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124.クラーラヲブジョクスルモノハバンシニアタイスル!!!シンデツグナエ!!!

VO:池田秀一

たぶんおそらく、今の若い子には通用しないネタかも?

(ここでクイーンが動いた!?)


 クイーンはうかつに動かさないのが定石。今は陣形を整えつつポーンで小競り合いを行う様子見の段階であり、本来ならここで動かすような駒ではない。そんな定石を無視したマイヤーの奇策ともいう一手にクラーラは驚愕するも……

 一度冷静になって盤面を見渡せば、それが必殺の一手だと気付いた。


(やばい、この位置にクイーンを陣取られると自軍の動きが制限される。かといってクイーン排除に動けば他の駒に攻め込まれる隙を与える。対抗馬となる自クイーンも自駒が邪魔して動きが…………あーこれは駄目かな)


「負けました。投了します」


 粘れば逆転の目はありそうであるも、マイヤーが詰めを誤るとは思えない。

 粘って余計な時間を損失するぐらいならっと、クラーラはぴんっと人指し指ではじくようにして自軍のキングの駒を倒す。

 これによってマイヤーとの勝負……


 アーデルが戻ってくるまでの暇つぶしとして行っていたチェスの勝負が終了となった。

 それに伴い、ユキとマイは自分達が行ってたオセロゲームを切り上げてチェス盤の片付けを始める。

 さらにメイは3人分の飲み物も用意する。


「はぁ……マイヤー様、相変わらず強いね」


「当然ですよ。なにせチェスのような遊戯は戦争の代替案にも採用される交渉手段の一つ。自国の強さを示す指針の一つでもあります。

 宰相補佐として外交にも携わる身ともなれば強いに越したことありません。クラーラ嬢もチェスの勝敗で商談に左右される事もあるからと、こうしてチェスを学んだのでしょう」


「あいにく私は才能なかったから、接待ぐらいにしか使い道ないわけだけど」


「接待として成立させれるだけでも十分有用でしょう。そもそもチェスには打ち手の人柄が浮き上がります。

 交渉手段の一つとされるのは伊達ではないというのに、馬鹿な貴族達はただ勝った負けたの勝敗だけで一喜一憂……打ち手がどのような人物なのか見ようともしないとは、嘆かわしいにも程がありますよ」


「だったら私はどうゆう風にみられるのかな?」


「クラーラ嬢は自由本儚な振る舞いとは裏腹に本質は堅実。定石通りに攻めながら相手の反撃の手を一つ一つ丁寧に潰して制圧という弱者には強く、強者には弱い打ち筋はまさに()()()でしょう。なにせ貴女様の商談は愚かな弱者相手だと徹底的に蹂躙し、一筋縄ではいかない相手だとあっさりと手を引いて無難にまとめる傾向があるっとシシィ姐さんから聞いてますので」


「それは褒められてる……でいいのかな?」


「褒めてるつもりです。だからアーデル様。貴女様の溺愛する義妹様を侮辱する意図は決してございませんので、私の首を締めるの止めて頂きませんでしょうか……?」


「ヤカマシイ!!クラーラヲブジョクスルモノハバンシニアタイスル!!!シンデツグナエ!!!」


 クラーラをホールドしながらも伸ばした右手でマイヤーの首を締め上げるアーデル。

 常人なら完全に気道を遮断するほどの力が込められてるはずなのに、マイヤーは涼しい顔。


 それが腹立つのか、マイヤーの首をへし折ろうとばかりに力をこめるも、その前にクラーラが……

 より正確にいうと、クラーラからアイコンタクトを受けたユキとマイが動く。


「お義姉ちゃん!!そのまま力込めたら……わかってるよね?」


「ひ、ひぃ!!!!?」


 ベットに置かれていた等身大クラーラ人形をひっつかみ、そのまま首をねじ切る振りをするユキとマイの姿をみて……クラーラの合図一つで振りではなく本当に首をねじ切られると察した事で瞬時に手をひっこめるアーデル。

 そのまま流れるような動きで土下座しはじめた。


「ごめんなさいごめんなさい!!お義姉ちゃん謝るからそれだけは……一流職人に大金をはたいて作らせた等身大抱き枕クラーラ人形の首をもぎ取られなんてされたら、お義姉ちゃん……お義姉ちゃん……生きていけなくなっちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


 ペコペコと必死に頭を下げて許しを乞い始めるアーデル。

 そこに国の頂点である女王(仮)としての威厳は全くない。


 通常なら幻滅するような姿ながらも、クラーラ含む周囲からみれば今のアーデルは通常運転。

 なので……


「大丈夫、私はお義姉ちゃんの嫌がる事するつもりはないし、首もぎ取るなんて冗談だよ」


「よかったぁぁぁぁぁぁぁ!!!私もクラーラの嫌がる事なんか絶対しないわぁぁぁぁぁ!!!!すりすりすりすりくんかくんかくんかくんか!!!!!」


 クラーラから許しを得られると同時に再度だいしゅきホールドされるのも通常運転。

 さらにいえば、こうして抱きつかれるのは別にアーデルが変態思考持ちだからではない。


 抱きつくのは幼少期のいつ死ぬかわからないクラーラの息吹や体温を肌身に感じるため、生きているか確認するのと同時に……

 どこか遠くへと逝かないように、自分自身が奇病に感染するリスクを承知の上で錘となる意味も含んでいた。


 その錘効果だが……不可思議な事に効果は抜群だった。

死神すら追い払うお義姉ちゃんだった?

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― 新着の感想 ―
え~っと……奇妙な光景……ですね。 引っ付いていながら首を絞めている側で等身大人形の首を…… うん、判りませんが解りました。 取り合えず、コレが普通なのですね。
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