111.私を極刑にしたいというなら……今ここで私と矛を交える事を許しましょう(SIDE:アーデル) ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その2)
勝てるわけない!あいつは牛の超人ヒロインなんだぞ!
もうダメだ……おしまいだぁ……
余裕綽々に馬鹿達を見下ろすアーデル。
対して馬鹿達は顔を真っ赤にし、拳を握りしめながらプルプルと振るえてるもそれだけだ。
どれだけ敗北を認めたくなくとも、結果が全てを物語っていた。
「ま、まだだ……まだ貴女の罪が残っている!!」
「ほぅほぅ。では聞かせてもらおうかしら。その罪とやらを」
いい加減幕引きしてもいいが、最初に立ち上がって反論した馬鹿……
何らかの理由で先日のパーティーや戦争には参加しておらず、爵位的に自然とリーダー格となった侯爵家の三男坊はまだ諦めきれてないようだ。
ならばギルティ判定を出す前に言いたい事を全て言わせてやるのもまた一興っとばかりに続きを促す。
そんなアーデルの態度が勝機有りと思ったのだろう。三男坊はにやりと笑う。
「アーデル様。貴女はクラーラ様を……王の実子を差し置いて王座に着いた事です」
王の実子……
その言葉に周囲はどよめく。
「な、なんだと……」
「そ、そういえばクラーラ様は国王様の実子だという噂が……」
「では、クラーラ様は王位継承権を持つ……」
周囲のどよめきに三男坊は手ごたえありっとばかりに再度にやりと笑う。
彼はアーデルがクズからの寵愛を受けるクラーラに嫉妬して虐待しているという情報を信じているようだ。
だからこそ、王家の人間を虐げている事実を知らしめれば勝てると思ってるらしい。
だが、アーデルからしてみればそんなものすでに公表した情報。
アーデル陣営に付いた者達の間では今更感が強い情報であり、糾弾するのは1割も満たない……
情報に疎い貴族と最初の頃からアーデルを糾弾していた若手ぐらいだ。
大半は『今さら何言ってんだこいつら?』っと呆れ返るほどである。
慌てるようなものではないので、アーデルも一切反論せず堂々と認めた。
「えぇ。クラーラは王の実子よ。それがどうかしたのかしら?」
「認めたな!!王の実子たるクラーラ様こそが王座にふさわしいお方だ!!そんな尊きお方を長年に渡って虐げてきた」
「虐げてないわよ」
「嘘を付くな!!貴様がクラーラ様を虐げたという証言や証拠は多数あるのだぞ!!!」
「そうだ!!クラーラ様のような尊き方を虐げてきたなんて最早極刑にすべき行い!!今すぐ処刑すべきだ!!!」
ダン!!
処刑、処刑っとコールが続く中でアーデルは再度王錫で床をつく。
その際に少々力を込め過ぎたせいで床がひび割れてしまうも、その分脅しとしての効果は抜群。
今まで騒ぎ立てていた者達は『ひっ!?』っと怖気ずく。
「な、なんだ……我々は屈しないぞ」
それでも正義は我にありと思っている三男坊は気丈にもにらみ返す。
ならばとアーデルはびしっと血にみせかけたトマトの汁まみれの王錫を突き付けた。
「屈しないというなら、私を極刑にしたいというなら……今ここで私と矛を交える事を許しましょう。ただし、挑む際にはこの王錫の錆になる覚悟をもって挑んできなさい!!」
突き付けていた王錫を定位置に戻し、バサリとマントを翻しながら立ち上がるアーデル。
その際に王者としての貫録を……
愉快な仲間達に監修されながら一夜漬けで覚えた、付け焼き刃的な演技でありながらもその迫力は王者を通り越した覇王そのもの。
相対していた者の腰は砕け、中には股間から液体まで流すような者まで出る程度に破壊力ばつ牛ン。
こんな有様に周囲……この茶番を観客気分で眺めていた者達が思わず『ぷーくすくす』と笑いはじめる。
「え、衛兵達……殺せ!!この王家に仇名す謀反者を殺すんだ!!」
必死に声をあげて命令する三男坊であるも、衛兵達は思うように動かない。
衛兵達は職務上姿勢や表情を崩してはいけないので表向き平静を装うも、内心では笑いを堪えるのに必死だった。
中にはこらえきれずに吹き出し、同僚に小突かれながら慌てて取り繕うっといった事例が多発。
本来なら罰せられかねない失態であるも、こんなバカげた茶番を間近で見せられてるのだ。
衛兵達も感情ある人間だから仕方ないっとアーデルは全て不問だとこっそり通達した。
そんな有様であるため、しびれを切らした三男坊は大声で叫ぶ
「な、なぜだ!!なぜ動かん!!俺はレーハム侯爵家の当主で次期王になる男だぞ!!!次期王の命令に逆らうのか!!?」
岩盤さんがアップをはじめました




