12⑨.チェックメイト……か(SIDE:ビィト)
エロ爺の寿命がチェックメイトという意味ですね、わかります( ゜∀゜)=3
「ぎょぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
どっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
地下にまで響き渡ったドム爺の断末魔と轟音。
それで全てを察したマイヤーはやれやれっと言わんばかりに立ち上がった。
「陛下。私は48の殺人技の一つ。『大空旅行』でもってゴミ焼却場までダイレクトに放り込まれたであろうエロ爺を回収してきます。
本来ならそのまま汚物として焼却処分したいところですが、状況が状況なだけにそれはまずいでしょうから……はぁ」
溜息混じりに隠し部屋を出るマイヤー。
マイヤーは嫌味で陰険で人の神経を逆撫でするのが大好きな人種。さらに長年クズ王太子のお目付け役として行動し続けた事もあって、並大抵の事では動じない胆力もある。
そんな彼が頭を抱える辺り、ドム爺の愚行は相当アレだったようだ。明日に国の運命が決定付けられるという場面でなければ、まず間違いなく焼却にかかるだろう。
「まぁドム爺様が行ったのは立派な犯罪。焼却したい気持ちはわからなくもないか」
ビィトは一人残された部屋でテーブルをみる。
テーブルの上では勝負途中のチェスの盤面が残されていた。
なんてことはない。総責任者であるドム爺が戻ってくるまでの暇つぶしだ。
なぜこんな時にっと思うだろうも、ドム爺やマイヤー曰く、こんな時にこそ行うものらしい。
凡人であるビィトでは全く理解できない考えである。
いろんな意味を含めてなのだが……
改めてテーブルの盤面をみれば、勝負はすでに決まったも同然。
どんな馬鹿でも次の一手でビィトがチェックメイトに持ち込めるものであった。
「チェックメイト……か」
ビィトは独り言ちながら盤面の流れを振り返る。
最初は定石通りに攻めるも中盤戦へと入る前にビィトは奇策を……
クイーンを5Fに攻め込ませるという奇策を繰り出した。
この奇策を最初に披露したのはハイジだった。
ビィトは最初こそ『あ~これはまた考えなしで打ったな』と思うも、横からみていたドム爺はなぜか『むぅ……これは興味深いっと』唸らせるだけのものがあった。
ドム爺の反応をみて、改めて冷静に見定めたら……ドム爺が唸ったのもわかる程の革新的な一手だったのだ。
ただ、ハイジの頭では自分で打った奇策を全く活かすことが出来ずにあっさり瓦解。
これはこれでハイジらしいと言えるも、そうしたハイジの思いつきを形にするのが昔からのビィトの役目。
ビィトはハイジの繰り出した偶然の一手を奇策として活用できるよう研究した。
その成果は確かにあった。
おそらく王国トップ3に入るであろうドム爺相手に一時は優勢まで追い込むも、詰めまでの道筋を誤って逆転負けだ。
結論からいえば、ハイジが生み出す奇策は定石から外れてるだけあって使いこなすには相当な地力とセンスが必要であり、凡人であるビィトでは到底手に負えなかった。
そんな奇策の数々をマイヤーは次々と自分のモノとしていた。
マイヤーはドム爺が手塩にかけて育てた直弟子であり、策略に関しては右に出る者なしと言われるほどの鬼才持ちだ。
クズとそのクズに寄生して利益をかすめ取ると狡い貴族連中だけでなく、アーデルと愉快な仲間達からも信頼を得られるほどの絶妙な立ち位置をキープし続けるその才覚はまさに鬼才ともいえよう。
チェスでも定石通りの攻めと受けだけでなく、ビィトでは到底使いこなせないっと匙を投げた奇策の数々を平然と使いこなすという、変幻自在ともいえる打ち筋は蝙蝠よろしくに自分の立ち位置を絶妙に調整できる彼だからこそ出来る芸当だ。
だからこそ、ビィトはこの盤面……
いくら必殺の奇策を使ったからといっても、マイヤーの地力であれば十分逆転可能なのに、彼は最初から勝負を捨てるかのように攻めた。
クイーンを無視し、ひたすらにキングを取るために駒を動かした。
その様は……
“クイーンであるアーデル様を無視し、キングであるクラーラ嬢を追い求める。手の届かないところへ逃げてもお構いまし。そうした中でクイーンがようやく邪魔な事に気付いて排除に動くも、クイーンを取った程度ではもう戦況は覆せない。まるでクズ王太子の行動そのものですよね”
その言葉に導かれるまま、ビィトはクズの今までの行動を思い起こすのであった。
それでも戦闘中にいきなりポーンが後ろ向いてキングとその取り巻きをグサーしてくるような……
いや、敵駒を取ろうとしたらなぜか自駒が取られるような酷いあり様だった王国軍よりかはまだマシだと思う?




