表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/229

141.この戦争はデルフリ、お前が始めたのであろう。ならば最後まで責任を果たすのが筋ではないのか? ※ クズ5度目のざまぁ回(その4)

意訳すれば、『ハラヲキレ』である。

「はぁ?」


 トビアス王の質問にクズは首をかしげる。

 一体何の事をっと思ってると、トビアス王は溜息混じりに補足を加えた。


「お主が率いた王国軍は公爵軍に負けたのであろう。負けたなら大将としてその責任を取る必要性あるではないか」


「そ、それは……父上が」


「無理である。余はこの戦争に一切関わっておらん。戦争に関わってない者が責任を取る事は教会も認めておらん。そうであろう?ヨハン大司教補佐殿」


「その通りでございます。戦争の責任を戦争に関わりのない者が取れば、責任の押し付け合いがより加熱してしまいます。下手すれば、全く関係ない者をスケープゴートとして差し出されてしまう恐れが出るので、原則として取る事ができぬと定められております」


「そういう事だ。この戦争はデルフリ、お前が始めたのであろう。ならば最後まで責任を果たすのが筋ではないのか?」


「ち、違う……始めたのは俺のせいではない。アーデルの……アーデルの責だ!!」



 この期に及んで何を言ってるのか……


 通常ならそう思うだろう。

 少なくとも、ただ成り行きを見守るしか出来ないアインとツヴァイはクズに付いて来た事を後悔していた。


 あまりにも遅過ぎた判断であり、最早クズと共に敗戦の責を取るしかない。

 そう思っていたが、事態は思わぬ方向へと進む。


「アーデル嬢よ。デルフリはこう言っておるが、どうする?」


「構いません。この度の戦争は元王太子殿下が発端とはいえ、私はフランクフルト王国の王妃代理……いえ、女王としてゼーゼマン公爵家との戦争に終止符を打つ義務があります。そのために責任を取れというなら、敗北の汚名を被る覚悟であります。大司教補佐ヨハン様、部外者でありながらも特例としてお認めください」


「うむ。大司教補佐ヨハンの名の元に、その特例を認めよう!!」


「皆の者!!聞いての通り!!!これから行われる調停式ではアーデル王妃代理改めアーデル女王陛下が王国の代表として臨んでもらう!!

 それに伴い、余は宣言する!!!余は息子であるデルフリを王太子としての権利だけでなく王家の籍からも抜く!!そして、アーデル嬢を新たな王太子として任命と同時に王座をアーデル嬢へと譲る!!異論はあるか!!!!」


「「「「「ありません!!!」」」」」


 トビアス王の宣言に対して、息ピッタリに答える貴族達。

 さらに衛兵や侍女といった使用人達はアーデルに向かって右手で左胸を抑えながら跪くという、行動で忠誠を誓う。


 周囲の民衆は最初こそ戸惑うも、その間にもトビアス達は動く。


「ではアーデル嬢よ。今は略式ながらも王の証を授けよう。受け取ってくれるか?」


「もちろんでございます」


 調停式に来た際には最初から身に着けていた王の証である王冠とマントと王錫。

 だが、今回は貴族や教会関係者や民衆が見守る中で王直々に託すのだ。

 これは一種のパフォーマンス。アーデルが王座に着いたのだと万人に知らしめるための儀式でもある。


「今ここにフランクフルト王国を治める新たな女王が生まれました!!教会は新たな王の誕生を祝福しましょう!!」


 王に続いてフランクフルト王国内での教会のトップ代理であるヨハン大司教補佐も宣言。

 こうしてアーデルの女王就任はほぼ公的に認められたのであった。



 あまりの急展開に民衆は唖然とするも……





「アーデル女王様、バンザーイ!!!」


「アーデル様、おめでとうございまーす!!」


「わーわーぱちぱちぱちぱち!!」


 民衆の中に紛れ込んでいた先導役のサクラや元から交流のあった子供達が大げさな仕草で声援どころか花吹雪を舞い散らせた事で祝いモードが伝染。



「アーデル女王様、バンザーイ!!!」


「アーデル女王様、バンザーイ!!!」


「アーデル女王様、バンザーイ!!!」





 そこら中から即位を祝う声が響き渡った。





 そんな祝福ムードの中、完全に乗り遅れた者も居た。


 クズである。



(な、何が……一体何が起きてるというのだ……?)


 クズにしてみれば、敗戦の責任をアーデルに上手く押し付ける事が出来たのだ

 後はアーデルを処刑すれば丸く収まると思ってたのに……


 なぜか、自分が王太子から外されて代わりにアーデルが王太子……


 いや、アーデルは王太子どころか王座にまで付いてしまった。



 そう……本来なら自分が付くはずであった王座に……だ!!



「まてっ!!皆騙されてるぞ!!!王座は俺のものだ!!!!」


 クズが叫ぶ。

 その叫びは民衆からの声でかき消されてしまうも、アーデルの耳には届いたようだ。


 まぁアーデルとしては、クズがこのまま大人しく引き下がるわけないと思っていたのだ。

 王錫を突きながら「静まれ!!」と号令し、改めてクズへと対峙した。

そして、次回から始まるのは退治である。


その後、クズは精神的ショックで胎児になる……のかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ふ~む。見事な予定調和ですね。これで無事即位できました。 ……と、ここで終わらないのが愚か故にですね。 敗戦の責任という重罪から逃げたら王に成れないのは当たり前なんだから。ていうか、クズの考えでいく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ