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114.もっとも苦しめる方法で処刑してしまいましょう!!※ 4度目の害虫貴族駆除回(その5)

死神A「だったらいい人?が居るっすから、紹介してあげてもいいっすよ」

「何がおかしい!!」


 ビィトの笑いが癇に障ったのか、トリネーは思わず声を荒げた。

 その声でビィトは自分が大笑いしていた事に気づいたらしく、即座に謝罪する。


「いや、済まない。これは別に侮辱する意味での笑いではない。長年王国を蝕んでいる膿の特効薬となりかねない貴殿への敬意を示す意味での笑いだ」


「はん。お前のようなのに敬意払われてもうれしくはないな。それよりいいのか?周囲の兵達が突き殺さんっとばかりに殺気だった目でみられてるぞ」


 それもそうだろう。

 もはや処刑確定なトリネーはともかく、ビィトは血筋の重要さを自分の都合良いように解釈してしまう発言を肯定したのだ。


 血筋の重要性をおろそかにしては王家や貴族の規制が効かなくなる。

 例えどれだけ腐った王家や貴族の血筋であろうとも、排除にはそれなりの制約がある。


 アーデル達も今回かなり強引な排除は行ったが、一応『言いがかりのような理由で戦争を起こし、挙句の果てに大敗して王国に大損害をもたらした』という正当性(と書いて『マッチポンプ』と読む)でもって粛清した。


 裁判で弁護する機会すら与えない電光石火ともいうべき早さで粛清だ。

 他から批難はあれど、馬鹿貴族達のやらかした大きさ。王国の存亡にすら関わるような事態を引き起こしたと考えれば止む無しと言えなくもない。


 王の座についても、衛兵たちが認めたとおりアーデルは今まで次期王太子妃として……王妃代理として政務を滞りなく進めてきた実績もあるから王の座を簒奪しても批難の声はあまりない。


 正当な王家の血筋の者は表向きだと害悪しかないような無能しか居ないなのだから、これも止む無しと思われても仕方なし。


 こんな具合にアーデルは王位簒奪こそ行ったが、表向き血筋の正当性そのものは否定してない。

 だからこそ、残りの良識ある貴族から支持されている。

 だが、血筋の正当性を考慮しない者が出現したのであれば……


 衛兵達はビィトとトリネーを油断なく包囲した。


 なお、他の若手の馬鹿達は二人から距離を取っていた事もあって無害と判断されていた。

 ならばと彼等はアーデルへ媚を売り始めるかのごとくトリネーを批難し始めた。


「トリネー様……いやトリネー!!お前が庶民だったなんて、俺達を騙してたんだな」


「アーデル様!!こいつは貴族当主と偽った極悪人です!!即刻殺しましょう!!!」


「庶民のくせして貴族の振りをするとはな、貴様のような者は死んで詫びろ!!」


 さっきまでトリネーを旗頭にしてた癖して、不利になるとあっさり切り捨てる馬鹿達。

 その様は懇親会でクズを見捨ててアーデルにすり寄ろうとした場面の焼き増し。

 あまりの面の厚かましさに嫌悪しかない。


 その逆、トリネーには一定の敬意を払ってもいいと思う者は居た。

 同じ馬鹿の部類でも、権力的にも腕力的にも強大な力を持つアーデルからコテンパンに叩きのめされたのに……


 常人なら完全に心へし折られてもおかしくないであろう目に合わされようとも、再度立ち上がって歯向かう不屈の精神は評価できる。


 例え矛盾があろうとも、その矛盾を嘘も方便っとばかりに押し切ろうとする姿勢は愚かを通り越して清々しさすらある。


 それに加え……




「おい、こいつは関係ないだろ。殺すなら俺だけにしろ」


 トリネーは敗北こそ認めなくとも、自分の命が助からない運命だけは認めていたようだ。

 その最後の命を自分でなく赤の他人(ビィト)の助命へと使う自己犠牲精神も評価に値した。


「わかりました。ではトリネー様。大人しく投降してくださいませんか?」


 衛兵達も彼の心意気を尊重し、武器と殺気をひっこめて丁重に投降を促す。

 トリネーもこれ以上騒ぎ立ててビィトを……生まれが生まれのせいでほとんどの者から認めてもらえなかった……

 クラーラのように自分を認めてくれた数少ない理解者にこれ以上迷惑をかけられないっとばかりに大人しく従う。


 その際にも自分は間違えた事を行ってない……

 貴族に対する恨み妬みのせいで誤った道を突き進んでしまおうとも、そこに後悔はない……


 思想こそ自己中心的な物があっても、堂々とした佇まいで退場していく姿に大勢の者は彼を貴族として認めた。

 対して他の馬鹿達は……




「はっはっは。庶子が調子乗るからだ!!ざまぁみろ!!!」


「アーデル様。あんな奴、楽に死なせては示しが付きません!!もっとも苦しめる方法で処刑してしまいましょう!!」


「いっその事、拷問にかけてやりましょう!!なんなら我々がお手伝いを!!!」


 庶子であっても貴族の誇りを持っていたトリネーと違い、正当な血筋の貴族子息たちのあまりにもな発言にドン引きではなく殺意が籠る。


 特に衛兵達の殺意は凄まじく、もう馬鹿達を視線で殺せるのではないのかっといわんばかりな殺意にあふれていた。

 その様に馬鹿子息達はひっとおびえ始める。


 慌てて助けを求めるべくアーデルへと目線を向けると……


 アーデルは無言のまま、首筋を親指でかっ切る仕草を行った。

地獄へ落ちろ

死ぬがよい

逝ってよし


意訳として、どれが正しいかな?

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― 新着の感想 ―
3番の「逝ってよし」だと思うね♪若しくは4番の「消えろ、クズども!」とか。 「一寸の虫にも五分の魂」はありましたか。胆力もあるし、相手を気にかけてもいる。それなりに使えそうですね。(地獄の)特別メニ…
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