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104.大丈夫です!私は死神ですから、凄惨な現場だからと逃げる気はありません(SIDE:モブ死神ことキナコ) ※2度目の害虫貴族駆除回(裏)(その1)

星一号防衛作戦ってのは白い悪魔さんがラストシューティングしたあの戦いのことです。


あの世界ではたったの一年でとんでもない死者を生み出すも、滅亡することなく復興を遂げた一例として逸話が伝わってるの……かも?

「何言ってるんすか?予備軍の学徒兵を白い悪魔(RX-78-2)が大暴れする前線に送り込んだとかいうSF世界(宇宙世紀世界)の星一号防衛作戦じゃあるまいし、デスマーチ覚悟の任務に見習いが派遣されるわけないじゃないっすか」


 ありえない。何かの間違いではないのか?

 そんな想いを抱えていたら、平な死神ながらも長年第一線で働いてきた功績もあって現場長を任命されているアンコ先輩からぐうの音も出ない程の正論が返ってきた。

 さらにいえば、現在戦場に集まってる悪魔達は現場監督者……この場合はアンコ先輩の許可なく勝手をしないよう飼い主からしっかり言いつけられてる事もあってイレギュラーが起きる可能性は非情に低かったそうだ。


 ただまぁ、今回は死者数が想定の半分以下という別方向でのイレギュラーが起きてしまったわけであるも、これは悪魔とは全く関係ない所で起きた事。

 そのため、アンコ先輩含む他の死神達は仕事が減ってラッキーとしか考えてなかった。


 だが、キナコに浮かんだ感情は逆だった。


 せっかく学校を卒業して見習いながらも早々に戦争という第一線の現場へと出れたのに、今回はデスマーチになるだろうから気合入れて戦場で待機していたら、愚か者以外は大した被害を被らないまま戦争終了。

 これでは消化不良過ぎるからっと気づけば『働かせてください』っと残業を願い出ていたのだ。


「残業っすか……ん~一応これから処刑される捕虜達のお迎えはあるんすけど、キナちゃんみたいな見習いにはおすすめできないので辞めた方がいいっすよ」


「大丈夫です!私は死神ですから、凄惨な現場だからと逃げる気はありません」


「いや、今からの処刑は凄惨という言葉では済まない可能性が高いんすよ。なにせレアちゃんの要望が入ってるんで」


「レアちゃん?誰ですかそれ」


「あっしら死神と懇意にしてる魔女様っすね。あのお方はたまに『魂よこせ』って依頼してくるんすけど」


「ちょっと待ってください?!魂よこせってそれ重罪じゃないですか!!」


「大丈夫っす。レアちゃんは魔女といっても道理を弁えてるお方っすからね。だから今回の依頼も正式な手順を踏んでるから問題ないんすよ。ただ、道理は弁えてても倫理観や人格の方はかなりぶっ飛んでるんで頭固いお上からの評判は最悪なんすよね~もしこの先出世したいなら関わらない方がいいっすよ」


「わかりました。では、仕事を引き受けます」


「聞いてたんすか?出世したいなら」


「『死神たるもの、死者だけの声だけでなく生者の声も聞け』。これは冥府に務める者の大事な教えですよね?」


「あーそうっすね……わかったっす。何事も経験なのは確かだし、特別に認めるっす。ただし、見習いのキナちゃんに万が一があったらあっしの責任になるんで、単独行動をしないのが条件っす」


「わかりました!!残業を頑張らせてもらいます」


 この時キナコは軽く考えていた。


 今から処刑される馬鹿貴族の魂を依頼主の元へと送り届けるだけの簡単なお仕事。

 死神のお仕事の延長のように考えていたら……







「なっ、なっ、な……」


 その認識を根本からへし折るかのような光景に思わず言葉を失った。


 キナコは見習いといっても死神育成学校の出であり、実習として各国の処刑現場へと赴いた事もある。

 村に魔物が押し寄せての阿鼻叫喚な地獄絵図も見たことある。


 凄惨な現場をみても取り乱さないよう、様々な死を見てきたのに……

 今目の前に繰り広げられている光景は、キナコが今までみてきたどの現場よりも酷かった。


 まさに悪魔の所業といえよう。


 だが、今回の戦争の発端はクズを誑かした悪魔だ。悪魔の所業なのは当たり前。

 それに、悪魔の所業といっても悪魔側からみればこの戦争はただのビジネスにしかすぎない。


 悪魔は『嘆き』や『絶望』といった負の感情を糧にして生きるわけだし、人間同士の戦争は生きる糧を得るための狩場でもある。


 もちろん、それは死神や天使も同様。

 死神は死者をお迎えする事で、天使は人々から感謝される事で生きる糧をもらってるのだ。

 その生きる糧を得る手段が気に入らないからっと非難したら、存在そのものの否定につながってしまう。そのため各陣営はお互いの仕事の邪魔をしてはならないっと条約が結ばれている。


 それに、この戦争に来ていた悪魔は学校で習った悪魔、自分勝手で平然と残虐行為を行うから決して気を許してはならないっと教えられてきた悪魔とは全くの別。

 一応悪魔らしい醜悪な部分はあれど、死神や天使の仕事の邪魔はしないどころか茶目っ気のある態度でコミュニケーションを取ろうとしてきたのだ。


(天使達もそんな悪魔の茶目っ気に応えてるのだし、私もここに居る悪魔ぐらいには気を許してもよいかな)


 キナコはそんな思いを抱いてたが……





 結論から言えば、教科書の教えは正しかった。

 悪魔達は戦争終了後、捕虜貴族の処遇を決める際に『本番はこれからだ!!』っとばかりに変貌。


「サァミンシュウドモヨ!!イカルガイイ!!オコルガイイ!!!フンドノカンジョウヲトキハナテ!!」


 条約違反上等といわんばかりの悪辣な本性をあらわにしたのである。

悪魔にだって友情はある。でも、平然と条約を破ったりもする。


悪魔はどこまでいっても悪魔なのである。

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― 新着の感想 ―
お菓子のオマケシールの天使と悪魔の世界が懐かしいです。倒したり倒されたりだったけど、そこまで殺伐とした世界で無かったからな~。 道理を弁えてるからって……仁と義はもっているの?礼があってもこの二つが…
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