一年後③:ア国の子ども達
ヒムとカリナは、アトランティス国の監獄艦で奴隷のように扱われていた子どもだった。この子らは身体のいずれかに障害を持っていた。アトランティス国では障害を持った子供は人間として扱われなかったため、このような監獄で奴隷として扱われていたのだった。この監獄艦にはロウアも捕まっていた。
この監獄艦はセウス達のクーデターで破壊対象となり、爆発の際に自動運転で無理矢理、空中に出航させられた。監獄艦は部分的に破壊されつつも何とか飛び続け、ロウアの力でレムリア大陸に無事不時着した。
しばらくの間、ロウアと子ども達の共同生活が始まったのだが、ケセロによるムー国の侵略を阻止するため、ロウアだけムーに戻ったため、子供らはアトランティス国にも戻れず、自給自足の生活を送ったままだったのだ。
「君たちを見つけるのは本当に大変だったんだからね」
カウラは、子ども達を救ったときの事を思い出していた。
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ロウア達による大陸陥没を防いでから、しばらくしてささやかな追悼式を女王が中心になって行われた。追悼式の後、軽食を食べる会があって、その席でカウラは急にテレパシーを受けた。
"カウラ兄ちゃんっ!"
「はぁ?!だ、だれ?」
唐突に心に声が聞こえたのでカウラは、ビックリして周りを見渡した。周りにはカウラの家族の他、アルとシアムの家族も居て、ホセイトスもアトランティスから救助に駆けつけてくれたということで招待されていた。
"僕だよ、僕ぅ~"
「ぼ、僕って?」
そのテレパシーはホセイトスにも伝わっていて、彼は呆れた顔でカウラに正体を教えた。
「カウラ……さん、この赤ん坊だぜ」
ホセイトスの指差した先を見て、カウラはうろたえた。
「えっ?ま、まさか、この声はシイリだって言うのかいっ?!」
"そうだよっ!キャッキャッ!"
シアムの母親に抱かれたシアムは、小さな手を広げてカウラをキラキラした目で見つめていただけだったので、にわかには信じられなかった。
「いやいや……、あり得ないよ。ほ、本当かい?」
"ありえるよ、ありありだよ~、えへへ~"
「俺も信じられなかったが、こいつのお陰でイケガミを見つけられたし、ここにいる家族も見つけられたんだ。お前……、あなたもですよ」
「はぁ……、そうだったのか。えぇ、しかし、どういうことなんだ……」
"ぼくはすごいんだよっ!ほめて~"
カウラは半信半疑のままシイリの頭を撫でてあげると、赤ん坊らしく笑うだけだった。
"ありがとっ!それでね、たすけてほしいって人がたくさんいるんだ~"
「へ?だ、誰の事だい?」
ホセイトスは、相変わらず語彙力のない会話にやれやれといった顔をしていた。
"んとね、ず~っと遠くの島っ!おっきな人がたくさん住んでいるところなんだ~"
「おっきな人?……巨人族のことか?」
"そうそうっ!ロウア兄ちゃんと同じところから飛んできたひとたちで、イケカミ兄ちゃんとどか~んって、おちちゃったんだっ!"
「な、なにを言ってるか分からないんだが……」
「俺のことはロウアって言うなよ、まったく」
「君がロウア?ど、どういうことなんだ?」
「まあ、そこは置いといて……」
"ロウア兄ちゃんのお船でたすけてあげて~っ!"
「なに?俺も手伝うのか?」
"すっごくとおくなの~、お船じゃないと、むりむり~むりむりだよ~"
「あぁ、分かった、分かった……。まあ、しばらくは時間もあるしな。カーシャ、サミト、ちと付き合えよ」
「また赤ん坊様の命令かい?あははっ!あんたもこの子には言いなりってわけだね」
「すごい子だね~、将来はホセイトスを超える王様になれるかもっ!」
「ちっ!」
ホセイトスは、イラッとしてサミトをボコッと殴った。
「い、いた~、なんで僕だけ叩くのさ……」
翌日、私達は、ホセイトスさんの中型船でシアムの母親とシイリを乗せてレムリア大陸をあっちだこっちだと案内されて、ヒム、カリナ、そして、他の子ども達を見つけることに成功した。結局、一ヶ月ぐらいかかったのでホセイトスさんは時間が掛かりすぎだと怒っていたっけ。




