった美術品や骨董品を取り出して掲げる。
そのどれもが価値がわかるよう価格札が付けられていた。もちろん鑑定書も付いてるので本物だという証明もされている。
ちなみにこれらの査定やら管理やら運び出しは財務部の仕事であり、小市民間が骨身に沁みついている平民出身者にとっては万が一破損したりなんかすれば……っという想いを抱えながらの作業だったので、生きた心地がしなかったそうだ。
その逆、普段から大金を取り扱ってる者にとってはなんてことない作業。
つまり、昨日リーメの兄であるウールが泣きそうと称した原因はこれだったのである。
そんなウールを筆頭とした小市民達も美術品や骨董品を長時間触り続けた事で感覚が徐々に麻痺していき、現在はハイライトが消えた目でもって自分の年給に匹敵する品を危なげなく掲げている始末である。
こうした価値ある美術品や骨董品が提示されたので民衆はざわめく。
「皆さん、聞いてください!!」
そこを見計らってアーデルは遠くまでよく響き渡る声で王都民に語りかけた。
「王都民……いえ、王国の皆さん!!王国が公爵家に支払う賠償金5000億Gの出所は、皆様が王や貴族を信じて治めた税金です!!賠償金5000億Gなんて大金、ピンとこなかったでしょうが今この場にはその5000憶Gが集められています!!
実物を見た事でこの5000憶Gがどれだけの物か理解できたでしょうか!?」
アーデルの声に王都民達は頷く。
極々一般の男性成人の日収が1万Gという価値観の世界。5000億Gは桁違い過ぎてピンっと来なかったものの、こうして現物をみせられたら理解できるであろう。
算数が苦手な者や芸術に疎いもののために、金貨や宝石の山というわかりやすいものも用意しているのでなおさら理解できただろう。
アーデルはさらに続ける。
「今この広場に集められた5000億Gは、本来ならあなた達国民がより豊かになるべく使われるべきお金だったのです!!ですが、このお金は全てゼーゼマン公爵家とクールーラオロウ帝国へと支払われます!!
なぜなら……元王太子と一部の貴族が何の大義のない私欲に満ちた理由でもってゼーゼマン侯爵領に戦争を仕掛けた挙句に大敗したからです!!元王太子と貴族は自らの失敗の尻ぬぐいを国民にやらようとしたのです!!!」
この内容も前日に御触れで国民に知らしめたものだ。
だが、5000億Gの支払いという文面だけで知らせるのと、実物込みで知らせるのとでは説得力が段違い。
そこへ観客に紛れ込んでいるサクラ達がここぞとばかりに声を張り上げる。
「そうだ!!そこのクズ元王太子のせいで俺達にしわ寄せが来たんだ!!」
「何が正義だ!!栄光だ!!ぶざまに負けやがって!!」
「返せ!!俺達の金を返せ!!!」
まさに絶妙のタイミング。
サクラに釣られて、王都民達のヘイトが一斉にクズへと向け始めた。
人それを茶番という……
うん、これは間違いないはず( *゜∀゜)=3ムッハー




