お助け部誕生
冷たくなったメメルトを見つけたのは寮の同室にいたアマミルだった。
「あ、あ、あぁ……、メ、メメルト~~ッ!!あぁ、あぁ、あぁ……」
アマミルは部屋を変わってからもショックのあまり、しばらくの間、学校に通うことが出来なかった。イツキナは、そんな悲しみに暮れた友達のことが心配で仕方が無かった。
今日もイツキナはアマミルの部屋を訪ねた。
コンコン……。
イツキナがアマミルの部屋をノックしてもいつものように返事がなかった
「ア、アマミル……?」
「……」
「入るよ……?」
「……」
鍵は掛かっていないのでイツキナは友達の部屋に入った。寮は基本的に二人で一部屋だったので、広い部家に一人きりでぽつんと、何もしていないで上の空の人形がそこにいた。
「ア、アマミル……。大丈夫……?学校にも来ていないしさ……。窓開けるね?」
「……」
アマミルは、イツキナが話しかけようが、肩に触れようが、返事をしてくれなかった。イツキナは、どうしようもなく、そのまま部屋を出るしか無かった。
そんな日々が続いたある日、今日もイツキナはアマミルの部屋に入った。アマミルはベッドを椅子にして座っていて、こちらを見ることも無くうつろに下を向いているだけだった。イツキナはその横にそっと座ると涙ながらに人形に話しかけた。
「アマミル……、あなたが元気がなくなって私……、どうしたら……、ううぅ……」
イツキナは、動かなくなった人形の肩に触れると、いつも以上に悲しみがこみ上げてきた。座ったままの人形をイツキナは強く抱きしめた。
「私は……、私は……、あなたと一緒に頑張りたいの……。また一緒に遊んだり、勉強したいのよ……。アマミル?アマミル?帰ってきて……、お願い……。ねっ?」
「……」
「駄目よ……。アマミル、メメルトが亡くなったのはあなたのせいではないわ……。あなたは何も悪いことをしていないじゃない……」
「……」
イツキナは、返事の無い人形に段々と怒りの気持ちが沸いてきてしまった。
「何か返事してよっ!!駄目じゃないっ!ダメダメっ!!!何で返事してくれないのよっ!!!」
「……」
イツキナの怒りはエスカレートしてきた。
「違う、違うわっ!あなたは一人じゃ何も出来ないのよっ!!」
その時人形に何かが響いた。
「え……」
「一人じゃ何も出来ないから助けられなかったのよっ!!」
「私は……、メメルトを励ました……」
「あなたは、一人で出来るって自惚れていたから彼女を救えなかったのよっ!」
「そんな……、そんな……、そんな……、酷いわ……、イツキナ……。うぅぅ……」
人形は壊れかけていた。だが、イツキナが激しく人形を揺さぶると、人形が持ち得ない涙が流れ始めた。
「ううぅぅぅ……。酷い、酷い……、私……、私……、メメルトを……」
「だからっ!」
「……」
「だから、私と一緒に人助けするのっ!これから一緒に人助けするのっ!!!!!」
「えっ……?」
「あなた一人じゃ何できないから、私と一緒に人助けする。そんな部活を作りましょうっ!!」
「人助け……?部活……?」
人形はアマミルに戻ると、初めてイツキナの方を向いた。
「そうよっ!メメルトみたいに不安な気持ちで学校生活を送っている人達を一緒に助けるのよっ!!」
「……イツキナ」
「ね?アマミル!」
「イツ……キナ……、ばっ、ばっ……」
「うん?」
「……バカねっ!」
「なっ、何よっ!バカってっ!!!」
突然、バカ呼ばわりされて、イツキナは腹を立てた。だが、その顔は涙に濡れた笑顔になっていた。
「そうね……。私一人だったから、あの子を救えなかったということね。
いいわ、いいわ、いいわっ!!その部活を作りましょうっ!一緒に始めましょうっ!」
「アマミルッ!」
人間に戻った人形は涙を拭くと、友達をギュッと抱きしめ、イツキナもアマミルを抱きしめた。メメルトのような不幸な少女を救いたい、二人の思いは一つになっていた。
「私たちはどんなにバカにされても、つまはじきにされても、頑張りましょうっ!あなたみたいにバカで一途な部活にしましょうっ!!」
「アマミルッ!!!もうっ、何よっ!バカってっ!グスッ!」
夕日の照らし始めた部屋で二人の少女は、いつまでも抱きしめ合いながら、二人の新たな決意を話し合った。
2022/11/20 文体の訂正、文章の校正




