13⑨.き、貴様……打ったな!!王太子たる俺を……親父にもぶたれた事ないのに!! ※ クズ5度目のざまぁ回(その2)
さぁて問題です。
クズをぶったのは誰でしょうか?
正解は本文でどうぞw
本来というか、通常なら厳かに話が進はずであった調停式はクズが乱入したせいで台無しとなっていた。
ただし、アーデル達にとってはクズが乱入するなんて予定調和であった。
クズに大勢の前で醜態を晒させるのもこの調停式の目的の一つ。
この調停式を取り仕切る大司教補佐……まだ年若いヨーゼフと違ってひげをたっぷり携えた貫録たっぷりなお爺さんであるヨハン大司教補佐も、クズの処分をアーデル達に一任させていたのでクズの振る舞いを許容した。
だが、教会側としてはこんな不届き者にいつまでも騒がれては教会の威信にかかわる。目線でそろそろ次の段階へと移行しろっとアーデルを促しはじめた。
アーデルの目論見としては、ペーターを初めとしたクズに憤りを感じていた近衛関係者にもう2~3発ぐらい殴らせてから動こうと思っていたが、近衛関係者達は自分がボコるよりアーデルがボコる姿をみたいと思ってたようだ。
そんな周囲から無言で後押しされはじめたのでアーデルはリクエスト通り、クズの目の前へと躍り出る。
「アーデル貴様!!何のつもりだ!!」
「何のつもりも何も、見ての通り。私は昨日付で新しい王となりました。デルフリ元王太子様」
厳密にいえば、戴冠式を済ませてないので本当はまだ新しい王となってない。
だが、現国王トビアスを筆頭とした主要貴族や教会がアーデルを次期女王として認めてるのだ。
今この場で新しい王として振舞っても何の問題ないが、クズにとっては問題大あり
「貴様が王だと!!ふざけるな!!!」
不敬だっとばかりに拳を振り上げるクズ。
しかし、今はクズは書類上では王太子の座どころか王家の籍すらも抜かれた、ただの平民で第一級戦争犯罪者だ。そんなクズが事実上の王となったアーデルに殴りかかるのだから、どちらが不敬なんて一目瞭然だろう。
前回は相手が腐っても王太子だったからこそ大人しく殴られたアーデルも、今回ばかりは大人しく殴られるわけにはいかない。
顔面目掛けて飛んできた拳を受け止めようとするも、その拳は途中で遮られた。
アーデルの傍に控えていた一人の侍従が割り込んでクズの拳を受け止めただけでなく……
はたいた。
クズの頬を平手でもって思いっきり打ち据えた。
周囲にバチン!!っと甲高い音が響き渡る。
「き、貴様……ぶったな!!王太子たるこの俺を……親父にもぶたれたことないのに!?」
「そうか。では今日がその記念日となるな」
「不敬だぞ!!平民の分際「この馬鹿息子が!!!」」
びりびりびり……
あまりの音量で周囲に不可視の衝撃波が走る。
クズもあまりの迫力に台詞を遮られた事への怒りすら忘れて唖然としてる中、侍従はさらに追い打ちをかけるかのごとく……
ばちん!!
再度ぶった。
「に、二度もぶった……だと……?」
「あぁ、二度ぶった。甘ったれの貴様にはこれも良い薬であろう」
「き、きっさまぁぁぁぁぁ!!!俺を誰だと思ってる!!!」
「お前こそ余を誰だと思ってる!!よもや親の顔を見忘れたのか?!!」
「はぁ?親……だと……」
親と言われてクズはピタリと止まる。
そういえばどこかで見た事あるようなっと思ってるうちに、侍従はどこからともなく取り出した付け髭を装着。
さらにアーデルの手で王の3点セットを身につけさせられたら、そこに佇むのは……
「お、親父ぃ!?」
「その通り!!余はトビアス……フランクフルト王国第891代国王トビアスである!!皆の者控えよ!!」
トビアス国王の宣言に合わせ、周囲の者達は跪いた。
まるで予定調和のごとく……アーデル陣営や昨日謁見の間に居た者にとっては本当に予定調和として、一斉に跪いた。
舞台を見守っていた王都民達も調停式の真相を予め知らされていたサクラ……主に商業ギルドや冒険者ギルドの回し者が扇動する事で次々と跪く。
教会陣営は中立組織なので王の命に従う義務がないながらも、逆に言えば従うなという規則もない。
時と場合によっては柔軟な対応も認められているので、この場は国王トビアスの顔を立てるためにあえて跪く。
取り残されたのはクズとその取り巻き、アインとツヴァイのみとなった。
立ってるのはたった3人だけあって、その姿は良く目立つであろう。
「「はっ!?デルフリ殿下!!早く跪いてください」」
「あ、あぁ……」
アインとツヴァイの焦った様子もあるが、さすがのクズも自分の親相手に真向から反抗する気はないらしい。
今回ばかりは突っかかる事もなく素直に跪いた。
だが、その判断は時すでに遅し。
周囲からは王の命令に従わない不忠者と捉えられたのである。
王様降臨。
そして、次回は王直々の裁きの時間だ!




