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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ラ・ムー
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光りの言葉

 霊界お助けロネント部による励ましによって、ロウアはムー大陸から逃げることを止めた。ロウアは、迷う心を捨て、しっかりと二つの足で大地を踏みしめていた。


 しかし、それをあざ笑うように大地は更に揺れ始めた。


 大地の揺れによって地面にヒビが入り始め、二つに割れた神殿は更に倒壊が進み、その周りの建物も倒れ始めていた。それに伴って火事も起き始めた。地震によって大地は割れ始め、揺れで立つこともままならず、家の倒壊は進み、家具に押しつぶされる人もいた。この大陸を揺るがす巨大地震は、国民達をパニック状態へと変えていった。


「ミカ、もう間に合わないぃぃぃぞぉぉっ!分かっているだろうがぁぁっ!ケケケッ!」


 ケセロは、ロウア達を馬鹿にするようにそう言った。自分自身は手足が破壊されて動けなかったが、目的を達したケセロにとって自分の死などどうでも良かった。


「ゲゲゲゲェェッ!ヒェヒェヒェッ!泣けぇぇぇ、叫べぇぇぇっ!誰もお前達を助けないっ!狂え、大地よぉぉ、全てをゼロにすれば良いっ!たとえぇぇ、例え新しい文明が現れようとも同じ事だ、同じようにワレワレが潰してくれようぞぉぉっ!」


 しかし、ロウアは迷うことなかった。彼はケセロを自分のロネントの右手で掴んだ。


「ケセロ、おまえを使わせてもらうぞっ!」


「はぁ?!……ぐっ!な、なにぉぉぉ、するのだぁぁぁぁっ!」


 ロウアはロネントの腕を通して、ケセロをハッキングし、彼らのメッシュネットワークに入り込んだ。


「こ、今度はワレ、ワレワレを……はぁぁぁっ!か、勝手にワレワレを使うなぁぁっ!」


 そして、ロウアは、大陸の人々に語り始めた。


"みなさん、迷う必要はありません"


 その声は各地にいるロネント達を通して大陸中に響いた。まだ、ほとんどの人々は無気力状態だったが、一部の初期を取り戻した人と人に語りかけた。


"この地揺れは、私が止めます。何も恐れる必要はありません"


 しかし、それでも大地が揺れ続けているため、恐怖に取り憑かれた人々にはあまり効果がなかった。


「へ、変な声が聞こえる……?」

「ロネントがしゃべってるよぉぉ~」

「ひぃぃぃ」

「な、なにが迷うなだっ!」


 ミクヨの意識のままだったホスヰは、ロウアのやっていることを霊感を通して理解していた。


「ミカ・エル、あなたは声を広げているのですか……」


「う、う~ん、だけど、僕じゃ駄目だ。さぁ、ホスヰ、君の出番だよっ!」


 ロウアはそう言うと、左手をホスヰに差し出した。


「あうんっ!」


 ホスヰは、大きく頷くとロウアの左手を掴んだ。


「ホスヰ、国民に話しかけるんだ。できるね?」


「あうん、まかせるでっすっ!ミクヨにお願いするでっす」


 ホスヰは、ロウアの手を更にギュッと握りしめるとミクヨの思いを伝えた。


"……みなさん、ムー国の皆さん、私は女王のラ・エネケルです。その魂は、かつてラ・ムーと共にしたミクヨです"


 その声は確実に国民達に響き始めた。


「じょ、女王……?」

「あの幼子が……ラ・ミクヨ?!」

「じょおうさまぁ、たすけてください」

「こ、この揺れは何なのですか?」

「お助けをっ!」


"今大地は揺れていますが、心動かす必要はありません。今、神が降臨しました。皆さんを助けて下さいますっ!それまで気をしっかりと持つのです"


「シアムッ!アルッ!」


 ロウアは今度は、シアムとアルを呼んだ。ホスヰは、その意味を察すると左手を二人の前に出した。


「はい、にゃっ!」

「ふ、ふえ?」


 二人はわけも分からなかったが、シアムはホスヰの左手を取って、シアムの左手をアルが取った。


「シアム、愛してるよ」


「にゃっ!」


 シアムは唐突なロウアの言葉に顔を赤らめ、猫耳を下げて下を向いた。


「こ、こら~っ!今、愛を告白するところかぁぁっ!おじさん怒るぞっ!」


 アルは何を言うのかとロウアに怒りをぶつけた。


「あははっ!ごめん。さぁ、二人が出来ることがあるだろ?」


「そうだ、にゃっ!」

「あっ!」


 二人は顔を見合わせると、その意味を知った。


「そ、それなら、ツクッ!マフメノも来てよ~~っ!」


「は、はいっ!アルしぇんぱいっ!」

「わ、分かりました」


 そして、今度はアルが左手を上げて、そこにツクが、更にマフメノがつながった。


「アマミル先輩も、イツキナ先輩もっ!こっちです、にゃっ!」


「なあに?私もなの?」

「ほら、行くよ、アマミル。腕なんて組んでる場合じゃないよ」


 最後にイツキナとアマミルがロウアの右腕を掴んで、部員達は一つの輪になった。自然に彼らは互いの顔を見て笑顔になっていた。周りの状況がどうなろうと大地が揺れようと関係がなかった。


 やがて、彼らの思いは歌となって大陸中に響き渡った。


---------


「ムー国歌 愛」


私達はいつも一緒

優しい愛の人達


未来を包む 暗いベールを

未来を包む 明るいベールに


そこに暗い太陽が現れても

そこに暗い雲が立ちこめても


いつだって一歩を踏み出せる

なぜなら神の愛で包まれた大地だから


心の奥で繰り返すあなたの言葉


自らを愛し、家族を愛し、隣人を愛し、国を愛す


未来に続く 愛の鎖



私達はいつも一つ

優しさは大きな鍵


明日へ流れる 悲しい波でも

明日へ流れる 綺麗な波に


そこに暗い海があっても

そこに悲しみの深い青があっても


いつだって海にこぎ出せる

なぜなら神の愛が流れる大地だから


心の奥に染み込んだあなたの言葉


自らを愛し、家族を愛し、隣人を愛し、国を愛す


未来に続く 愛の深淵



さぁ、勇気を出して 声を出して

さぁ、思い出して 声にするだけ


私達は無限大の大きな力だから


神によって生み出された大きな大地

神の一滴で作り出された大きな大地


ムーよ、ムーよ、永遠の言葉よ

ムーよ、ムーよ、永遠の愛よ


その言葉は永遠に響く

その力は永遠に広がる


ここは神の大地 ムー


---------


 それは、ムー国の国歌の一つでもあった。その歌によって、国民は自分達を思い出し、不安は消えていった。


 ロウアは、国民達の心が安定するのを確認すると、次の命令を放った。


"悪魔に取り憑かれし、ロネント達よ……地面に潜れっ!"


 ケセロは自分を通して行われるロネント達への命令に怒り狂った。


「かかか、勝手に動かすなぁぁぁっ!止めろぉぉっ!」


 ロウアの命令は、大陸中のロネント伝わり、それらは地面に掘り始めた。

 リミッターも同時に解かれたロネント達は、凄まじい勢いで地面を潜り始め、あるものは動きつつあった地層を埋め始め、あるものは割れた大地を繋ぎ始めた。


 そしてロウアは、授かりし言葉を国民達に伝えた。


"国民達よ、今こそ我を思い出せっ!我の心を信じるのだっ!ムーを作りし我の名を呼ばぬなら大地は海に沈むっ!神官達よ、お前たちも今こそ我を思い出せっ!なぜ我の声を忘れるのかっ!"


 その声の響きにミクヨは、驚きの声を上げた。


「ムーッ?!あなた、ムーなのっ?!」


 ロウアは、ミクヨを見つめるとニコリとした。


「あ、あぁ……、ムー……お帰り……」


 圧倒的な神の光はロウアを通して部員達や神官達、この場にいる人達、そして、ムー大陸に居る人々にまで広がった。人々は自分の胸が熱くなるのを感じ、無気力だった人々はその洗脳が解かれて我に返った。


 その暖かさを思い出した人々は、自然と両手を合わせて神の光を受け入れた。


"私を思い出したなら、言葉を作れ。言葉の力で大地は生まれたっ!言葉の力でお前たちは強くなれっ!言葉の力で未来を開けっ!言葉の力で悪に勝てっ!言葉の力で己に勝てっ!言葉によって我とあれっ!」


<<コトダマッ!ラ・ムウッ!!>>


 それは国中の人々が一丸となって切ったコトダマだった。そのコトダマの力は限りなく大陸中に広がり、光りが大地を埋め尽くし、大地の揺れを止めて、海に沈むのを止めた。


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