100.き、きっさまぁぁぁぁぁ!!全ては俺のせいだというのかぁぁぁぁぁ!!!(SIDE:クズ) ※ クズ4度目のざまぁ回(その2)
ついに100話突破!!
そして……多分おそらく折り返し地点かもしれない?
「貴様!!逃げるなぁぁぁぁ!!!!」
どたばたと無様に逃げるハイドを颯爽と……他者からみれば同じようにドタバタと追いかけるクズ。
その様は子どもの鬼ごっこよりも酷い有様で、どちらも無様。
だが、デルフリは自分が無様とは露程も思ってない。
ただ逃げるハイドを斬り殺す事しか考えておらず、ひたすらにその背を追いかけた。
自分が誘導されてる事に全く気付かないまま、どたどたと追いかけて行き……
やがて陣地から離れて暗い森の中へと入る。
本来なら臆する所であるも、逃げる敵は松明という目印を持ったまま逃げているのだ。
しかも、敵は森の中に逃げ込んだとたんに動きが鈍り始めた。
これはチャンスっと思って足を緩める事なく木々の間をすり抜けようとしたところ……
ずってぇぇぇぇぇぇん!!
「ぶげらっ!?」
ずっこけた。
ダイスでイチゾロを出したかのごとく、盛大にずっこけた。
一体何事かと思い、足元をみればそこには縄が……
木々の間に黒く塗られてるせいで視認がしにくい縄が張られていたのだ。
「こ、この……」
腹いせっとばかりに縄を断ち切ろうとするも、罠はそれだけでなかった。
追撃っとばかりに網が降ってきたのだ。
「なっ、なんだこれは!!」
自分に絡みついた網から出ようともがくも、敵兵は脱出まで待ってくれるわけがない。
即座に四方八方から銛を突き付けられた。
「動くな!動けば命はない」
「くっ……貴様等!!卑怯だぞ!!!!」
「残念ながら、戦場に卑怯もクソもないのですよ。殿下」
「マ、マイヤー……お前の仕業か!!!?」
敵兵の後ろから現れたマイヤーに思わず叫ぶ。
嘘であってほしいと思うも、現実は……
「違いますよ。私はこの襲撃を予想してたので必殺の罠を仕掛けてたのですが、殿下は逃げるどころか敵の挑発に乗って激昂した挙句に罠まで誘導されて……おかげで私の計画が台無しですよ……はぁぁ~~~」
蔑む目でこれ見よがしに吐くため息にクズはプツンっと切れる。
信頼してた側近から裏切られた悲しみよりも馬鹿にされた怒りが勝った事で声を張り上げた。
「き、きっさまぁぁぁぁぁ!!全ては俺のせいだというのかぁぁぁぁぁ!!!」
「いうまでもなく、この結果は私の指示に従わなかった殿下のせいです。しかし……態々網で捕らえる必要ありましたか?ハイド殿」
「貴族連中は皆殺しでもいいそうだが、クズ王太子だけは無傷で生け捕りにせよと厳守されたからな。だから皆と連携して網という罠で捕らえる事にした。もちろん逃げ道にも網を張っているからどの道こうなる運命だ」
「俺達の本業は漁業ですからな。剣や槍より網の方が扱いに長けてるんですわ」
「獲物を罠まで誘導したり追い込んだりするのは狩りの手法の一つなんですが……まさかここまで簡単に誘いこまれるなんて、思わなかったっすわ」
「それだけこのクズの思考が動物並って事か。ぷーくすくす」
「さぁさぁお喋りはこれまでだ!!皆の者、今回はこの大成功を祝って大漁旗でも掲げながら凱旋しようではないか」
「「「「ハイドのダンナそりゃぁいい!!!!!!賛成っすよ!!!!」」」」
「「「「「はっはっはっはっはっは!!!」」」」」
こうしてデルフリは宣言通り、狩られた獣のごとく一本の棒で手足を括り付けられての垂れ下がった状態で担がれ、大漁旗を掲げたハイドに先導されるかのようにして連行されるのであった。
「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえ!!!!貴様ら殺してやる!!100万回殺してやるから覚えておけよぉぉぉぉぉぉ!!!」
その様はまさに屈辱この上ないが、デルフリにできる事はひたすら叫び続けるぐらいしかないのであった。
一方、クズから怨嗟の声を受けているマイヤーはというと……
「……カナリア嬢。私が言うのもなんですが、ゼーゼマン領の私兵は相当性格悪くないですか?」
意外や意外、クズの扱いに少々の思うところはあったようだ。
「マイヤー様。今回ばかりは私も否定しませんし、おまいうなんて言いません。
今・回・だ・け・は・で・す・け・ど・ね!!」
「そんなに強調せずとも、罵声ならいくらでも受け入れますよ。特に貴女のような勝気な女性であればなおさらです。くいくい」
ちなみに今回の『くいくい』は眼鏡を正すのではなく、手招きを意味した『くいくい』である。
そんなアブノーマルな性癖を持つマイヤー……仕える主の婚約者の態度に、カナリアは放置プレイと言う名前の全力スルーを選択するのであった。
駄目だこいつ……
早く何とかしないと




