122.残りの馬鹿は燃えるゴミとしていつも通り処置してください ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その13)
モヒカン部隊「ヒャッハー!汚物の消毒なら任せろー!!」
「クラーラ様!!あまりに遅いので様子見に来てみれば……何やってるんでしょうか?いや、本当に何やってるんでしょうか?」
「なにって、わからないリーメ?倭国の地獄の風物詩でもある『蜘蛛の糸』ごっこ」
「それぐらいはわかってますがな。『蜘蛛の糸』とは慈悲の神が地獄に落ちた罪人を救うために一本の蜘蛛の糸を垂らすという物語ですよね。
他者を蹴落としてまで登ろうとする者は登り切った後に神から再度地獄へと突き落とされ、逆に自分が残るのを承知の上で他者に権利を譲る者は神の手が差し伸べられて地獄からでられるという……」
「今回は一本の蜘蛛の糸じゃなく一本の回復薬なわけだけど~~いや~見ててほれぼれするぐらいの醜い争いっぷりよね~」
「「「全くです。こんな面白いショーを拝ませてくれてありがとうございます」」」
「面白いショー……俺の目にはただの地獄絵図にしかみえねーけど……」
そう言いながらリーメは目の前の惨劇、口から他者をののしる言葉を血反吐と共にをまき散らしながら血走った目で一本の回復薬を奪い合う馬鹿貴族達をみる。
それはまさに地獄絵図というべき壮絶な現場であり、むせかえるかのような血の臭気に常人であればリバース間違いなしであっても、リーメは顔を引きつらせるのみ。
リーメもクラーラの出自……国王の実子である事を知ってる以上、王家の血筋をめぐっての諍いに巻き込まれるのは重々承知。
現場を目撃するだけでなく、時には巻き込まれて自ら手を下した事さえある。
その他、魔物に襲われたせいで凄惨な死体がゴロゴロと転がっている辺境の村への救援活動を行った事もある。
だから血や死体そのものには慣れてるわけだが、クラーラというかアーデルと愉快な仲間達がたまに生み出す地獄絵図だけは慣れる事ができず毎回ドン引きしていた。
ちなみに、ユキとマイは秘書や護衛としての役目だけでなく、尋問や拷問も担当する侍女でもある。
リーメは秘書と護衛に関してなら十分合格点でも拷問には拒否反応を示すせいでリーメは二人から侍女として失格の烙印押されていた。
そんなユキとマイも姉であるメイから『貴方達は所詮半人前、二人そろってようやく一人前ね』という厳しい評価が下されており、二人も姉から一人前と認めてもらえるよう日々励んでるのは余談である。
「さてっと、ショーを最後まで見届けたいけど迎えも来た事だしお仕事に戻ろうかな。後はお任せしていいですか?メイさん」
「構いません。生き残った者は借金奴隷としてアムル領に護送する手配しておきましょう」
「お願いしますね。いや~馬鹿だよね~自分達の家は今回の戦争を引き起こした戦犯として莫大な請求が課せられてるのに。例えこの地獄から生き残っても次は借金地獄が待ってるというのに……」
「そもそも明日には王国そのものが無くなってもおかしくないような瀬戸際なのに、彼等は変わらずアーデルお嬢様の足を引っ張るばかり……馬鹿もここに極まりです」
「そんな馬鹿だから処刑しても心は痛まないってものでしょ。逆にトリネー様は……」
「後悔してますか?」
「少し……あるかな。トリネー様は理不尽な環境のせいで歪んでしまったけど、もし復讐や権力に固執しない生き方を選んでくれたらお義姉ちゃんの側近になれる未来もあったんじゃないかなっと思うとね」
「では、彼だけは丁寧に埋葬しましょう。それぐらいの情けぐらいは許されるはずです」
「メイさん、お気遣いありがとう」
「クラーラ様。引継ぎが済んだならそろそろ……現場は兄貴達が泣きそうなぐらいやばい事になってるんで早く戻ってやってくれねーか」
「オッケー。それじゃぁ改めて後はよろしくお願いしま~す」
そう言い残して去っていくクラーラとリーメ。その際リーメから何がヤバいかと説明されるも、クラーラが笑ってるところみると大した事ないようだ。
……まぁそれはクラーラの執務能力がずば抜けてるだけな気はするも、そうこうしてる内に回復薬争奪戦が終わっていた。
馬鹿達が選んだのはクラーラも予想できなかった……いや、予想出来ていたがあえて口に出さなかった第4の選択肢。
最後の希望であった回復薬は争いのはずみで中身を床にぶちまけてしまうという……
たった一つの希望を争いの末に失わせてしまうという、愚か者達にもっともふさわしい選択肢を意図せず選び取った羽目になったわけだ。
そんな馬鹿の末路を見届けたメイと衛兵達は後始末にとりかかる。
「私はトリネー様の亡きがらを教会へ運び、丁寧に埋葬してもらえるよう手配してきます。残りの馬鹿は燃えるゴミとしていつも通り処置してください」
「「お任せください」」
白いシーツで丁寧に包んだトリネーの遺体を抱えたメイから馬鹿達の後始末を任された衛兵達。彼等はゼーゼマン家の影としての顔もあるため凄惨な現場や死体の処理はお手の物。
そんな彼等の仕事ぶりは血なまぐさい地獄絵図と化した謁見の間に通じる回廊が短時間で……皆が謁見の間を出る頃にはその痕跡が綺麗さっぱりなくなるほどであった。
その仕事ぶりはまさしく『驚きの白さ』ともいうべきものだろう。
どちらかというと、(証拠隠滅的な意味で)驚きの白々しさの方が最適かもしれない(笑)




