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⑨⑨.俺に逃げろというのか!?たった300人ぽっちの敵に3000人を率いる俺が……か!!(SIDE:クズ) ※ クズ4度目のざまぁ回(その1)

戦いは数でも第六天魔王や風林火山、毘沙門天みたいな化け物が相手では全く頼りになりません。

それが戦略シュミレーションであっても……ね。


ただし、ダイス事故や連戦による疲労での能力低下ペナルティがあるゴブスレTRPGならワンチャンあるかも?

 クズ王太子ことデルフリは勝利を確信していた。


 この戦争に賛同してくれた貴族達はもとより、一番に信頼するマイヤーも『この勝負、すでに決着がついています』と太鼓判を押してくれた。


 自分はただ本陣でのんびり待ってるだけでいい。

 それで全てが終わる。


 3000人対300人という敵の10倍の数で戦うわけなのだから、デルフリはその言葉を何の疑いなく信じていた。


 夕方には勝つと思っていた戦争が明日まで持ち越しという事態に少々のいら立ちこそあれど、共に復活を果たして着いて来た取り巻きのアインとツヴァイから『焦りは禁物』とか『王たるもの、下々にうろたえる姿をみせてはならない』と窘めた事で落ち着く。

 その後は3人で褐色という珍しい肌をした絶世の美女姉妹な娼婦との享楽に身を委ねる。


 一通り遊び終えて疲れた後はアインとツヴァイと別れ、自分専用の天幕に設置された豪華なベットで娼婦姉妹に挟まれたまま眠りについていたところ……




 深夜、周囲の騒がしさに目が覚めた。


「人が気持ちよく寝てる時に騒ぐとは、何事だ!!すぐに黙らせろ!!!」


「殿下、それどころではありません!!敵が攻めてきました!!」


「なんだと!?」


 最初は理解できなかった。

 一体何を言ってるのかわからなかったが、緊急事態だと駆け込んできた伝令の言葉にただごとではないことぐらいはわかった。


「敵はもうそこまで来ています!殿下は裏からお逃げください!!」


「俺に逃げろというのか!?たった300人ぽっちの敵に3000人を率いる俺が……か!!」


「その通りです!!」


「ふざけるな!!!」


 デルフリは声を荒げる。

 このふざけた事をぬかす伝令を斬り殺そうと、そばに置いていた剣を手にするも伝令は淡々と告げる。


「マイヤー様のご指示です!!」


「マイヤーの指示……だと!?」


 マイヤーには全面の信頼を置いているもあり、デルフリはその手を止める。

 その隙に伝令は続きを発した。


「えぇ、マイヤー様曰く殿下が王都まで逃げ切れば……まだ挽回できるチャンスがあるっと」


「そう……マイヤーが言ったのだな」


「言いました。だから早くお逃げくd……がはっ!!」


 セリフ途中で伝令が崩れ落ちた。

 最初は何が起きたっと思うも、その理由はすぐにわかる。


 伝令の背後には敵と思われるメイド(カナリア)が血に塗れたトゲ付きこん棒(釘バット)を握り締めながら立っていたのだ。


「見つけました!!目標のクズ王太子です!!!」


「誰がクズ王太子だ!!!」


 思わず言い返すデルフリだが、それで事態は好転しない。

 目標発見の声に合わせて、敵兵がどんどん集まってきたのだ。



 天幕から出る頃にはすっかり囲まれてしまうも、デルフリは慌てない。

 外では味方と思わしき者達が血の海の中に沈んでいるという孤立無援な状況であろうとも、王国最強たる自分が動けば問題ない。

 本気でそう信じているデルフリは剣を片手に悠々とした姿で歩き始める。


 その自信満々な姿に敵は怖気づいたのか、怯えの表情をみせる。


「どうした?かかってこないのか?」


 怯える敵兵たちに剣先を向ければざっと後退していく姿につい気分よくするデルフリ。


(なんだ、これでは俺が逃げる必要ないではないか。むしろ、このまま俺が敵の大将を討ち取ってしまおうか)


 本気でそう思い始めていたところ、不意に半裸の大男が正面に立ちふさがってきた。


「誰だ貴様は!!」


「はっはっは!!てっきり逃げると思いきや、こうやって立ち向かうとは驚きだな」


「俺の質問に答えろ!!今すぐ斬られたいのか?!」


「これは失礼。我が名はハイド。ゼーゼマン公爵軍の大将を勤める者でございます。貴殿はフランクフルト王国軍大将のクズ王太子様と見ましたが……名前なんでしたっけ?」


「デルフリだ!!」


「あーそういえばそんな名前でしたなぁ……まぁ、俺は雑魚の名前なんてすぐ忘れる性質なんで許してください」


「きっさまぁぁぁぁ!!!今すぐ殺してやる!!!!」


 王太子たる自分を敬うどころか完全馬鹿にした態度にデルフリは激昂。

 もっとも、ハイド視点で語るならクズは先日のパーティー会場で顔合わせを済ませているのに、その事をすっかり忘れられているのだ。意趣返しで馬鹿にするのは当然の権利だと思っていたりする。


 そんなハイドの思惑に気付かないデルフリは剣を振り上げ突進……


 本人は疾風のごとく、他者からみればドタドタと素人丸出しな足運びでハイドへと斬りかかるも迎え撃つハイドは……


「ひぇぇ~~~おたすけを~~~」


 背を向けて逃げ出した。

逃げたのではない。戦略的撤退である?

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― 新着の感想 ―
う~~ん、確かに「王たるもの動揺せず座して待つ」と云うかと思いますけど……コレだと「火中の栗を拾う」どころか覗き込んで眉間に栗が刺さるまで待っている状態でしたね(笑) 釘バット。カチコミに使われる由…
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