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135.居たのはただの幽霊。害虫貴族の成れの果てでしたか(SIDE:メイ)

オノーレ。キサマラハマツダイマデノロアベシ!?

「ここは……?」


 乱れる息を整え、早鐘のように脈打つ心臓を抑えながら気を落ち着かせる。

 冷静に周囲を見渡し、今の自分の置かれている状況を思い出していく事幾分。


「そうでした。ここは王城のアーデルお嬢様の寝室に備え付けられた従者用の寝室……そして明日は王国と公爵家との内戦の調停式」


 冷静さを取り戻した事で、今自分が置かれている状況を把握した。

 外をみれば、まだ月と宵闇が支配している深夜といっていいほどの時間帯。

 隣のベットでは双子の妹であるユキとマイがベットでスヤァ……っと言わんばかりに熟睡している事からわかる通り、まだ起きるには早すぎた。

 明日からの大仕事の事を考えるともう一眠りすべきであるも、先ほどまでみていた夢。


 クラーラが発作を起こし、メイがうっかり秘密をもらしたせいでアーデルが無計画に家へと飛び出し……


 樹海の奥にて血まみれで倒れていたアーデルを発見した際の絶望感を……


 血まみれのアーデルの姿に動揺しすぎて、まだ生きていたのに死んだと誤認したどころか、絶望のあまりに叫んだ声で周囲の魔物を引き寄せてしまったという……


 下手すればミイラ取りがミイラになるなんて最悪な事態へと陥りかけた失態を思い出すと、到底寝る気になれなかった。





 それに……



 メイは傍に置いていたナイフホルダーから静かにナイフを引き抜く。


 アーデルの部屋から何者かの気配を感じたのだ。


 こんな夜更けに誰かが訪れるなんて……



「……何人か心当たりありますね」


 その筆頭が夜這いをよく行うドム爺であるも、それならそれで遠慮なく切り捨てるだけだ。

 これは王妃様や伴侶であるシムス婆やからのお墨付きがあるので、例え殺しても罪に問われない事になっている。


 まぁ、ドム爺は老いてても王妃を幼少期の頃から表と裏の両方で支えてきた腹心。

 そう簡単に命は取れないだろうが、とにかく何者かが侵入してるのは事実。


 それでも、いつもならアーデル自身が侵入者を片付ける。

 48の殺人技の一つ。『大空旅行(スカイトラベル)』でお星さまにするのでメイの出番はない。


 だが、今のメイは子供のころとはいえ、自分の不甲斐なさをまざまざと見せつけられるような夢を見ていたこともあって少々いらだっている所。

 その怒りのぶつけ先に最適だからっと放置せず侵入者退治を行う事とした。










 ……………………


「ふぅ……居たのはただの幽霊。害虫貴族の成れの果てでしたか」


 メイはアーデルの部屋に侵入していた不届きもの。この期に及んで決起集会を開いた挙句にアーデルの実兄達が乗り込んで『あべしっ?!』されたであろう害虫貴族の成れの果て。

 死神達が回収し損ねたであろう死者の霊達を魔力を込めた手でグシャーっと握りつぶし(ヒートエンド)ながらぼやく。


 害虫貴族の成れの果てと口にしたが、本当にこれが害虫貴族かどうかはわからない。

 なにせメイは常人では感知できないナニカの存在を感じ取る才覚こそあっても、理解するには至ってない。


 それが少し前まで生きていた人間であっても同様。死んで霊になった者は思考回路が支離滅裂になってしまうので意思疎通が容易でないのだ。


 一応精霊術師の修行を詰めば理解できるようになるかもしれないが、メイは高位の精霊術師を目指してるわけではない。

 目指してるのはアーデルの専属侍女……次期王妃改め女王の忠臣だ。


 その仕えるべく主が必要としてるのは、腕の良い精霊術師ではない。

 直情的で暴走癖のある主を止めるストッパーである。


「えぇ、お嬢様は幽霊とか怨霊とかそういった類のモノ、全く寄せ付けませんから……

 といっても、大抵の霊は朝日を浴びた瞬間消え去ってしまうような儚い連中ばかりで実害ないのですけどね。

 それに、この部屋には下手な幽霊やら怨霊よりも恐ろしいナニカが在住してますし……」


 独り言のようにつぶやくメイの視線は部屋の一角。


 アーデルが趣味……クラーラから手作り人形をもらった事をキッカケとして人形に興味を持ち始めたならばっと、淑女教育の一環として子供の頃から虫やらヘビの抜け殻やらガラクタを集める趣味を改める目的で始めさせた人形収集の趣味での成果物を収納した棚に向けられていた。


 そこに収納されている人形はアーデル自身で集めたモノもあれば、ロッテンやクラーラがお土産的に持ってきたモノもある。

 お店でも定番や流行モノを購入する事もあれば、人気がなさすぎて店隅に放置されてたのを『可愛そうだから』っと態々引き取る事もある。


 そうして集められる人形も、定番や流行モノは孤児の子供たちへの慰安として寄付し、引き換えとして子供たちが練習で作ったであろう出来損ないの人形をもらってくる。


 これを長年繰り返してるせいで、アーデルの手元に残るのはお気に入りと誰も欲しがらない売れ残りと厳重に封印を施さないとやばそうな曰く付きが大半。

 それらが一か所に集められてるのだ。メイのような特殊な才覚を持つような者でなくとも感知できてしまう程のやばいオーラを発するのは無理なかろう。


 常人であれば、このオーラを見た瞬間に発狂(SAN値直葬)まったなし。

 特に持ち主であるアーデルにはオーラの集中砲火を浴びるのだ。

 常人でなくても正気を保てるわけないのだが……



「すーはーすーはー……げへへへ」


 そのアーデルはクラーラを抱き枕にしたまま、至福な顔で爆睡中っという狂ってはいるけど平常運転であった。

SAN値直葬といっても、最初から0じゃねぇ……

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― 新着の感想 ―
普通なら怖がるはずなんですけどね~。出て来た幽霊をヒートエンドして片づける……更なる恐怖を味わった事でしょうね(笑) 当然、漢女(これでオトメと読むそうです)は気にしないで熟睡してました。やっぱり「…
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