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131.お嬢様には暴走を止めるストッパーの存在が必須!!(SIDE:メイ)

閑話で、オマイウとか言われそうな危ない専属侍女視点での過去話。

 あれからどれだけの時間が経過したのだろうか……


 私は鬱蒼と茂る木々の隙間から辛うじて届く日の光を感じ取りながら歩く。

 その先に道らしい道はない。


 あるのは、日の光をさえぎるかのように聳え立つ樹木と、その隙間から度々襲い掛かってくる殺意のみ。


 死角から魔物が襲撃してくるので、休息もロクに取れない。

 まともに睡眠を取ったのはいつだったのか……


 私は不意に襲い掛かってきたヘビの頭を切り落としながら、歩を進める。


 そして……


「お嬢様の生命力が…消えた…?」












 ……………………


 メイの父親ラリーはアムル辺境伯家に仕える家臣の一人であるが、元々はブリギッテ王妃……より厳密にいえばドム爺が子飼いとしている暗部の一員であった。


 アムル家に仕えるようになったのは、王妃からの命令。

 アムル家に潜入して辺境伯夫人ユリアの素性を洗い出すこと。


 かなりの危険が伴う任務と言われるも、父は忠臣として二つ返事で引き受けた。


 結論から言えば、任務は半分成功で半分失敗。

 父が王家から送り込まれた密偵だという事を先方に早々気付かれてしまい、夫人から拷問……回数を重ねる事に激痛が増していき、15回目には逃れられようのない死を与えるといわれる刺突『真紅の(スカーレット)衝撃(ニードル)』を受けるも、14回も耐えきったその根性と忠誠心に免じてか、父が知りたかった情報を明かしてくれたそうだ。


 その慈悲深さに感激し、父は持ち帰った情報と引き換えに暗部からの足抜けを希望。

 それに至った経緯はドム爺に見抜かれたようであるも、アムル家との太いパイプを築き上げる必要経費として足抜けが許されたらしい。


 こうして改めてアムル家へと仕える事となった父ラリーは10年後に夫人の勧めで隣国出身の冒険者でもあった魔術師ルプリスとお見合いとなり、お互い三十路の売れ残りという共通点もあってすぐに婚約。特に母の方はこれを逃したら後がないっという焦りもあってか、肉食を思わせる勢いで迫ったものだから結婚前にメイを身ごもったそうだ。


 こうしてある意味出来ちゃった婚をした両親。その頃には夫人も丁度子供……アーデルを身ごもり、お互いほぼ同時期に出産。

 辺境伯夫婦はメイをアーデルの遊び相手と宛がうつもりだったそうだが、そこは両親が反対。臣下としてきっちり線引きするべきだっと、メイにはアーデル専属の侍女として仕えるよう教育した。


 その教育の賜物か、メイはアーデルに仕えるのが当然と考えていた。

 なにせ、アーデルは目を離した隙にとんでもない事を起こす程の行動力を持ってるのだ。


 “お嬢様には暴走を止めるストッパーの存在が必須!!”


 メイが物心付いた頃にはそう悟ってしまえる辺り、アーデルの子供時代がどれだけ破天荒だったかは推し量れるであろう。

 それに……暴走に至る理由も大半は自分ではなく他者のためだから頭ごなしに叱れないというのもある。


 そんな他者のために動くアーデルが特に目をかけていたのは、実の両親から見捨てられたクラーラだった。


 子供らしく励まして元気付けるだけであればそれほど問題なくとも、アーデルはなんとしても病を治してやりたいっと想うだけでなく、実際に病を治す手がかりを探すのだ。

 アルプス山脈には病によく効く水が湧き出る泉があるなんて噂を聞けば、現地がどれほど危険地帯であっても躊躇なく探しに行こうとするので本当に気が抜けない。


 だからこそ、クラーラの病を治す手がかりは渡さないようにっと厳守されていたのだが……


 ある日、メイはうっかり口を滑らしてしまった。










「メイ……それ本当なの?本当に治せる手段あるの……?」


「えぇ……ラリー父さまからこっそり教えてもらいましたが、お嬢様のお母さまのお母さまのさらにお母さまなら可能だそうです」







 父ラリーは冒頭でも述べた通り、元々辺境伯夫人の素性を探るためにアムル家へと潜入した暗部であるため、夫人の素性をほぼ全て洗い出されていた。


 辺境伯夫人……ユリア様だが本名はユリネ。

 隣国ゴッドライフ領国出身のS級冒険者であり、世界を股にかけた商売を行うサクラ商会の商会長の次女。

 長女リリーナは歴代屈指とも言える聖女の才覚、三女カスミはとびぬけた商売人の才覚を幼い頃から持ち得ていたらしく、二人はそのまま聖女の道と商売人の道を進んだそうだ。


 対して侍女ユリネは長女と三女が保有していた聖女や商売人としての才覚がないものの、その代わりといわんばかりの腕っぷしの強さがあった。

 そのせいか、教養やマナーが重視されるお嬢様が集うお茶会よりも荒くれの多い傭兵や冒険者が繰り広げた冒険談の方に興味を持ち、彼等の何者にも縛られない生き様に感化されて自分も自由に生きたいと思うようになったそうだ。


 フランクフルト王国へと渡ってきたのは、陸続きながらも魔王城という世界屈指の危険地帯のせいで交流がほぼ途絶えた隣国に興味あったから。政治的な思惑もない、ただ興味本位と新天地といった実に冒険者らしい理由で横断を決行だ。


 その道中の魔王城近辺でまだ爵位を継ぐ前の辺境伯、ロンケンとばったり遭遇。成り行きで地形変えるほどの凄まじい戦闘を行ってしまうも、それがキッカケで意気投合。

 お互い立場ある人間だというのに、あれよあれよと婚約まで取り付けた辺りはすさまじいまでの行動力といえよう。


 アーデルはそんな母というか両親の血を継いで生まれたのだ。

 蝶よ花よと育つような令嬢になるわけがなかった。


 まぁそんなユリア改めユリネだが、ゴッドライフ領国が所属するストロガノフ合衆国では貴族制度が廃止されてるので扱いとしては平民だ。

 ただし、貴族ではなくても家格としては帝国での公爵家と同等であった。

前々から予想されてた通り、お義姉ちゃんのママンの正体は邪神すらも従えるあの人でした(違)

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― 新着の感想 ―
最強伝説に謡われるお母様のお話。なるほど。つまり、「コイツならウッカリ手を出しても大丈夫だな」ですね(笑) 強い女性の多い事♪そういえばどらまたさんのお姉ちゃんもスゴイそうですね。曰く「姉ちゃんのオシ…
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